アスカネット、XR・空中映像技術の新サービス展開本格化、26年4月期は大幅増益・最終黒字へ
- 2025/9/24 07:23
- アナリスト銘柄分析

アスカネット<2438>(東証グロース)は、葬儀社・写真館向け遺影写真加工のフューネラル事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のフォトブック事業、空中結像ASKA3Dプレートの空中ディスプレイ事業を展開している。さらに写真加工技術、印刷技術、XR技術、空中映像技術を融合した新サービスの展開を本格化させている。25年9月にはASKA3D技術を活用した「浮空(うくう)ライブステージシリーズ」の販売を開始した。また9月24日~26日開催の「推し活EXPO関西展」および9月25日~28日開催の「ツーリズムEXPOジャパン2025」に、XR技術や空中映像技術などを融合した新サービスを出展する。26年4月期は大幅増益・最終黒字予想としている。積極的な事業展開で収益改善基調を期待したい。株価は安値圏だが底固め完了感を強めている。出直りを期待したい。
■写真加工関連を主力として、空中ディスプレイやXR領域も展開
葬儀社・写真館向け遺影写真加工のフューネラル事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のフォトブック事業、空中結像ASKA3Dプレートの空中ディスプレイ事業を展開している。さらに写真加工技術、印刷技術、XR技術、空中映像技術を融合した新サービスの展開を本格化させている。
25年4月期のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)はフューネラル事業が33億89百万円、フォトブック事業が37億28百万円、空中ディスプレイ事業が1億44百万円、営業利益はフューネラル事業が8億01百万円、フォトブック事業が6億01百万円、空中ディスプレイ事業が▲5億33百万円、全社費用等調整額が▲6億96百万円だった。フューネラル事業は葬儀関連、フォトブック事業はウェディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場のため、いずれも下期の構成比が高い季節特性がある。
23年12月にはBETの全株式を取得して子会社化した。BETはバーチャルライバー(Vライバー)(バーチャルキャラクターにて各種アプリサービスを利用し、ライブを行う配信者)事務所Razzプロダクションの運営を行うスタートアップ企業で、所属Vライバーが550名を超える最大手のVライバー事務所である。バーチャルライバー事業を通じてXR領域への事業展開を強化する。
また新規事業も視野に入れて、人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボット、全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社、AIカメラソリューション開発のAWLと資本業務提携している。22年1月にはベンチャーファンド「XVC1号投資事業有限責任組合」へ出資した。
■フューネラル事業は葬祭市場をIT化する葬Techを推進
フューネラル事業は、全国の葬儀社をネットワークで繋ぎ、葬儀に使用する遺影写真のデジタル加工処理を行うサービスである。同社の専門オペレーターがデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。収益は加工オペレーション収入、サプライ品売上、ハード機器売上などである。
92年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、25年4月期末時点のハード設置件数は前期末比4.9%増の3131ヶ所、25年4月期の新規加工枚数は前期比5.9%増の49万7968枚となっている。同社の推定市場シェアは約3割~4割(1位)である。
成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐ訃報配信・香典サービス「tsunagoo(つなぐ)」(特許取得済)の拡大、動画やサイネージを活用した新たな演出ツールの提供など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。なお「tsunagoo」は全国3800以上の会館に導入されており、24年には年間11万件を超えるWEB訃報作成数を達成し、過去最高の利用者数を記録した。
25年6月には新映像サービス「snapCINEMA(スナップシネマ)」をリリースした。故人の写真をもとに、AI技術と長年の遺影写真加工ノウハウを融合させることで、自然な表情や仕草、優しい眼差しなどを丁寧に再現し、まるで「映画のワンシーン」のような臨場感と感動をもたらす映像を制作する新サービスである。葬儀社・互助会を通じて提供する。
