【どう見るこの相場】米国景気とNYダウの行方

■良好な失業率とEPS高水準でNYダの大崩はなさそう

米国の3月雇用統計が発表された。2014年2月以来の20万人割れと予想を下回るものだった。アメリカの景気に変調が起きているのか、NYダウの行方はどうなるのか、探った。

<Q>注目の米国の3月雇用統計は予想を下回ったようだが。

<A>新規雇用者数は2月確報値26.4万人の増加から3月は12.6万人増加に増加数が大幅に縮小した。

<Q>理由は何か。

<A>明確な答えはないが、ドル高の影響か、原油価格下落によるシェールガス関連産業停滞の影響か、住宅着工伸び悩みの影響か、気候の影響か、あるいはこれらが複合的に絡み合っているのかもしれない。

<Q>新規雇用数が20万人を割るのはいつ以来か。

<A>2014年2月の18.8万人増加以来のことだ。その後、2014年11月には42.3万人の増加まで拡大していた。少し、振り返るとリーマンショックの影響を受けた2009年3月にはマイナス75.3万人まで落ち込んでいた。2010年5月には45.6万人と急回復し昨年11月に45万人のフシに接近となっていた。株価にダブルトップがあるように新規雇用者数にもダブルトップがあるということかもしれない。

<Q>ダブルトップのあとはどうなっているか。

<A>2010年5月のプラス45.6万人のあとは翌月の6月には一気にマイナス19.2万人まで急減した。しかし、今回は昨年11月のプラス42.3万人のあとは高水準が続いている。今回、12.6万人といっても依然、強い数字といえる。

<Q>20万人割れは2014年2月以来ということだが、当事に比べ景気はどうか。

<A>貿易収支赤字額は当事の643億ドルから579ドルに改善しているし鉱工業生産指数、GDPなども堅調だ。ただ、住宅着工件数は当事の110.9万戸から89.7万戸に落ち込み、小売売上高も若干減少している。このあたりが景気の先行きの警戒感となって今回の雇用者数伸び悩みにつながっている可能性はあるだろう。

<Q>原油や株価などの比較はどうか。

<A>原油価格は当事(14年2月)は100ドル前後だったが足元では49ドルに大きく下がっている。シェールガス関連にはなんらかの影響が出ているものとみられる。ドルは当事の105円前後が119円台へドル高・円安となっているから米国の輸出企業には悪影響の出ていることが予想される。。NYダウは14年2月末の1万6321ドルは現在1万7763ドルと当事に比べ約1440ポイント上にある。

<Q>今後、NYダウはどう動くか。

<A>とくに、3月の失業率は5.5%(14年2月は6.7%)と立派な数字だから景気が大きく下振れる心配はないだろう。企業々績も堅調で、たとえばNYダウEPSは14年当事の1005ドルに対し足元では1095ドルと高水準にある。10年国債も当事の利回り2.82%は足元では1.87%だ。今後、ドル売り、国債売り、米国株売りは少しは予想されるが14年水準まで下げることはないだろう。とくに、企業々績がしっかりしていればNYダウの崩れはないとみていい。注目のFRBの利上についても先に延びることが予想される。NYダウの下値は1万7500ドルていどだろう。突っ込んだとしても下ヒゲ足となる可能性があるだろう。

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