巴工業は調整一巡、23年10月期2桁減益予想だが保守的

 巴工業<6309>(東証プライム)は遠心分離機械などの機械製造販売事業、および合成樹脂などの化学工業製品販売事業を展開している。22年11月からの3年間を対象とする第13回中期経営計画を公表し、重点施策として海外事業の拡大、さらなる収益性の向上、SDGsや脱炭素等、迅速な意思決定と効率的な営業活動に繋がるDX、資本効率の改善、持続的成長に資する投資、社員一人一人が活躍できる職場環境作りに取り組むとしている。22年10月期は化学工業製品販売事業の好調が牽引して2桁増益で着地した。23年10月期は先行投資に伴う販管費の増加などを考慮して2桁減益予想(配当は連続増配予想)としている。ただし保守的な印象が強く上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる展開となったが、調整一巡して出直りを期待したい。

■機械製造販売事業と化学工業製品販売事業を展開

 遠心分離機械などを中心とする機械製造販売事業、および合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を展開している。22年4月には欧州市場における各種化学工業製品の卸売を展開する100%子会社としてTOMOE Advanced Materilsを設立した。

 22年10月期のセグメント別業績(収益認識会計基準適用のため売上高の増減率非記載)は、機械製造販売事業の売上高が113億56百万円(機械30億42百万円、装置・工事11億24百万円、部品・修理71億89百万円)で営業利益が21年10月期比1.9増の9億03百万円、化学工業製品販売事業の売上高が342億32百万円で営業利益が22.5%増の23億96百万円だった。

 機械製造販売の売上高の内訳は、官需45億23百万円(機械8億84百万円、装置・工事9億95百万円、部品・修理26億43百万円)、民需28億92百万円(機械5億62百万円、装置・工事1億29百万円、部品・修理22億01百万円)、海外39億39百万円(機械15億95百万円、装置・工事0百万円、部品・修理23億44百万円)だった。

 化学工業製品販売の売上高の内訳は、合成樹脂関連52億74百万円、工業材料関連59億96百万円、鉱産関連49億07百万円、化成品関連81億42百万円、機能材料関連42億07百万円、電子材料関連54億51百万円、その他(洋酒)2億52百万円だった。

 収益面の特性として、機械製造販売事業は設備投資関連のため、第2四半期(2月~4月)および第4四半期(8月~10月)の構成比が高い傾向がある。

■25年10月期営業利益40億円目標

 22年12月14日付で22年11月からの3年間を対象とする第13回中期経営計画「For Sustainable Future ~持続可能な未来のために~」を策定・公表した

 基本方針は、既存の枠組みに囚われない新たな価値創造と持続的成長を目指し、持続可能な未来のために変革と成長を続け、業績拡大と企業価値向上を実現するとしている。重点施策としては、海外事業の拡大、さらなる収益性の向上、SDGsや脱炭素等、迅速な意思決定と効率的な営業活動に繋がるDX、資本効率の改善、持続的成長に資する投資、社員一人一人が活躍できる職場環境作りに取り組むとしている。

 目標数値としては、最終年度25年10月期売上高500億円(機械145億円、化学品355億円)、営業利益40億円(機械13億円、化学品27億円)、経常利益40億円、当期純利益28億円、ROE(純資産利益率)7.6%を掲げた。

 機械製造販売事業では、生産体制改革推進による採算性向上、海外事業の拡大(中国市場での販売強化、米国市場での営業力強化、新たな市場開拓など)の推進、SDGs・脱炭素への取り組み(バイナリー発電装置等の再生エネルギー分野への展開など)を推進する。

 化学工業製品販売事業では、海外事業の拡大(タイを軸とする東南アジアでのビジネス拡大、チェコを拠点とする欧州各国への展開、新たなサプライヤー発掘など)の推進、SDGs・脱炭素への取り組み(風力発電などの再生可能エネルギー分野、EVおよびそれを支えるパワー半導体分野への商材提供など)を推進する。

 なお22年4月にはサステナビリティ経営推進基本方針に基づき、脱炭素・循環型社会の実現に向けて主力のサガミ工場(神奈川県大和市)で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えている。

