【忠田公夫の経済&マーケット展望】中国など新興国の負債額は資本額の2倍、米の利上げは新興国に圧迫、11月のG20が焦点

忠田公夫の経済&マーケット展望

9月7日付けの当欄で「FRBが3度にわたり実施した量的緩和策(QE1・QE2・QE3)による市場への大量の資金供給が、資産価格の大幅な上昇や新興国におけるドル建て資金の調達に多大の貢献をしてきた」と述べた。

8月上旬以降の世界的な株価急落の背景として、(1)FRBが2004年以来、久々の利上げを模索するさなかに、(2)中国の景気減速リスクが台頭したことで、世界経済の先行きに急速に不安が高まったことが挙げられる。

さらに、英フィナンシャル・タイムズによると、IMF(国際通貨基金)の試算では、中国など新興国市場の現在の負債額は資本の額の約2倍に増加している、と伝えている。4年前までは負債と資本の額がほぼ均衡していただけに、この数年のドル高で、新興国の企業は債務の返済が一層厳しくなりつつある。

このうえ、FRBが利上げに踏み切り、米国金利の上昇につれて、なおドルの上昇が継続すると、新興国における信用バブルが弾ける恐れが高まりかねない。このような信用不安の髙まりを懸念して、早目にリスク回避に動いたのが、今回の世界連鎖株安の真因ではないだろうか。

こうした視点に立てば、9月の米国・雇用統計が市場予想を大幅に下回ったことで、10月27~28日のFOMCで利上げに進むのは難しくなり、12月15~16日の年内最後のFOMCにおいても、今後、発表される10月や11月の雇用統計でよほどの好転がない限り、以上のような新興国の抱えるリスクを考慮すると、利上げは来年3月以降に先送りされる可能性が強まってきたと考えられる。

そこで、注目されるのが11月15~16日にトルコで開催される予定のG20サミットに向けての具体策だ。足元の世界景気の減速に対して、しかるべき対策が検討されるのか、あるいは新興国の信用不安に対して何らかの方策が打ち出されるのか、市場はその中身を注視している。(忠田公夫=アナリスト)。

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