Jトラストは下値固め完了、23年12月期1Q大幅増益で通期上振れの可能性

Jトラスト<8508>(東証スタンダード)は日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアにおいて金融事業を展開し、さらなる成長に向けて継続的にポートフォリオ再編や事業基盤拡大戦略を推進している。23年12月期は韓国における金利上昇影響などを考慮して営業減益予想(JTG証券の金融商品取引業を含まず)としている。ただし第1四半期は大幅増益で通期利益予想を超過達成した。新規連結取込や負ののれん発生益計上が寄与した形だが、日本金融事業、韓国およびモンゴル事業、東南アジア金融事業とも概ね計画を上回る水準だった。通期予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は年初来安値圏でモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。指標面の割安感も評価して出直りを期待したい。

■日本、韓国・モンゴル、東南アジアで金融事業を展開

日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアにおいて金融事業(銀行、信用保証、債権回収、その他の金融)を展開し、さらなる成長に向けて継続的にポートフォリオ再編や事業基盤拡大戦略を推進している。なお5月19日には、同社代表取締役社長藤澤信義氏が代表理事を務める藤澤記念財団が、内閣総理大臣より公益法人に認定され、一般社団法人から公益財団法人へ移行したと発表している。

22年12月期のセグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)は、日本金融事業が販管費増加などで21年12月期比14.3%減の39億31百万円、韓国およびモンゴル金融事業がJT親愛貯蓄銀行の連結取込や負ののれん発生益の計上などで349.9%増の144億37百万円、東南アジア金融事業が優良な貸出金積み上げや預金金利低下による資金調達コスト減少などで58百万円の黒字(21年12月期は63億72百万円の赤字)だった。投資事業は前期のシンガポール控訴裁判所における勝訴判決全額履行(受領額78億47百万円)の剥落で22億05百万円の赤字(同54億45百万円の黒字)だった。その他事業は52.9%減の2億02百万円だった。なお収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで変動する可能性がある。

■成長加速に向けて事業基盤拡大

日本金融事業は日本保証が保証業務、パルティール債権回収が債権回収業務を展開している。21年8月には子会社Frontier Capitalを設立してファクタリング事業を開始した。23年1月には日本保証が博多不動産販売と、不動産投資型クラウドファンディングサイト「ライフフィールドファンド」を通じて、博多不動産販売が所有する対象不動産への買取保証業務を開始すると発表した。

なお20年11月に、Nexus Bank(旧SAMURAI&J PARTNERS)と株式交換によってJトラストカードおよびJトラストカードの子会社である韓国・JT親愛貯蓄銀行を連結除外としたが、その後22年4月にNexus Bankを株式交換によって完全子会社化し、Nexus Bank傘下の子会社3社(SAMURAI TECHNOLOGY、Nexus Card、JT親愛貯蓄銀行)も連結子会社となった。SAMURAI TECHNOLOGYは22年4月に全株式を譲渡して連結除外、Nexus Bankは23年4月に吸収合併した。

22年3月に子会社化したエイチ・エス証券については、22年10月1日付で商号をJトラストグローバル証券(JTG証券)に変更した。22年12月にはJTG証券が主幹事を担当したアップコン<5075>が名証ネクストに上場した。TOKYO PRO Market上場支援と、一般市場へのステップアップ上場支援を1社完結で実現させた実績を持つ国内唯一の証券会社である。

韓国およびモンゴル金融事業では、韓国・JT親愛貯蓄銀行を直接親会社のJトラストカードと一緒に売却したが、Nexus Bankを完全子会社化したことに伴ってグループに復帰した。韓国・JTキャピタルについては21年8月に全株式の譲渡を完了して連結除外した。韓国・JT貯蓄銀行については、株式売買契約締結期限までに契約内容の合意に至らなかったため株式譲渡を中止した。

この結果、韓国およびモンゴル金融事業は、韓国・JT貯蓄銀行、韓国・JT親愛貯蓄銀行、および債権回収業務の韓国・TA Asset、割賦業務のモンゴル・JトラストクレジットNBFIが展開している。JT貯蓄銀行とJT親愛貯蓄銀行を合計すると、総資産および貸出金で韓国の貯蓄銀行79行のうち7位規模(21年9月現在)となる。

22年6月にはJT親愛貯蓄銀行が未婚・片親家庭のための寄付金を福祉施設エランウォンに贈呈した。23年1月にはJT親愛貯蓄銀行が「2023大韓民国ファーストブランド賞」で8年連続貯蓄銀行部門大賞を受賞した。顧客優遇金融商品発売および社会貢献活動により地域社会に持続的に尽くしてきた功労が認められた。

