【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エンタープライズは下値固め完了感、16年5月期営業損益改善期待で切り返し

銘柄分析

 コンテンツ制作・配信の日本エンタープライズ<4829>(東1)の株価は下値固め完了感を強めています。6日に発表したゲーム新タイトルのリリース延期に対するネガティブ反応は限定的であり、来期(16年5月期)の営業損益改善期待で切り返しのタイミングが接近しているようです。

 コンテンツ配信などのコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開し、中国ではチャイナテレコムの携帯電話販売店運営と電子コミック配信サービスを手掛けています。

 配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略として、ネイティブアプリ事業を新たな収益柱に育成する方針です。ネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化に向けて、13年3月に音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化、14年4月に子会社HighLabを設立、14年11月にアプリ開発の会津ラボを子会社化しました。

 中国・上海の携帯電話販売事業については、キャリアの販売施策変更に影響されない収益構造の構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、徹底的なコスト削減などの収益改善策を推進しています。

 コンテンツ配信のグローバル展開では14年6月、インドネシア大手移動体通信キャリアのXL Axiata社が運営するアプリストア内のアプリ取り放題サービス向けに、スマートフォンアプリの提供を開始しました。ローカライズした自社アプリを世界の各種プラットフォームに配信して、自社コンテンツ資産の2次利用を推進する戦略です。

 法人向け事業では14年8月、スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発しました。従業員のデスク上のビジネスフォン(固定電話)が不要となり、スマートフォンを内線電話として使用できるアプリケーションです。また10月にはビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表しました。

 今期(15年5月期)の連結業績見通し(11月28日に売上高と利益を減額、1月9日に税金費用減少で純利益を増額)は、売上高が前期比13.8%増の51億30百万円、営業利益が同34.4%減の2億20百万円、経常利益が同32.4%減の2億30百万円、純利益が同58.8%減の1億80百万円としています。配当予想(7月9日公表)は前期と同額ですが、普通配当で年間3円(期末一括)としています。

 ソリューション事業で店頭アフィリエイト広告が回復基調ですが、新サービスの企業向け通話アプリ「AplosOneソフトフォン」の開発遅延に伴って売上高が期初計画を下回り、子会社HighLabのネイティブアプリ「Fivetoak」および「ひっぱれ!ネコPingプラネット」のプロモーション費用など先行投資負担が影響して減益見通しです。

 なお2月6日に、15年1月以降に予定していたスマートフォン向けカジュアルゲーム新タイトルのリリース日程を、ゲーム全体のクオリティ向上を目的として今春へ延期すると発表しました。

 第2四半期累計(6月~11月)は前年同期比15.7%増収ながら、広告宣伝費の増加で同60.9%営業減益、同58.3%経常減益、同20.3%最終増益(投資有価証券売却益が寄与)となり、通期見通しに対する第2四半期累計進捗率は売上高49.0%、営業利益28.2%、経常利益30.4%、純利益88.3%です。

 営業利益進捗率が低水準で、ゲーム新タイトルのリリース延期も考慮すれば通期営業利益下振れに注意が必要ですが、売上面ではコンテンツサービス事業は交通情報が牽引し、ソリューション事業は店頭アフィリエイト広告が大幅伸長して増収基調です。来期(16年5月期)の営業損益改善が期待されます。

 株価の動きを見ると、14年11月の戻り高値634円から反落し、今期業績見通しの減額修正や公募増資による希薄化懸念も影響して水準を切り下げましたが、400円割れ水準で下値固め完了感を強めています。ゲーム新タイトルのリリース延期に対するネガティブ反応は限定的のようです。

 2月26日の終値389円を指標面で見ると、今期予想連結PER(増資後の会社予想の連結EPS4円63銭で算出)は84倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は0.8%近辺、前期実績PBR(前期実績に増資を考慮した連結BPS107円70銭で算出)は3.6倍近辺です。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んで調整局面ですが、52週移動平均線近辺で下げ渋り、下値固め完了感を強めています。サポートラインを確認した形であり、来期の営業損益改善期待で切り返しのタイミングが接近しているようです。

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