【アナリスト水田雅展の銘柄診断】翻訳センター徐々に水準切り上げ、16年3月期増収増益期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 翻訳・通訳事業を展開する翻訳センター<2483>(JQS)の株価は、小幅レンジでモミ合う展開だが徐々に水準を切り上げている。営業損益は改善基調であり、16年3月期の増収増益期待でモミ合い上放れの展開だろう。なお5月13日に15年3月期の決算発表を予定している。

 特許・医薬・工業・法務・金融分野を中心として企業向け翻訳サービス事業を展開している。業容拡大に向けて12年9月に通訳・翻訳・国際会議運営のアイ・エス・エス(ISS)を子会社化、13年6月にアイタスからIT関連のローカライゼーション/マニュアル翻訳事業の一部譲り受けた。14年10月には医薬品承認申請・取得に関するメディカルライティング業務を専門に受託する子会社パナシアを設立した。

 翻訳事業ではグループ全体で約6200名の登録者を確保し、対応可能言語は約70言語と国内最大規模だ。そして翻訳サービスの需要は企業の知的財産権関連、新薬開発関連、新製品開発関連、海外展開関連、IR・ディスクロージャー関連を中心に拡大基調である。ISSは国際会議運営の実績が豊富で、20年東京夏季五輪開催に向けて通訳や国際会議の需要増加も期待される。

 14年8月には、多言語対応コンタクトセンターサービスのディー・キュービックと、日本国内におけるマルチランゲージ・コンタクトセンターサービス(在日外国人を顧客とする企業や団体を対象とした通訳・翻訳サービス)に関して業務提携した。

 15年3月にはISSが100%所有する人材紹介事業のISSコンサルティングの全株式を、同社代表取締役関口真由美氏に譲渡すると発表した。協業関係は継続するとしている。

 さらに15年4月には、ディー・キュービックの親会社キューアンドエーと合弁で新会社ランゲージワンを設立した。ディー・キュービックの多言語対応コンタクトセンターサービスを新会社ランゲージワンに移管し、センター運営およびサービスの強化を図る。

 前期(15年3月期)連結業績見通し(5月14日公表)は売上高が前々期比7.1%増の94億円、営業利益が同31.7%増の4億80百万円、経常利益が同33.3%増の4億80百万円、純利益が同50.8%増の2億70百万円、配当予想が同3円増配の年間48円(期末一括)としている。ISSコンサルティングの株式譲渡に伴う特別利益計上額については精査中としている。

 第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比2.8%増収、同9.8%増営業増益、同11.8%経常増益、同34.6%最終増益だった。翻訳事業の好調と粗利率の改善で増収増益だった。純利益は法人税等の減少も寄与した。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)21億08百万円、第2四半期(7月~9月)22億53百万円、第3四半期(10月~12月)23億07百万円で、営業利益は第1四半期16百万円、第2四半期1億38百万円、第3四半期1億31百万円である。営業損益は改善基調だ。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が70.9%、営業利益が59.4%、経常利益が59.8%、純利益が57.0%とやや低水準だが、第4四半期(1月~3月)の構成比が高い収益構造である。

 今期(16年3月期)も主力の翻訳事業が好調に推移し、粗利率の改善も寄与して増収増益基調だろう。

 株価の動きを見ると小幅レンジでモミ合う展開だが、急反落した14年10月安値3110円をボトムとして徐々に水準を切り上げている。4月10日には14年10月3720円以来の戻り高値となる3700円まで上伸する場面があった。

 4月20日の終値3570円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS160円28銭で算出)は22~23倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間48円で算出)は1.3%近辺、そして前々期実績PBR(前々期実績の連結BPS1536円34銭で算出)は2.3倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線がサポートして徐々に水準を切り上げている。営業損益は改善基調であり、16年3月期の増収増益期待でモミ合い上放れの展開だろう。

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