【小倉正男の経済コラム】サラダクラブ「千切りキャベツ」深掘りに踏み込む

■キャベツとは?

 この夏は酷暑で外出はしない。そんな風に決めていたが、8月下旬にサラダクラブが「サラダ白書2024」を発表するというので呼び出された。「サラダ白書2024」のミーティングでは、キャベツに焦点を当てたレクチャーが行われた。

 キャベツについては何も考えたことがなかった。食事でいえば、トンカツの付け合わせで使われるキャベツ、お好み焼きで豚肉、焼きそばなどと一緒にギュウギュウと詰めて用いられるキャベツぐらいしか思い浮かばない。

 恐慌史では産業革命期の1845年~49年の「馬鈴薯恐慌」(ジャガイモ飢饉)という有名な事件がある。それ以前の大航海時代には胡椒がトップ商品だった。胡椒、そして胡椒貿易が大航海時代をもたらしたといわれている。だが、キャベツはそうした時代を画するものとは無縁である。

■キャベツは年間3万トン使用

 サラダクラブは1999年にキューピーと三菱商事により創業されている。新鮮な野菜を加工・袋詰めして洗わないでそのまま食卓に乗せられる「パッケージサラダ」のパイオニア企業である。

 「今年が25周年。この四半世紀にパッケージサラダは食卓に根付いてきただけではなくマーケットを拡大している。全体の市場規模は2000億円に接近している」(金子俊浩社長)。

 そのサラダクラブにとってキャベツは根幹をなす商品にほかならない。サラダクラブが製造・販売しているパッケージサラダに使用されている野菜の60%はキャベツである。年間3万トンのキャベツを使用している。サラダクラブが製造販売しているパッケージサラダは44アイテムだが、そのうち20アイテムにキャベツが入っている。

 「キャベツは一日当たり82トン使っている。キャベツ使用量では日本一。天候不順、価格高騰などでキャベツを揃えるのに苦労しているが、お客様にパッケージサラダを届けることができている」(金子俊浩社長)。

■キャベツ大量使用で原価低減

 サラダクラブが創業以来の基幹商品としているのが「千切りキャベツ」(130グラム・参考小売価格税込み108円)である。最近では「千切りキャベツビッグパック」(280グラム・同204円)が人気商品となっている。

 この「千切りキャベツ」シリーズは年商55億円(推定)規模といわれている。サラダクラブの最大の商品がこの「千切りキャベツ」にほかならない。この9月には「千切りキャベツ極細カット」「ざく切りキャベツダイスカット」が新製品として発売される。いわば、基幹商品である「千切りキャベツ」の深掘りということになる。

 「極細カット」(90グラム・参考小売価格税込み116円)は年商5億円、「ダイスカット」(150グラム・同138円)は年商2億円を想定している。「極細カット」「ダイスカット」は、「千切りキャベツ」より少し割高な価格に設定されている。

 「極細カット、ダイスカットは製造に手間・時間がかかる。だが、キャベツを大量に使うので原価は低減できる。戦略上、キャベツの消費が増えれば増えるほど売り上げも増える。利益率改善も見込める」(吉田政道広報・広告宣伝部部長)。サラダクラブが「千切りキャベツ」という基幹商品の深掘りに踏み切ったのはそうした戦略に裏打ちされている。(経済ジャーナリスト)

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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