インテージホールディングスは上値試す、22年6月期は上方修正して一転増益予想

 インテージホールディングス<4326>(東1、新市場区分プライム)は、市場調査事業を主力としてシステムソリューション分野や医薬情報分野にも展開し、積極的な成長投資を継続している。22年6月期は第2四半期累計が計画を上回る大幅増益となり、通期予想を上方修正して従来の減益予想から増益予想に転じている。さらに成長投資を吸収して再上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。なお日本経済新聞電子版の「同社が英投資ファンドからMBO・非公開化を求める提案を受けている」との報道について、2月10日付で、提案を受けたのは事実だがMBO・非公開化を検討している事実は無いとリリースしている。株価は地合い悪化の影響で戻り一服の形となったが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■国内首位の市場調査が主力

 子会社インテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)など、国内首位・世界10位(GRBN 2018 Global Top25 Report)の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。

 セグメント区分は消費財・サービス分野のマーケティング支援、ヘルスケア分野のマーケティング支援、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンスとしている。

 21年6月期のセグメント別構成比は、売上高が消費財・サービス分野のマーケティング支援62%、ヘルスケア分野のマーケティング支援26%、ビジネスインテリジェンス13%、営業利益が消費財・サービス分野のマーケティング支援43%、ヘルスケア分野のマーケティング支援51%、ビジネスインテリジェンス6%だった。

 消費財・サービス分野のマーケティング支援では、データサービスやカスタムリサーチなどを展開している。独自収集した各種パネル調査やカスタムリサーチから得られたデータを基に、高度なリサーチ技術やデータ解析力を駆使して、消費財メーカーを中心に企業のマーケティング活動をトータルサポートしている。主な事業会社はインテージ、インテージリサーチ、海外子会社などである。

 21年5月にはリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)を子会社化、21年7月にはインテージがIXTを吸収合併、21年8月にはインテージ・ベトナムがベトナム国家大学ハノイ校日越大学(ハノイ)と産学連携の基本協定を締結した。

 21年10月には、アジア地域で展開する海外インターネット調査パネル「Asian Panel」が、21年8月に新たな対象エリアとしてインドを追加し、11の国・地域を対象としてモニター数が1100万人を突破して業界最大級になったと発表している。

 21年11月には、子会社インテージとインティメート・マージャー<7072>の業務提携(21年10月)を強固にすることを目的として、インティメート・マージャーと資本提携(インティメート・マージャーの普通株式の一部を既存株主から取得予定)すると発表した。

 ヘルスケア分野のマーケティング支援では、一般用医薬品・医療用医薬品の市場調査、製薬企業からの委託によるデータマネジメント・解析業務、医薬品開発をサポートするCRO業務などを展開している。事業会社はインテージヘルスケアの直下に協和企画、インテージリアルワールド(医療情報総合研究所が21年7月1日付で社名変更)、プラメド、Plamed Koreaの4社を置く体制としている。

 ビジネスインテリジェンスでは、ソフトウェア開発やシステム構築・運用などを展開している。事業会社はインテージテクノスフィア、ビルドシステム、エヌ・エス・ケイなどである。

■次世代SRIサービス「SRI+」を核に総合力向上

 第13次中期経営計画では目標値に23年6月期売上高625億円、営業利益50億円、営業利益率8.0%を掲げている。目指すべき姿を「データを核として、顧客ビジネス課題解決や意思決定に深く関与・伴走し、ビジネス創造と変革に寄与できる存在」として、次世代成長ドライバー確立などグループ間連携による対応領域の創造と拡張を推進している。またデジタル環境の変化に対応するため、積極的な事業投資やM&Aも継続して実施する方針だ。

 資本政策については、資本効率を重視し、最終利益を全額、成長投資と株主還元に振り向ける方針としている。配当は連結配当性向40%、DOE(自己資本配当率)4.5%以上を目標としている。自己株式取得も機動的に対応する。

 消費財・サービス分野のマーケティング支援では、次世代SRI(全国小売店パネル調査)サービスの「SRI+」(ECデータ含む)を21年1月にリリースした。今後は「SRI+」を核としてソリューションおよびパートナー連携による総合力向上を図り、収益拡大につなげる方針だ。また定量的な行動観察を可能にした動画解析プラットフォーム「Label Note(仮)」のリリースに向けて準備中である。

