【小倉正男の経済コラム】コロナ禍:支援・助成手続きが煩雑過ぎるという困難

■支援・助成手続きを断念する店舗

 新型コロナ禍への支援金、助成金だが、「手続きが煩雑過ぎて諦めた」といった声が少なくない。

 時々、音楽ソフトのお店に伺うのだが、「持続化支援金はもらえませんでした」とご主人は嘆いている。そのお店は売り上げが大きく減らなかったが、利益が大きく低下した。しかし、持続化支援金は売り上げの大幅減が基準なので、支援の対象外になったというのである。

 お店のご主人は、家賃などの助成金も面倒すぎて「断念した」としている。スマホ、パソコンなどを使いこなすデジタル技術力が相当ないと対応できない。用意する書類などが多い。結局、支援は何も得られない。それでもご主人はお店を何とか継続させている。

 あまり政治などに意見、あるいは文句などを言わない人たちまで苛立ったり、怒ったりすることが表面化してきている。これは取材というより、街で感じる“空気”である。支持率については、「一喜一憂しない」というのが政府・与党のお決まりだが、「一喜一憂しない」と大変なことになりかねない。

■支援策が追加されても対応するのが難しい

 コロナ禍も第3波を越えて第4波になろうとしている。ワクチンも掛け声ばかりで大きく遅れている。

 国、自治体もそうした事態、つまり「最悪の事態」を想定していなかったから支援策、助成策も後手に廻って「小出し」になっている。「小出し」「逐次投入」で新しい支援策を追加せざるをえなくなっている。

 新聞社の社会部から電話が入って、「商店街の店舗などの年配の経営者たちが、支援金や助成金で手続きをどうしたらよいか困っている。デジタル面、それにデジタル面以外でも困難が多くて、どう対応したらよいのか」と。

 デジタル面では近所の若い人たちに助けてもらって、手続きを進めてもらうことぐらいしか方法がないのではないか、と答えた。だが、最近は「オレオレ詐欺」めいたこともあるから、一般論としては若い人たちに助けてもらうというのもリスクが全くないともいえない。そうなると、手続きを断念してしまうことになる。

■後手、後手から混乱の波紋が広がる

 結局のところ、税理士事務所、あるいは計理士事務所などに依頼して、書類などをチェックしてもらうようなことになるしかない。国もそのような指導になっている模様だ。ただ、デジタル面は税理士事務所に指導してもらうというわけにもいかない。

 問題は税理士、計理士への謝礼などが生じかねないことだ。生活に困って支援、助成の手続きを行っているのに謝礼を払わなければならない。税理士、計理士もそれはわかっているからやりたい仕事ではない。謝礼も少額でしかないからだ。税理士としてもビジネス面では意欲が湧くわけではない。

 菅義偉首相の政権は、ケイタイ電話料金の値下げなど国民生活を重視するというか、敏感であるという姿勢を打ち出してきた面がある。国民生活から見て、「おかしいものは正していく」という姿勢を打ち出してきている。

 発足当初に菅義偉首相への支持率が高かったのは、そうしたことへの期待感が強かったからである。その菅義偉首相の原点がコロナ禍では惚けている。コロナ禍では何故か当初から楽観的過ぎるという傾向があり、国民の期待に応えきれていない。何とも後手、後手に甘んじており、混乱の波紋が広がっている。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)

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