【鈴木雅光の投信Now】ラップ口座、早くも倍々ゲームに陰り?

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 ラップ口座については以前も、このコーナーで書かせてもらいました。

 確か、その時点では、ラップ口座の口座、運用残高の伸びが非常に順調だったと記憶していますが、その勢いにも陰りが見えてきたようです。日本投資顧問業協会が発表している、ラップ業務の契約件数および契約金額の数字を追うと、これまで倍々ゲームのように増えていた数字が急減速しているのです。

 過去の契約件数の伸率は、次のようになります。
2013年3月末・・・・・・21.87%
2014年3月末・・・・・・104.23%
2015年3月末・・・・・・190.75%
2016年3月末・・・・・・56.89%
2016年6月末・・・・・・4.09%

 契約金額は次のようになります。
2013年3月末・・・・・・32.60%
2014年3月末・・・・・・78.95%
2015年3月末・・・・・・183.23%
2016年3月末・・・・・・48.24%
2016年6月末・・・・・・▲0.31%

 契約件数、金額ともに2014年3月末、2015年3月末にかけて急増していましたが、2016年3月末は大きくスローダウンしています。また、2016年6月末までの数字を見ると、同年3月末比でほとんど伸びていないことが分かります。

 たとえば契約件数が3か月間で4.09%の伸びということは、仮にこのペースが変わらないまま2017年3月末を迎えた時の伸び率は、恐らく20%に満たないことになりそうです。また契約金額に至っては、この3か月間でマイナスになりました。

 ラップ口座は、複数の投資信託などをパッケージにして、その間の資金移動に関しては手数料が生じないため、マーケットの状況に応じてポートフォリオを自由に組み替えることが出来ます。

 ただ、投資先の投資信託を保有している限り、その信託報酬は自動的に徴収されますし、それに加えてラップ口座自体の口座維持手数料が掛かります。両者を合わせたコストは、年率3%程度にも達します。

 ちなみにラップ口座の口座維持手数料は、それを扱う金融機関によっても異なりますが、大体年率1.5~1.7%です。年間、これだけのコストを負担するのに相応しい付加価値を、ラップ口座は与えてくれるのでしょうか。

 コストが高くなるほど、より大きなリターンを狙いに行かない限り、最終的なリターンは低くなります。

 でも、高いリターンを狙おうとすれば、それだけリスク(不確実性)も高くなります。

 リスク資産の運用は、世界経済の年間GDP成長率程度をコンスタントに得られれば十分です。それは年3~4%程度であり、世界中の株式市場に分散投資するポートフォリオを長期間持ち続ければ、実現可能性が高まります。

 そしてその運用は、MSCIコクサイのようなインデックス運用で実現できます。MSCIコクサイに連動するETFもあるので、それを利用すれば、年間のコストは1%にもなりません。これならシンプルで、かつローコストな運用ができ、しかもラップ口座でさまざまな投資信託に分散投資したのと大差ないリターンが期待できます。

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