【小倉正男の経済コラム】RIZAPグループ:松本晃構造改革担当のケジメ論

小倉正男の経済コラム

■瀬戸社長は「構造改革は来期に持ち越さない」と発言

 RIZAPグループの19年3月期・第3四半期決算は、第2四半期と同様に瀬戸健社長、松本晃取締役構造改革担当の二人が説明した。

 瀬戸社長は、第4四半期にワンダーコーポレーション、ぱど、タツミプラニング、サンケイリビングなど赤字を出している企業の売却撤収を行うことを強調した。

 「赤字を来20年3月期に持ち越すべきではない。来期の黒字転換、持続的な黒字に向けて踏み込んで(売却撤収を)やる。赤字の大きい企業は優先順位を付けて、すみやかに改善しなければならない」

 じっくり構えての売却撤収なら、買い叩かれるリスクはある程度低減できる。だが、そうした余裕は持てない。ここは何しろ急いで売却撤収を進めるしかない。

 「損切りは来期に持ち越さない」
瀬戸社長は、覚悟を決めて「構造改革」に踏み込む決意を繰り返して語った。

■「ケジメは自分でつけろ」は”性善説”過ぎないか?

 松本構造改革担当は、構造改革への質問に対してこう答えている。
「構造改革のスピードはまあまあかな」

 松本構造改革担当は、構造改革のロードマップに関連してケジメについて切り出した。

「構造改革のロードマップは何から始めたかというと、ケジメから始めた。みんな悪かったわけではないが、間違ってしまった。ケジメはしっかりつけましょう。ケジメは個人個人で決めて下さい。自分の責任をつけろ、と。何人かは個人の意思でケジメをつけた。瀬戸さんは初めにケジメをつけられた」

 初めてのことだが、ケジメという言葉が唐突な感じで語られた。
それにしても、「ケジメはしっかりつけましょう。ケジメは個人個人で決めて下さい」とはどうしたことか。

 役員会や株主総会ではなく、自分の責任は自分で取りなさいというのは、やや”性善説”過ぎないか。それでは企業のガバナンスは成立しないことになりかねない。

■二人の異なった個性を生かせるか

 「ケジメは自分でつけろ」というのは、もともと昔の経団連などが語っていた理論というか、理屈である。いわば、自主ケジメ論である。

 ”性善説”に基づき経営者は悪いことはしないという理屈で、社内から監査役を出して形だけのガバナンスというものだった。経営者は、経営を失敗したら自ら身を引く、というものである。

 本来、松本構造改革担当は「経営は”性善説”ではダメだ」という経営理論である。ところが、今回はそれとややニュアンスを異にする発言をしている。
どちらかといえば、瀬戸社長のほうが”性善説”の経営者であり、さらには前に進むのは得意だが後ろに引くのは苦手というタイプだ。

 松本構造改革担当はこう話している。
「瀬戸さんとはほとんど意見が一致している。ただ、すべてが一致しているわけではない」

 瀬戸社長と松本構造改革担当という異なった個性がRIZAPグループには必要である。この異なった個性を生かせるのかどうか。こちらのほうが、来期に黒字になるかどうかと同じぐらい、あるいはそれ以上に重要と言えそうである。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て現職。2012年から当「経済コラム」を担当。東経オンライン、国際商業オンライン、サンケイIRONNAなどに執筆)

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