【どう見るこの相場】グロース株の投資セオリーが通用しない東証グロース市場、業績好調なバリュー株にチャンス

■出遅れの出遅れ修正で東証グロース市場のバリュー株へのアプローチも筋違いの選択肢

 東証グロース市場は、「カヤの外」のマーケットに甘んじている。前週末10日も、TOPIX(東証株価指数)や東証プライム市場指数、東証スタンダード市場指数が揃って続伸したのに、東証グロース市場指数は、前日比1.64%安と急反落してしまった。日経平均株価も、0.24%安と反落したが、取引時間中の安値下落幅398円から300円超も引き戻して引けており、比べて復元力の鈍さを示した。

 指数水準自体も、日経平均株価を始め他の株価指標が、何だかんだといっても今年1月の年初来安値から右肩上がりのトレンドを続けているのに、今年5月の年初来高値から下値を探り、10月24日に年初来安値まで売られてしまった。本来、グロース市場は、業績の赤字・黒字の現在位置や配当の有無を問わず独自のビジネスモデルや成長性、将来性を買うグロース株マーケットであることがカタリスト(株価材料)となっている。このグロース株(成長株)の投資セオリーは、米国の10年物国債利回りが、低下すれば高PER株の割高感が薄れるとして買い、逆なら売りとするのが市場コンセンサスである。

 米国の10年物国債利回りは、今年10月19日に一時、約16年ぶりに5%に乗せたが、そのあと4.49%まで低下しており、足元ではFRB(米連邦制度理事会)の金融引き締め策が長期化するか、政策金利引き上げ打ち止めの最終局面にあるのかで揺れており、経済データの動向やFRBの要人発言などで上下に振れている。この低下場面では、同じグロース株の半導体関連株は、生成AI(人工知能)人気も加わって派手に値を飛ばすしているのに対して、グロース市場の反応は限定的にとどまり、これが逆行安要因となってきた。逆に10年物国債利回りの上昇場面では、低PERのバリュー株(割安株)が買われ、バリュー株市場のスタンダード市場に資金が流入し、バリュー株の寄与によりTOPIXも逆行高することになる。

 しかしである。グロース市場にも数は少ないながら、バリュー株はあるのである。前週末10日にピークを越えた決算発表でも、プライム市場株やスタンダード市場株に比べれば限定的ながら、業績を上方修正し合わせて増配を発表した銘柄も出ていた。この業績の上方修正では、注目される先行事例がある。霞ケ関キャピタル<3498>(東証プライム)とI-ne<4933>(東証プライム)である。霞ケ関キャピタルは、今年7月4日に前8月期業績を上方修正し、9月29日には東証プライム市場への上場(10月6日付け)が承認され、同じくI-neも、今年8月9日に業績の上方修正、8月31日に市場変更(9月19日付け)が承認された。

 現下のグロース市場は、出遅れ市場で、同市場のバリュー株はさらに出遅れていることになる。しかし霞ケ関キャピタルやI-neの先行ケースにように人気が突出することが期待できるとすれば、その投資バリューにアプローチすることも十分に一考余地があるはずである。そこで今週の当コラムは、筋違いながらグロース市場のバリュー株に注目することにした。

 注目候補は、3グループとなる。まず前週10日にピークを越えた決算発表で業績を上方修正した銘柄のうちのバリュー株である。霞ケ関キャピタルとI-neがモデルケースである。さらにグロース市場のグロース株の定番の時価総額上位銘柄のうちのバリュー株、高配当利回りランキング上位銘柄のうちの低PER株なども有力候補となり、出遅れの出遅れの修正を期待したい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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