 SBIインベストメントと共同設立のINTAGE Open Innovation Fundは、パーソナルAI「al+」開発のオルツ、WEBリサーチのリサーチ・アンド・イノベーション、IoTデータ流通プラットフォームの米EverySense、訪日外国人向けショッピングサポートアプリ「Payke」のPaykeなどに投資している。21年7月現在の投資実績は23社、合計約24.8億円である。

■22年6月期2Q累計が計画を上回る大幅増益で通期は一転増益予想

 22年6月期連結業績予想(収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微)は2月7日に上方修正して、売上高が21年6月期比5.6%増の608億円、営業利益が4.0%増の46億円、経常利益が2.3%増の52億円、親会社株主帰属当期純利益が6.8%増の36億円としている。配当予想は据え置いて21年6月期と同額の35円(期末一括)としている。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比6.6%増の291億31百万円、営業利益が39.8%増の26億34百万円、経常利益が20.5%増の27億16百万円、親会社株主帰属四半期純利益が17.3%増の18億91百万円だった。収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が5百万円減少、売上原価が6百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ1百万円増加している。影響は軽微である。

 前回予想に対して売上高は1億31百万円、営業利益は9億34百万円、経常利益は9億66百万円、親会社株主帰属四半期純利益は5億91百万円それぞれ上回り、減益予想から一転して大幅増益で着地した。主力のパネル調査が好調に推移し、国内外でカスタムリサーチのオンラインシフトが進展した。CRO(医薬品開発業務受託機関)の製造販売後調査における大型案件獲得と効率化促進、コロナ影響や半導体不足に伴う成長投資経費の一部先送りなども寄与した。

 なお営業利益7億49百万円増益の要因分析は、増収効果+17億99百万円、変動費影響▲11億42百万円、人件費影響▲2億18百万円、経費影響+1億26百万円、投資経費執行遅れ+1億84百万円としている。収益性の高いパネル調査、CR―webの増販、海外でのオンライン化促進、CRO事業の増販・効率化など、収益構造の良化が牽引した。

 マーケティング支援(消費財・サービス)事業は、売上高が11.6%増の181億67百万円で営業利益が109.9%増の11億55百万円だった。コロナ禍で停滞していた顧客のマーケティング活動が回復基調となり、主力のパネル調査やカスタムリサーチが好調に推移した。海外もオンライン調査を主業務とするデータスプリング社が好調だった。

 マーケティング支援(ヘルスケア)事業は、売上高が2.0%増の75億06百万円で営業利益が4.1%増の13億04百万円だった。リサーチ事業がリソース再配置の影響で前年並みにとどまったが、CROは大型案件獲得や事業全体の抜本的な改善の取り組みで収益性が改善し、データサイエンス事業は臨床開発業務の稼働率が高水準で推移した。

 ビジネスインテリジェンス事業は、売上高が6.3%減の34億57百万円で営業利益が113.5%増の1億74百万円だった。コロナ禍の影響で減収だが、大型開発案件の生産性向上や経費削減で収益性が改善した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が138億04百万円で営業利益が8億82百万円、第2四半期は売上高が153億27百万円で営業利益が17億52百万円だった。第2四半期は四半期ベースで過去最高だった。

 第2四半期累計の実績および事業状況を勘案して通期予想を上方修正した。前回予想に対して売上高を3億円、営業利益を12億円、経常利益を12億円、親会社株主帰属当期純利益を8億円、それぞれ上方修正して、従来の減益予想から増益予想に転じている。なお成長投資経費については、一部を下期に先送りしたが、通期ベースではほぼ計画通りの見込みとしている。

 修正後のセグメント別計画は、マーケティング支援(消費財・サービス)事業の売上高が21年6月期比7.7%増の383億円で営業利益が4.7%増の20億円、マーケティング支援(ヘルスケア)事業の売上高が1,9%増の150億円で営業利益が2.8%減の22億円、ビジネスインテリジェンス事業の売上高が3.1%増の75億円で営業利益が63.3%増の4億円としている。

 修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.9%、営業利益が57.3%、経常利益が52.2%、親会社株主帰属当期純利益が52.5%である。利益進捗率が高水準であり、成長投資を吸収して再上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待は毎年12月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年12月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。

■株価は上値試す

 21年8月4日発表の自己株式取得(上限100万株・12億円、取得期間21年8月5日~22年6月30日)については、22年1月31日時点で累計取得株式数が43万4000株となっている。

 株価は地合い悪化の影響で戻り一服の形となったが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。2月22日の終値は1714円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS90円88銭で算出)は約19倍、今期予想配当利回り(会社予想の35円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS750円50銭で算出)は約2.3倍、時価総額は約693億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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