東南アジア金融事業は、Jトラスト銀行インドネシア(BJI)が銀行業務、Jトラストオリンピンドマルチファイナンス(JTO)がマルチファイナンス業務、Jトラストインベストメンツインドネシア(JTII)が債権回収業務、カンボジアのJトラストロイヤル銀行(JTRB)が銀行業務を展開している。

BJIは21年11月に飯田グループのインドネシアの住宅開発・販売会社と住宅販売に係る業務提携契約を締結した。今後も、インドネシア各地に事業展開している飯田グループ各社と業務提携を順次締結し、飯田グループが提供する住宅を購入する顧客を対象に住宅ローン商品を提供する。21年12月にはAsuransi Jiwa Sequis Financialと、生命保険・医療保険の販売を視野に入れた包括的業務提携契約を締結した。

投資事業はJトラストアジアが展開している。なおJトラストアジアは販売金融事業のタイGL社に出資したが、17年10月にタイGL社CEO此下益司氏がタイSECから偽計および不正行為で刑事告発された。このため現在はタイGL社、此下益司氏、およびGLの関連取締役に対して、刑事告発手続き、会社更生法申し立て・補償請求・賠償請求などの訴訟を提起している。

GL社に対する訴訟の解決・債権回収が課題となっていたが、勝訴判決に基づいて履行を受けるなど解消に向けた動きが進展している。シンガポールにおいては控訴裁判所の判決(20年10月)に基づいて債権回収が進展している。なお4月10日には、シンガポール高等法院がJトラストアジアの請求を認容し、被告らに対して連帯で約165億55百万円(1米ドル=133円で換算)および21年8月1日からの利息の支払い等を命じる判決を言い渡したと発表している。

タイにおいては、21年3月の控訴審判決でJトラストアジアによる権利行使は適法であるとしてGLの請求を全面的に棄却したが、この控訴審判決を不服とするGLの上告受理の申し立てが最高裁判所において22年8月31日付で受理の決定がなされた。ただし最高裁判所における審理においても、引き続き主張が認められるよう尽力するとしている。また、GLに対する会社更生の申し立てについては、最高裁判所において21年12月に申し立てが却下されたが、民事訴訟については第1審の審理が継続している。

英領バージン諸島においては21年5月に、控訴裁判所が昭和ホールディングスによる上訴を棄却した。そして22年5月には、民事訴訟における支払命令(約95百万米ドル、1ドル=127円換算で約121億円)判決が確定した。キプロスにおいては21年8月に、此下益司氏ならびにキプロス所在4社に対して約130百万米ドルの賠償を求める訴訟を提起し、裁判所が被告らに対する全世界的資産凍結命令を発令した。

日本では21年6月に、A.P.F.GROUP、昭和ホールディングス、ウェッジホールディングスに対して、約24百万米ドルの支払いを求める損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起した。日本における損害賠償請求訴訟については、22年3月の東京地方裁判所による第一審判決で損害賠償請求が認められなかったが、判決内容を十分に精査し、弁護士とも協議のうえ今後の対応を検討するとしている。

その他事業は主にJ Sync(旧Robotシステム)がグループのシステム開発・運用・管理業務、Jグランドが不動産事業を展開している。J Syncは22年3月に不動産クラウドファンディングシステム「fundingtool」の提供を開始し、22年4月のバージョンアップによって小規模不動産特定共同事業にも対応可能となった。23年2月には不動産事業や再生可能エネルギー事業を展開するミライノベートを吸収合併した。シナジー効果で不動産事業を拡大する方針だ。23年3月には電子決済等代行業の登録が完了した。

また23年5月には子会社のJグランドが、東京の城西地区を中心に不動産業を展開するライブレントの全株式を取得して子会社化した。なお、実質的に休眠会社となっているメディア事業の特定子会社ジャパンギャランティーについては、清算予定(清算決了予定6月30日)としている。

KeyHolder<4712>については、保有する同社株式の一部を、ミクシィ<2121>が設立したミクシィエンターテインメントファンド1号投資事業有限責任組合など5社に譲渡(20年12月)した。引き続き当社が筆頭株主だが、KeyHolderおよび同社の連結子会社は持分法適用関連会社に異動した。

■23年12月期1Q大幅増益で通期利益予想を超過達成

23年12月期連結業績予想(JTG証券の金融商品取引業を含まず)は、営業収益が22年12月期比39.5%増の1150億円、営業利益が41.0%減の85億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が2.9%増の130億円としている。配当予想は22年12月期比4円増配の14円(第2四半期末1円、期末13円)としている。連続大幅増配予想で中間配当も再開する。

