【小倉正男の経済羅針盤】『談話』は終わった、経済に戻れ

小倉正男の経済羅針盤

■「談話」=「戦前」「戦後」の呪縛との格闘

なんでもそうだが、批評や批判はたやすいものだが、行うのは大変なことである。

安倍晋三総理だが、政治家なのだから政治に走ることになる。経済をやっているぶんには大きな異論は抱えない。しかし、「戦前」、「戦後」を相手にして政治に走れば、これは大変なことになる。

私個人のことで恐縮だが戦後教育で育ってきたのだから、映画でも小説でも「戦前」の否定から入っている。「戦後」は大枠それで時が流れてきた。無垢というか粗雑ともいえる「戦前」賛美にはついていけない面がある。

だが、安倍総理ともなれば、「戦後70年談話」だ、その背景にある「歴史認識」だ、ということで心身を酷く痛めかねないことになる。

10年ごとに「談話」を出すこと自体が、「戦前」、「戦後」の呪縛のようなものだ。その「談話」を出すというのだから、「戦前」、「戦後」をずしりと背負ってしまうことになる。
総理としては、それが嫌なのに「談話」という呪縛と格闘せざるをえない・・・。

■「政治」で支持率を落したが、「経済」では結果を出した

「アベノミクス」つまり安倍総理の経済については、それこそ様々な批評、批判はあるだろうが、トータルとしては結果を出したといえるのではないか。

とくに、「スチュワードシップ・コード」「コーポレートガバナンス・コード」といったマーケット改革を行ったことは何よりも大きい。
この二つのコード(取り決め)は、デファクトな改革だが、後戻りのできないものだ。これにより日本資本主義は「変革期」に入ったというべきである。

安倍総理の後継者ははたして誰か――。影が薄いどころか、ほとんど影が見えない。「政治」では支持率を落しているが、経済では支持率をさほど落していないのではないか。
むしろ企業人の多くが、安倍総理なき日本経済を心配しているのが現状といえるに違いない。

■安倍総理の後継は影すら見えない・・・

後継などつくるものではなく、自然に生まれてくるものだろうが、現状はその影すらない。それもやや恐ろしい話だが、現実でしかない。

「談話」はもう終わった。「戦前」「戦後」もこのへんでよいではないか――。

「スチュワードシップ・コード」、「コーポレートガバナンス・コード」などマーケット改革で、大局的にはアベノミクスはその使命を果たした、と見ることもできないではない。

しかし、時代はまだ求めているといってよいように見える。
「談話」は終わったが、日本経済の改革の仕上げは、まだまだこれからでしかない。
後継の影が見えない以上は、時代や国民がもういいよ、というまで経済=デフレ脱却に取り組むべきではないか。

(経済ジャーナリスト。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社で編集局記者・編集者、金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。)

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