【どう見るこの相場】新政権発足で政策期待高まる、財政拡張と金融引き締めが焦点、市場は新バランスを模索

■総裁選関連株が再び脚光、政権交代期待が市場を刺激

 今週の最注目銘柄は、さいか屋<8254>(東証スタンダード)であり、大和自動車交通<9082>(東証スタンダード)であり、助川電気工業<7711>(東証スタンダード)だろう。AI(人工知能)関連のアドバンテスト<6857>(東証プライム)やソフトバンクグループ<9984>(東証プライム)などの主力値がさ株を差し置いてである。もちろん前週末4日に自民党総裁選挙のビッグ・政治イベントがあり、高市早苗候補が新総裁に選ばれ、高市銘柄の核融合関連の助川電気に日本初の女性首相誕生を先取りするご祝儀相場があるのか、決戦投票で敗れた小泉候補の関連株のさいか屋、大和自動車交通に失望売りが浴びせられるのか注目されるからだ。と同時に前週末3日に助川電気は反発、さいか屋と大和自動車交通は反落となっており、3銘柄に総裁選挙勝敗の予知能力があったかも問われそうだ。今年9月7日の石破茂首相の辞意表明以来、自民党の総裁選挙関連株としてマーケットを賑わせてきており、なお今後の政治相場の煮詰まりを示唆してくれる可能性もありそうだ。

■ガソリン税廃止・国債発行容認の積極財政路線に注目

 と同時に今週注目のもう一人のキーパーソンは、高市新総裁と並んで日本銀行の植田和男総裁となるはずである。というのも高市早苗総裁は、憲法・外交・安全保障・歴史認識ではタカ派であるとともに、経済政策ではガソリン税を廃止し、赤字国債発行を辞さず、「アベノミクス」譲りの金融緩和策を主張するハト派であり、政策金利引き上げのタイミングを窺っているタカ派の植田総裁の対極に位置するからだ。高市総裁は、政権の安定運営のために連立政権の枠組み拡大を打ち出し国民民主党や日本維新の会などに秋波を送っており、財政拡張的な経済政策が避けられなくなるとみられている。日銀は、10月29日、30日に金融政策決定会合の開催を予定しており、両総裁が金融政策を巡って「水と油」になるのか、「火に油を注ぐ」結果となるのか、積極財政政策と何とか折り合いをつけるのかいずれ明らかになるはずで、このハト派総裁vsタカ派総裁が、時にはマーケットに大きく影響することも想定される。

■昭和の教訓に学ぶ、日銀の政策判断に注目

 それで思い出すのは、もう50年以上も前のあの昭和の「狂乱物価」時代である。第一次田中角栄内閣による「日本列島改造政策」のブームによって物価も地価、株価も急騰する「過剰流動性相場」が現出したが、これは当時の「日銀のプリンス」といわれた佐々木直総裁が、「今太閤」といわれた田中首相のプレッシャーに蔵相時代から押されっ放なしで公定歩合の引き上げ、金融引き締め策に遅れを取ったことが要因と分析されている。もちろん現在只今の物価上昇は、家計の台所を直撃はしているが、狂乱物価というほどではなく、植田和男総裁も、もともとデータ重視の経済学者である。しかし、日銀が無策無為となれば、米国のFRB(米連邦準備制度理事会)が、トランプ大統領に利下げ強要のパンチを乱打され続けて「中央銀行の独立性」に疑念が生じてドル信認が揺らいだように、微妙な問題に直面する。FRBは、今年9月17日に9カ月ぶりに「リスク管理的な利下げ」に踏み切った。

■政策バランスを追い風に、金利敏感株と円高メリット株が上昇期待

 ということで今週の当コラムでは、ハト派総裁とタカ派総裁のバランス・アンバラン、折り合いが続くなかで金利敏感株と円高メリット株を取り上げることにした。金利敏感株では、すでに中間決算発表に先立って業績を上方修正し増配した地銀株や、経営統合に一歩踏み出した業界再編株も出ている。円高メリット株は、これまで円高場面でやや不完全燃焼相場が目立ち、週明けのきょう6日の為替相場も、円安・ドル高に振れているが、いずれタカ派総裁の強力支援も期待され、新ステージ挑戦となりそうだ。マーケットでは今週週初から固まる自民党の党役員人事や連立内閣の枠組み拡大交渉を手掛かりにハト派総裁歓迎ムードが高まりそうだが、そのスタートダッシュをかいくぐって金利敏感株、円高メリット株に待ち伏せ投資をするのも、一興となるかもしれない。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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