■23年10月期2桁減益予想(配当は連続増配予想)だが保守的

 22年10月期の連結業績(収益認識会計基準適用のため売上高の前期比増減率は非記載、利益への影響軽微)は、売上高が455億88百万円で、営業利益が21年10月期比16.0%増の32億99百万円、経常利益が17.8%増の34億21百万円、親会社株主帰属当期純利益は特別利益(固定資産売却益4億60百万円)も寄与して26.1%増の26億59百万円だった。配当(9月2日付で期末3円上方修正)は21年10月期比3円増配の53円(第2四半期末25円、期末28円)とした。

 収益認識会計基準適用前の21年10月期売上高は451億32百万円だった。収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が67億63百万円減少、売上原価が67億63百万円減少、営業利益が1百万円減少、経常利益および税金等調整前四半期純利益がそれぞれ9百万円増加している。

 化学工業製品販売事業の好調が牽引して実質増収となり、前回予想(9月2日付で上方修正、売上高451億50百万円、営業利益31億50百万円、経常利益32億30百万円、親会社株主帰属当期純利益25億10百万円)を上回る2桁増益で着地した。

 機械製造販売事業は、売上高が113億56百万円(収益認識会計基準適用の影響額として20百万円減少、旧基準ベースでは21年10月期比7.7%減の113億77百万円)で、営業利益が1.9増の9億03百万円だった。売上面では、国内官需の機械が伸長したが、国内官需の装置・工事および部品・修理が伸び悩み、海外機械および部品・修理が低調だった。利益面では国内民需の機械および部品・修理の収益性が改善して小幅ながら増益だった。

 化学工業製品販売は、売上高が342億32百万円(収益認識会計基準適用の影響額として67億43百万円減少、旧基準ベースでは同24.9%増の409億76百万円)で、営業利益が22.5%増の23億96百万円だった。工業材料関連および鉱産関連の建材・耐火物用途向けを主とした材料、化成品関連の塗料・インキ用途向けを主とした材料、電子材料関連の半導体製造用途向け材料など、全分野の販売が伸長した。利益面は増収効果で大幅増益だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が99億60百万円で営業利益が5億28百万円、第2四半期は売上高が120億12百万円で営業利益が12億74百万円、第3四半期は売上高が107億74百万円で営業利益が4億28百万円、第4四半期は売上高が128億42百万円で営業利益が10億69百万円だった。なお機械製造販売事業は設備投資関連のため、第2四半期(2月~4月)および第4四半期(8月~10月)の構成比が高い傾向がある。

 23年10月期の連結業績予想は、売上高が22年10月期比3.9%増の473億80百万円、営業利益が10.9%減の29億49百万円、経常利益が13.2%減の29億70百万円、親会社株主帰属当期純利益が前期計上の特別利益の剥落も影響して23.3%減の20億40百万円としている。配当予想は22年10月期比3円増配の56円(第2四半期末28円、期末28円)としている。連続増配予想で、予想配当性向は27.4%となる。

 機械製造販売事業は、海外事業の拡大などで売上高が19.8%増の136億10百万円だが、先行投資に伴う販管費の増加などで営業利益が2.6%減の8億80百万円の計画としている。化学工業製品販売事業は、売上高が好調だった前期の反動などで1.4%減の337億70百万円を見込み、前期抑制した将来の成長に資する営業開発関係の販管費増加も影響して営業利益が14.1%減の20億60百万円の計画としている。

 23年10月期は海外事業の拡大などで増収を見込むが、先行投資に伴う販管費の増加などを考慮して2桁減益予想としている。ただし保守的な印象が強く上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は10月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年10月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、ワイン(当社関連会社取扱商品)1本を贈呈する。

■株価は調整一巡

 なお12月20日に「当社株式等への大規模買付行為等への対応策(買収防衛策)の導入に関するお知らせ」をリリースしている。

 株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる展開となったが、低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。12月22日の終値は2347円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS204円44銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の56円で算出)は約2.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3446円27銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約247億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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