■フォトブック事業は写真集製作サービス
フォトブック事業は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するフォトブックサービスである。高度なカラーマネジメント技術やオンデマンド印刷制御技術などを強みとしている。
全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け(BtoB)の「アスカブック」と、一般消費者向け(BtoC)の「マイブック」を主力として、NTTドコモのフォトブック印刷サービス「dフォト」にフォトブック・プリント商品を供給するOEMも展開している。25年3月期の分野別売上高構成比はBtoBが58%、BtoCが27%、海外が1%、ライブ配信・送料・その他が14%だった。25年4月期末時点のBtoB契約件数は前期末比5.9%増の1万7980件、稼働件数は1.9%増の5926件、マイブック会員数は6.5%増の39万3296人となった。
BtoBではスタジオ写真向けや建築写真向け製品などの拡販、BtoCでは子どもの成長記録やカレンダー・卒業アルバムなど季節製品の拡販、等身大アルバム付き出張撮影サービスなどを推進している。24年4月には、赤ちゃんの成長記録をほぼ等身大で残せるフォトボード「Photo Growth」の販売を開始した。
■空中ディスプレイ事業は空中結像ASKA3Dプレート
空中ディスプレイ事業は、サービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートとして、量産化(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を推進している。プレートだけで空中に映像を浮かばせる空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造が特色であり、サイネージ分野の他、車載、医療、飲食、アミューズメント、エレベータの操作パネルなど多方面の業界・業種から注目されている。
技術面では受動系と能動系に大別される。受動系は画像映像を表す光を受け、特殊なパネルを通過することによって反対側の空中に映像を結像する。能動系は自ら立体映像を空中に創出する技術である。いずれも特許を取得しているが、第3の柱の育成に向けて現在は受動系を優先して開発・事業化を進めている。
高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレートはサイネージ用途、大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートは製品組込用途として開発・製造・販売を進めている。また樹脂製プレートについては従来よりも大きいサイズの開発により、操作パネルとしての用途拡大を推進している。
生産面では、外注によって月産3000枚~1万枚程度の生産能力を有しているほか、20年6月に技術開発センター(神奈川県相模原市)を設立し、ガラス製ASKA3Dプレートに関する量産技術の内製化と生産体制の確立を推進している。営業面では20年11月に米国・UAE・中国で販売代理店契約を締結した。24年11月にはシンガポールのAcoustics社、韓国のNAG社、タイのROKUGO ELEMEC社と販売代理店契約を締結し、海外販売体制を拡充している。
なおASKA3D採用事例としては、22年1月に大和ハウス工業およびパナソニックとASKA3Dプレートを活用した「空中タッチインターホン」共同実証実験を開始した。22年2月にはセブンーイレブン・ジャパンがセブンーイレブン店舗において、ASKA3Dプレートを使用した世界初の非接触・空中ディスプレイPOSレジ「デジPOS」実証実験を開始した。
■写真加工技術、XR技術、空中映像技術を融合した新サービス
22年8月に、仮想空間で活動するメタバースユーザーの「おもい」を表現していくソーシャルVR向けサービスとして「かえでラボ」を設立し、仮想空間上で撮影された写真を現実空間でカタチにするテストマーケティングを開始した。子会社化したBETと連携し、Vライバーとの商品企画・開発・制作、リアル×バーチャルのコミュニケーション企画、メディミックスなどバーチャルライバー事業を通じてXR領域への事業展開を強化する。
25年9月にはASKA3D技術を活用した「浮空(うくう)ライブステージシリーズ」の販売を開始した。空中映像で新たな推し活体験を実現する個人向けの空中ディスプレイ「浮空ライブステージHome」は卓上サイズの空中ディスプレイで、背景にスマートフォンを設置することにより、誰でも簡単に空中映像を楽しむことができる。IP関連企業やライバー・VTuberとのコラボレーションなど、キャラクターアイテムとしてのビジネス展開を目指す。イベント会場・商業施設・博物館・美術館・自治体関連等向けの「浮空ライブステージ匠(たくみ)」は、大型サイズの施設向け空中ディスプレイ筐体である。等身大のバーチャルキャラクターやリアルヒューマンが現実空間に現れ、会話やハイタッチなど双方向のインタラクティブなコミュニケーションが可能であり、イベント等の集客力向上を実現する。
