【アナリスト水田雅展の銘柄分析】テクマトリックスは中期成長力や3月期末一括2%台半ばの配当利回りを評価して反発のタイミング

銘柄分析

情報サービス事業を展開するテクマトリックス<3762>(東1)の株価は安値圏600円台前半でモミ合う展開だ。ただし600円台を大きく割り込むことなく下値固め完了感を強めている。中期成長力や3月期末一括で2%台半ばの配当利回りを評価して反発のタイミングだろう。

ネットワーク・セキュリティ関連のハードウェアを販売する情報基盤事業、医療・CRM・EC・金融を重点分野としてシステム受託開発やクラウドサービスなどを提供するアプリケーション・サービス事業を展開している。

重点戦略として、ストック型ビジネスの保守・運用・監視サービス関連の戦略的拡大、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、ネットワーク・セキュリティ関連商材およびサービスの充実、ビッグデータ分析支援サービス、大規模EC事業者向けバックオフィスシステム構築ソリューション「楽楽ECインテグレーションサービス」などを強化している。

中期成長に向けて、M&A・アライアンス戦略やグループ再編を推進している。14年2月に子会社の沖縄クロス・ヘッドが台湾のデータセンター事業者eASPNetと事業協力についての覚書締結、3月にはクロス・ヘッドを完全子会社化、日本コンピュウェアと販売パートナー契約を締結、ラムダ・テクノロジーズとマレーシアにおける販売代理店契約を締結した。

また7月には日本事務器(NJC)と医療情報クラウドサービス「NOBORI」に関する販売代理店契約を締結、8月には沖縄クロス・ヘッドが日本ヒューレットパッカード(日本HP)と業務提携、9月には米VERCODE社と販売代理店契約を締結した。

10月にはクロス・ヘッドが仮想化技術の米Pica8(ピカエイト)社に出資、10月にはソフトバンクテレコムなど3社共同でクラウド型医療情報サービス「地域健康・医療情報プラットフォームサービス(HeLIP)」の提供を開始した。

なお14年12月にクロス・ヘッドが、その子会社エヌ・シー・エル・コミュニケーションの株式を追加取得して完全子会社化し、15年1月にはクロス・ヘッドとエヌ・シー・エル・コミュニケーションが4月1日付で合併すると発表した。ネットワーク仮想化技術であるSDN市場の本格成長が期待されているため、合併によって技術力強化や業務効率化を推進する。

2月12日には、未知のサイバー攻撃に対処する新たなセキュリティ監視サービスの提供開始を発表した。12年に開始したICT基盤のセキュリティ運用監視サービス「トリニティ」の拡張サービスとして提供し、初年度のサービス提供は50社を目標としている。

なお医療分野では、オンプレミス型(ユーザーがハードウェア、ソフトウェア、データを自分自身で保有・管理)システム提供から、クラウド型(ユーザーがインターネット経由で利用)サービス提供へビジネスモデル変更を推進しているため、前期(14年3月期)から医療情報クラウドサービスの売上と利益をサービス期間に応じて按分計上する方法に変更した。このため今後複数年に亘って売上と利益にマイナス影響となるが、他事業の成長でカバーする方針としている。

1月30日発表の今期(15年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比6.5%増の129億79百万円、営業利益が同11.1%減の5億42百万円、経常利益が同15.1%減の5億27百万円、純利益が同50.4%減の2億35百万円だった。

ストック型ビジネスの戦略的拡大に向けた人件費の増加などで営業減益、経常減益、法人税等調整額計上の一巡や本社移転に伴う原状回復費用の特別損失計上などで最終減益だったが、売上面ではクラウドサービスなどのストック型ビジネスが順調に拡大して増収だった。概ね計画水準のようだ。セグメント別売上状況は情報基盤事業が同7.9%増収、アプリケーション・サービス事業が同3.9%増収だった。

通期の連結業績見通しは1月30日、本社移転に伴う原状回復費用の特別損失計上に伴い、前回予想(5月9日公表)に対して純利益を80百万円減額修正した。修正後の通期連結業績見通しは売上高が前期比5.5%増の183億円、営業利益が同3.7%増の11億60百万円、経常利益が同0.4%減の11億60百万円、純利益が同21.8%減の6億20百万円、配当予想が前期と同額の年間15円(期末一括)としている。

ストック型ビジネスの戦略的拡大に向けて人件費が増加するが、情報基盤事業の好調が牽引して増収、営業増益見通しだ。セグメント別売上高の計画は、情報基盤事業が同9.0%増の122億円、アプリケーション・サービス事業が同0.9%減の61億円としている。情報基盤事業ではサイバー攻撃に対応した次世代ファイアウォール製品、アプリケーション・サービス事業では医療分野のクラウドサービスなどが好調に推移する。

通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は低水準だが、第4四半期(1月~3月)の構成比が高い収益構造を考慮すれば特にネガティブ要因とはならないだろう。なお四半期別の推移を見ると売上高は第1四半期(4月~6月)39億49百万円、第2四半期(7月~9月)46億55百万円、第3四半期(10月~12月)43億75百万円、営業利益は第1四半期63百万円、第2四半期2億87百万円、第3四半期1億92百万円だった。情報基盤事業の官公庁セキュリティ大型案件、医療クラウドサービスの大学病院向け大型案件なども寄与して通期ベースで好業績が期待される。

株価の動きを見ると、未知のサイバー攻撃に対処する新セキュリティ監視サービスの提供開始を好感して2月12日に695円まで急伸する場面があったが、買いが続かず概ね安値圏600円台前半でモミ合う展開だ。ただし600円台を大きく割り込むことなく下値固め完了感を強めている。

2月18日の終値611円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS51円24銭で算出)は12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は2.5%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS513円07銭で算出)は1.2倍近辺である。

週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、600円近辺が支持線となって下値固め完了感を強めている。中期成長力や3月期末一括で2%台半ばの配当利回りを評価して反発のタイミングだろう。

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