ジーニーの2020年3月期連結業績は各利益とも大きく改善

■EBITDAは11倍に大幅拡大

ジーニー<6562>(東マ)が5月13日の取引終了後に発表した2020年3月期の連結業績は、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響もあり売上高が前期比4.1%減少して143億4800万円となったものの、各利益は損失が大きく改善し、営業損益は前期の3億1000万円の損失から9100万円の損失へと大幅に好転した。

■純損益は1.8億円の損失となり前期の5.4億円の損失から大幅に改善

 アド・プラットフォーム事業で前期発生した大手取引先の方針変更の影響などは上期で一巡し、下期は増勢に転換。マーケティングソリューション事業は高成長を継続した。これらにより、親会社株主に帰属する当期純損益も前期の5億4400万円の損失から1億7800万円の損失へと大幅に改善した。

 また、先行投資の活発な企業を見る上で役立つとされ、会計基準の差異にとらわれることなく企業比較が可能なEBITDA(営業利益+減価償却費プラスのれん償却額)は、前期の1900万円から11倍の2億1400万円へと大幅に拡大した。

■アド・プラットフォーム事業は前期発生した逆風が下期は回復に転換

 アド・プラットフォーム事業では、アドテクノロジーを使って、インターネットメディアや広告主の広告収益や効果を最大化させるプラットフォームを提供している。インターネットメディア向けの「GenieeSSP」や広告主/広告代理店向けの「GenieeDSP」などが主力。上期までは、前期発生した大手取引先の方針変更の影響があったため、セグメント売上高は前期比11.1%減の113億6600万円となったが、下期にかけては回復に転換した。

 また、当期から推進を強化している配信ロジックのアップデートが奏功し、一定の利益確保に貢献した。さらに、事業化を進めているデジタルOOH領域では、大手屋外広告媒体との取組みを含む複数の開発受託案件の受注に加え、引き合いが順調に増加するなど好調に推移した。

■マーケティングソリューション事業の売上高は44%増加し高成長

 マーケティングソリューション事業の売上高は、同44.5%増加して16億7500万円となった。企業のマーケティング活動の支援を目的としたBtoB向けSaaSプロダクトを中心に、広告運用代行サービスを含めた各種ソリューションを提供し、顧客管理のためのCRM(Customer Relationship Management)及び営業活動における商談管理のためのSFA(SalesForce Automation)システム「ちきゅう」、マーケティング活動を自動化し、効率的に潜在顧客の集客や購買意欲などの向上、購買・契約などをめざすプラットフォーム「MAJIN(マジン)」などが主力。

 当期は、「ちきゅう」において、大手人材紹介会社や大手通信事業会社を含む大型案件の受注が継続・拡大するなどで、事業の拡大を牽引した。「MAJIN」
も、ターゲット顧客への営業展開の推進により大型案件の受注が決定した一方、広告運用代行サービスで新規受注件数が増加し既存顧客へのアップセルも推進した。また、前期、新たにプロダクトに加わったチャット接客ツール「chamo(チャモ)」も期を通じて売上に貢献した。

 海外事業も、不採算事業の縮小など事業構造改革を実施した結果、セグメント売上高は同16.3%増加して14億4100万円となった。

 次期・2021年3月期の業績見通しは、現時点で新型コロナウイルス感染症の収束時期が不透明なため、未定とし、合理的な算定が可能になった時点で開示するとした。

 ただし、アド・プラットフォーム事業では、ターゲット領域を絞った営業推進、広告主の費用対効果向上に向けたプロダクトのアップデートなどにより、収益拡大を推進していくほか、新規事業のデジタルOOH領域では、前期に続き大手媒体の取組みを強化する一方、更なる新規事業の創出にも取り組む。また、マーケティングソリューション事業では、「ちきゅう」の拡販に加え、「chamo」「MAJIN」の機能強化なども進め、SaaSプロダクトのシェア拡大を優先する計画だ。(HC)

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