【どう見るこの相場】TOPIX最高値でバリュー優位鮮明、AI集中相場から資金分散で投資心理改善

■「押し」のAI株より「引き」のバリュー株選好で厳冬関連株の先取り買いも一考余地

 「押してだめなら引いてみよ」とは、先人が積み上げてくれた処世訓だ。コトが思い通りに運ばなくなったケースでは、その一方向だけからでなく双方向、三方向、四方向からも見直す手練手管は欠かせないとするノウハウである。前週のTOPIX(東証株価指数)の最高値更新と日経平均株価の高値波乱は、この処世訓の「押し」と「引き」のせめぎ合いの結果とみることもできそうだ。それまで日米両市場を牽引してきたAI(人工知能)関連株が、FRB(米連邦準備理事会)の12月の次回FOMC(公開市場委員会)での政策金利引き下げが怪しくなったとして高値もみ合いとなったのに対応して、「引き技」としてバリュー株へ鉾先を転じた側面も感じられたからだ。

■TOPIX優位でバリュー株上昇、投資心理改善

 このTOPIX優位の相場展開は、投資家心理的にもポジティブである。「広く浅く」バリュー株が値上がりして値上がり銘柄数が、値下がり銘柄数を上回り、日経平均株価優位相場での「狭く深い」AI関連株の突出高、バリュー株売りとは異った相場パターンとなるからだ。AI関連株への一極集中相場は、個人投資家へ買うか売るか即断を強要する受け身の投資スタンスしか許してくれないようにも映る。今週週明け以降は、米国市場ではAI半導体世界トップのエヌビディアが、11月19日に2025年8~10月期決算を発表予定で、20日には政府機関閉鎖で集計の遅れていた9月の雇用統計が発表される。この結果次第では、また「押し」か「引き」か揺れ動くことになりそうである。

■決算サプライズ後の次の一手に注目

 その一方で、バリュー株も週明け後はやや展開難となる可能性も否定できない。というのも、TOPIXの最高値更新を牽引してきた決算発表が、前週14日でピークアウトしたからである。決算発表では業績の上方修正、増配、自己株式取得、さらに市場予想を上回る好業績銘柄が相次ぎ、そのなかにはストップ高と好反応する銘柄も出るサプライズが投資家マインドをポジティブ転換してくれた。そのカタリスト(株価材料)の一巡である。となれば、個人投資家は、再びバリュー株を「広く浅く」買うかAI株のリバウンド狙いか二者択一に直面することも想定される。

■冬物需要追い風にバリュー株再評価

 記録的猛暑後に急速な気温低下となり厳冬到来が意識されるなか、冬物需要を追い風とする低PERのバリュー株が再評価される局面である。アパレル各社では9月の猛暑で秋冬物販売が後ずれしたが、10月は気温低下で復調し、アンドエスティHD<2685>、TSIHD<3608>、ワールド<3612>、青山商事<8219>など配当利回りも魅力となる銘柄が多い。厳冬関連ではダイニチ工業<5951>、横浜ゴム<5101>、TOYO TIRE<5105>などが年初来高値更新・業績上方修正で存在感を示す。鍋需要を取り込む水産・食品株でも、極洋<1301>、ニッスイ<1332>、ホクト<1379>など割安感が際立つ。さらにINPEX<1605>や石油資源開発<1662>など暖房関連の資源株も業績上振れと株主還元拡充を材料に評価余地が大きく、季節需要を背景にシーズンストック相場が本格化する可能性がある。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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