【アナリスト水田雅展の銘柄分析】久世は16年3月期の収益改善期待で戻り歩調

銘柄分析

 業務用食材卸の久世<2708>(JQS)の株価は、14年10月の安値650円をボトムとして戻り歩調の展開だ。1月8日に14年7月以来となる700円台を回復し、1月19日には705円まで上値を伸ばした。強基調を確認した形であり、来期(16年3月期)の収益改善期待で続伸展開だろう。

 首都圏を中心にファーストフード・ファミレス・カフェ、居酒屋・パブ、ディナーレストラン・ホテル・専門店、惣菜・デリカ・娯楽施設・ケータリングなど、外食・中食産業向けに業務用食材の卸売事業を展開し、大手飲食チェーンも主要顧客としている。子会社のキスコフーズは国内(静岡市)とニュージーランドで業務用高級ソース・高級スープの製造、久世フレッシュワンは東京都内で生鮮野菜など農産品の卸売を展開している。

 中期経営計画では目標値として20年3月期売上高1000億円を掲げ、重点戦略として首都圏・関西圏・中部圏での販路拡大、全国物流ネットワークの強化、中食市場や高齢者施設給食市場の開拓強化、PB商品の拡販や製造利益の拡大、海外事業の基盤確立などを推進している。

 販路拡大に向けたM&A・アライアンス戦略では、12年6月に中部圏で酒類販売大手サカツコーポレーションと業務提携し、14年4月には高級飲食店向けに強みを持つ水産物中卸会社の旭水産を子会社化した。

 今期(15年3月期)の連結業績見通し(11月10日に売上高を増額、利益を減額修正)は、売上高が前期比10.0%増の685億円、営業利益が3億50百万円の赤字(前期は41百万円の黒字)、経常利益が1億75百万円の赤字(同2億38百万円の黒字)、純利益が1億95百万円の赤字(同1億円の黒字)としている。配当予想(5月12日公表)は前期と同額の年間12円(期末一括)としている。

 第2四半期累計(4月~9月)は新規顧客の開拓や既存顧客の底上げ(インストアシェアアップ)など、営業強化の効果で前年同期比10.1%増収だったが、仕入価格上昇に対する販売価格への転嫁遅れ、遠隔地への配送増加や物流コストの改善遅れ、人件費の増加などが影響して営業利益、経常利益、純利益とも赤字だった。

 収益改善に向けた取り組みとして、採算性を重視した営業活動の強化、仕入価格上昇に対する販売価格への転嫁推進、代替商品・メニューの提案強化、高付加価値商品やPB商品の拡販による売上総利益率改善を目指している。

 営業損益悪化の主因となった物流コストについては、採算性を考えた配送コースの実現、誤配の撲滅、時限管理の徹底と定時出発、イレギュラー配送の抑制などで物流の採算改善・精度向上を強化するとともに、新システム(ボイスピッキングシステム、新発注システム、配送運行管理システム)導入による効率化を推進している。こうした施策の効果で来期(16年3月期)の収益改善が期待される。

 株価の動きを見ると、14年10月の安値650円をボトムとして戻り歩調の展開だ。1月8日には14年7月以来の700円台を回復し、1月19日には705円まで上値を伸ばした。来期の収益改善を期待する動きだろう。

 1月21日の終値698円を指標面で見ると、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.7%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS1235円43銭で算出)は0.6倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形だ。週足チャートで見ると26週移動平均線を突破して上伸し、13週移動平均線が26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスとなった。強基調を確認した形であり、来期の収益改善期待で続伸展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■9割超が対策を実施も、「WBGT」の認知は依然として低調  帝国データバンクの調査により、「熱中…
  2. ■「変身と成長」掲げ1300億円の積極投資、収益構造の転換図る  吉野家ホールディングス<9861…
  3. ■人手不足を補いながら顧客満足度の向上に貢献  シャープ<6753>(東証プライム)は5月20日、…
2025年6月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

ピックアップ記事

  1. ■選挙関連の「新三羽烏」の株価動向をウオッチ  足元では野党が石破内閣への内閣不信認決議案提出を見…
  2. どう見るこの相場
    ■米、イラン核施設を電撃空爆、緊張激化へ  「2週間以内」と言っていたのが、わずか「2日」である。…
  3. ■イスラエル・イラン衝突でリスク回避売りが優勢に  イスラエルのイラン攻撃を受け、13日の日経平均…
  4. ■ホルムズ海峡封鎖なら「油の一滴は血の一滴」、日本経済は瀬戸際へ  コメ価格が高騰する「食料安全保…
  5. ■トランプリスク回避へ、大谷・藤井・大の里株が浮上  『おーいお茶』を展開する伊藤園<2593>は…
  6. ■昭和の象徴、長嶋茂雄さん死去  またまた「昭和は遠くなりにけり」である。プロ野球のスパースター選…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る