■サステナビリティ経営
サステナビリティ経営への取り組みとしては、23年7月に女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を更新し、目標として女性管理職比率13%以上、正規雇用労働者の男女賃金差異78%以上、有給休暇取得率85%以上維持を掲げている。また25年6月には奨学金返還支援制度の創設を発表した。
環境問題への取り組みとしては、スタッフが葬儀社を定期的に訪問し、使用済みインクカートリッジ回収に取り組んでいる。23年の回収個数は4015個、回収率は13%だった。25年8月には「数字で知るアスカネット社員」を更新し、有給休暇取得率は94%となった。また男性育児休暇取得率は83%(対象6名中5名取得)となった。
■26年4月期大幅増益・最終黒字予想で収益改善基調
26年4月期の連結業績予想は売上高が前期比4.4%増の75億80百万円、営業利益が150.5%増の4億35百万円、経常利益が151.4%増の4億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が2億61百万円(前期は2億63百万円の損失)としている。配当予想は前期と同額の7円(期末一括)としている。予想配当性向は42.2%となる。
第1四半期は売上高が前年同期比3.7%減の16億46百万円、営業利益が17百万円の損失(前年同期は25百万円の損失)、経常利益が1百万円の損失(同25百万円の損失)、親会社株主帰属四半期純利益が6百万円の損失(同23百万円の損失)だった。フォトブック事業における生産性向上や全社的な経費コントロールなどにより全体として営業損失が縮小した。
セグメント別(内部売上・全社費用等調整前)に見ると、葬儀関連のフューネラル事業は、売上高が2.7%減の7億60百万円で営業利益が25.0%減の99百万円だった。減収減益だった。自社営業強化によって葬儀社の新規契約獲得が順調に推移し、葬儀社向けDXサービス「tsunagoo」の手数料収入も伸長したが、全国的な葬儀件数が減少傾向だったため主力の遺影写真加工収入が減少したほか、人件費やクラウドサービス利用料の増加も影響した。
写真集関連のフォトブック事業は、売上高が2.0%減の8億74百万円で営業利益が30.1%増の1億28百万円だった。減収ながら大幅増益だった。売上面は、プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」がウェディング市場の挙式の小規模化や写真のデジタル化志向の影響で伸び悩み、一般消費者向け「マイブック」とOEMも海外旅行の回復遅れや撮影写真アウトプット減少の影響で厳しいだった。利益面は生産性向上による人件費抑制が寄与した。
空中結像プレートASKA3Dの空中ディスプレイ事業は、売上高が62.9%減の13百万円で営業利益が82百万円の損失(同85百万円の損失)だった。海外展示会の出展控えや旅費交通費の絞り込みなどにより損失が小幅縮小した。
通期連結業績予想は据え置いて大幅増益・最終黒字予想としている。フューネラル事業が堅調に推移するほか、前期の一過性損失の一巡なども寄与する見込みだ。フォトブック事業と空中ディスプレイ事業については体制強化等により立て直しを図る。事業別売上高の計画はフューネラル事業が5.9%増の35億90百万円、フォトブック事業が1.6%増の37億95百万円、空中ディスプレイ事業が38.5%増の2億円としている。積極的な事業展開で収益改善基調を期待したい。
■株主優待制度は毎年4月末の株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。
■株価は底固め完了
7月18日に発表した自己株式取得(上限24万5000株または1億円、取得期間25年7月22日~25年10月31日)については、25年8月31日時点で累計取得株式数が5万7900株となっている。
株価は安値圏だが底固め完了感を強めている。出直りを期待したい。9月22日の終値は398円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS16円60銭で算出)は約24倍、今期予想配当利回り(会社予想の7円で算出)は約1.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS342円98銭で算出)は約1.2倍、そして時価総額は約70億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)