【どう見るこの相場】予測不能の米国発リスク時代、金関連株で備える新年戦略

■地政学リスクの影が迫る市場、ヘッジ先は金関連株にあり

 しばしばニュースで報じられる高齢ドライバーによる自動車事故は、運転の誤操作が原因とされる。ブレーキとアクセルを踏み間違え、停止すべき場面でアクセルを踏み込み、車両を急発進させてしまうケースである。米国のトランプ大統領が運転する自動車は、ブレーキがなく、アクセルだけが装着されているのかもしれない。日本がまだ正月気分の抜けきらない今年1月3日、ベネズエラに大規模な奇襲を仕掛け、マドゥロ大統領とその夫人を拘束・拉致しただけでなく、その後も隣国コロンビアへの軍事進攻姿勢を強めて威嚇し、デンマーク自治領グリーンランドへの領土的・資源的野心を公言してはばからないからである。

 さらに深刻なのは、トランプ大統領の暴挙のブレーキ役を担うと期待された国際社会が、ほとんど機能していない点にある。日本を含むG7(主要7カ国)は、表立って名指しで「力による現状変更」や国際法違反として非難していない。ロシアのウクライナ侵攻については、西側先進国が「力による現状変更」「国家主権侵害」として一斉に非難し、ウクライナへの軍事援助を惜しまない姿勢を示してきた。それにもかかわらず、この暗黙の状況が続けば、対ロシアと対米国で「ダブル・スタンダード」と揶揄されても反論は難しい。仮に中国が近い将来、台湾に軍事進攻する場合、国際社会は台湾防衛の整合的な論拠を欠くことにもなりかねない。

■最高値相場の裏側で忍び寄る不安、トランプ発リスクの影

 西側同盟国は、対ロシア、対中国では前方から飛来する弾丸を警戒してきたが、今度は後方から米国の弾丸が飛んでくる事態にも直面しつつある。「猫の首に鈴」という言葉があるが、猫に翻弄される鼠は早期警戒のため猫の首に鈴をつける妙案を思い付くものの、誰が実行するかで尻込みし、結局は頓挫する。日本でも、一部報道機関が、高市早苗首相が1月23日に召集される通常国会冒頭で解散を検討していると伝えており、報道通りに進めば、緊迫化する国際情勢への対応よりも国内政局を優先する内向き姿勢となる。

 昨年2025年も、トランプ大統領が4月に発動した相互関税により国際社会は大混乱に陥った。ただ、その後「TACO(トランプはいつも尻込みする)」との見方が広がるにつれ織り込みが進み、混乱は収束し、世界のマーケットは高値を追った。しかし、今回のベネズエラへの軍事進攻は人的・物的被害を伴っており、「TACO」として後戻りは難しく、アクセルを踏み込んだまま前進する可能性がある。

 新年相場は、米国のベネズエラ進攻の影響は限定的として買い先行で始まり、米国、日本をはじめ主要マーケットで最高値更新が続いている。歓迎すべき動きではあるが、浮かれてばかりはいられない。いつ何時、トランプ大統領の暴走が地政学リスクの悪化として市場にマイナスに作用しないとも限らないからである。現に、ニューヨーク商品取引所に上場する金先物価格は、ベネズエラ進攻以降に急反発し、東京市場が休場だった前日12日には1トロイオンス=4614.7ドルと前日比113.8ドル高まで急伸し、一時4640.5ドルを付け、昨年12月26日の上場来高値4584ドルを更新した。米司法省がパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長に召喚状を送付し、刑事捜査の対象となったことが明らかになり、トランプ大統領の圧力によって中央銀行の独立性が脅かされるとの警戒感から、リスク回避の買い、安全資産買いが一段と強まった。

■中央銀行が選ぶ最終防衛線、金高騰に透ける世界の不安

 金価格の上昇は、地政学リスクをヘッジする「有事の金買い」に加え、世界的な金融緩和を背景とした金利低下により、利息の付かない金が相対的に有利となった市場要因、さらにはドル離れ・ドル不信、ドル預金封鎖など経済封鎖回避を目的とした各国中央銀行の金買いといった需給要因が重なった結果と分析されている。とりわけ中央銀行は、準備資産のポートフォリオを見直し、金の積み増しを進め、シェアを2割程度まで高める動きを強めているとされる。「トランプ・ディール(取引)」が見境のない「トランプ・ブラフ(脅し)」へとエスカレートする状況を見れば、中央銀行の金買いが弱まるとは考えにくい。

 個人投資家の新年の投資スタンスも、こうした中央銀行の動きを参考にすべきだろう。東京市場の金関連株は、米国のベネズエラ進攻とともに急騰し、軒並み上場来高値や昨年来高値を更新している。この高値で敢えて飛び付くか、調整を待つかは別として、持ち株の一部にベース・ストックとして組み入れる選択肢は有力だ。今年11月2日の米国中間選挙まで、トランプ大統領が何度アクセルを踏み込むのか、ブレーキの利かない自動車がどこへ突っ込むのかは、ますます予測不能となる。事前に「トランプ・リスク」のヘッジを講じておく重要性は高い。

 当コラムでは昨年来、金関連株を繰り返し取り上げてきた。新年早々、焼き直しの感は否めないが、「一度あることは二度ある」「二度あることは三度ある」「三度あることは何度もある」と心得たい。念には念を入れ、2026年相場全体のベース・ストックとして金関連株を位置付け、産金株、リデュース(再資源化)株、リユース(買い取り・再販)株といった関連銘柄に注目する戦略を改めて勧めたい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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