セグメント別営業利益の計画は、日本金融事業が46.6%増の57億64百万円、韓国およびモンゴル金融事業が14億32百万円の赤字(22年12月期は144億37百万円の黒字)、東南アジア金融事業が4億66百万円の赤字(同58百万円の黒字)、投資事業が22億13百万円の赤字(同22億05百万円の赤字)、その他事業が88億86百万円(同2億02百万円)としている。なお23年12月期から不動産セグメントを新設する。不動産事業のさらなる拡大によって日本保証の信用保証残高の積み上げを目指す方針だ。またJグランドについては事業拡大に伴ってIPO(新規株式公開)を計画している。

第1四半期は営業収益が前年同期比111.6%増の261億36百万円、営業利益が365.2%増の92億93百万円、税引前利益が146.1%増の99億66百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が147.7%増の91億24百万円だった。

大幅増収増益で通期利益予想を超過達成した。日本金融事業、韓国およびモンゴル事業、東南アジア金融事業とも概ね計画を上回る水準で推移し、不動産・再生可能エネルギー事業(23年12月期よりセグメント新設)における新規連結取込や負ののれん発生益計上も寄与した。なお、その他の収益・費用(93億47百万円増の94億82百万円)では、前期のJTG証券の株式取得に伴う負ののれん発生益が一巡したが、吸収合併したミライノベートに係る負ののれん発生益を計上した。金融収益・費用(14億63百万円減の3億70百万円)では投資有価証券売却益が減少した。

セグメント別に見ると、日本金融事業は営業収益が41.5%増の30億53百万円で、営業利益が25.7%減の8億79百万円だった。JTG証券およびNexus Cardの連結取込も寄与して大幅増収だが、同時に販管費も増加し、前期のJTG証券の取得に伴う負ののれん発生益の反動も影響して減益だった。

韓国およびモンゴル金融事業は営業収益が166.8%増の112億61百万円、営業利益が5億78百万円の赤字(前年同期は11億75百万円の黒字)だった。JT親愛貯蓄銀行の連結取込や、貯蓄銀行業における貸出金の増加に伴う利息収支の増加などで大幅増収だが、貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額の増加で減益だった。

東南アジア金融事業は、営業収益が43.6%増82億93百万円で、営業利益が41.5%増の7億19百万円だった。銀行業における貸出金増加や保有有価証券増加に伴う利息収支増加などで大幅増収となり、貸出債権のリスク低下や資金調達コスト減少などで増益だった。

不動産・再生可能エネルギー事業(23年12月期よりセグメント新設)は、営業収益が34億24百万円(前年同期は1億54百万円)で、営業利益が92億70百万円(同37百万円の赤字)だった。グローベルスの連結取込、吸収合併したミライノベートに係る負ののれん発生益が寄与した。

投資事業は、営業収益が23.0%増の92億26百万円、営業利益が2億04百万円の赤字(同4億22百万円の赤字)だった。訴訟費用が減少して赤字縮小した。その他事業は営業収益が4.6%減の1億36百万円、営業利益が436.8%増の56百万円だった。

通期連結業績予想(JTG証券の金融商品取引業を含まず)は据え置いている。日本金融事業は、保証事業における既存の信用保証残高からの安定的な保証料収益や、債権回収事業における大型債権購入による収益計上を見込んでいる。韓国およびモンゴル金融事業は、韓国の市中金利の高騰による調達金利の上昇、韓国全体における延滞増加、引当金積み増しを見込んでいる。対策として量の成長から質の成長への転換、徹底した延滞管理などを推進する。東南アジア金融事業は、金利上昇等に伴う調達コスト上昇などを見込んでいる。不動産・再生可能エネルギー事業では、ミライノベート吸収合併に伴う負ののれん発生益を第1四半期に計上した。今後はJグランドとグローベルスとのシナジー効果で収益拡大を目指す。

23年12月期は韓国における金利上昇影響などを考慮して営業減益予想(JTG証券の金融商品取引業を含まず)としている。ただし第1四半期は大幅増益で通期利益予想を超過達成した。新規連結取込や負ののれん発生益計上が寄与した形だが、日本金融事業、韓国およびモンゴル事業、東南アジア金融事業とも、概ね計画を上回る水準で推移している。通期予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度を再開、配当と合わせて株主還元を一段と強化

23年2月14日に株主優待制度を再開すると発表した。毎年3月末および9月末日時点で1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じて、オリーブスパが運営するリラクゼーションサロンで利用できるチケット、またはクリアグループが運営する各施設の金券を贈呈(詳細は会社HP参照)する。23年3月末対象から開始した。配当(23年12月期連続増配予想)と合わせて株主還元を一段と強化する方針としている。

■株価は下値固め完了

株価は年初来安値圏でモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。指標面の割安感も評価して出直りを期待したい。5月29日の終値は409円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS97円01銭で算出)は約4倍、今期予想配当利回り(会社予想の14円で算出)は約3.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結1株当たり親会社所有者帰属持分1004円59銭で算出)は約0.4倍、そして時価総額は約601億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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