【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アートスパークHDは売られ過ぎ感強めて切り返し局面、15年1月「オートモーティブ ワールド2015」に出展も好感の可能性

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 電子書籍ビューアやグラフィクス制作支援ソフトのアートスパークホールディングス<3663>(東2)は12月17日、15年1月開催の「オートモーティブ ワールド2015」への出展を発表した。株価は11月27日の戻り高値736円から12月17日の533円まで調整したが、目先的な売られ過ぎ感を強めている。自動車の自動運転関連というテーマ性もあり、再人気化して9月の年初来高値872円を試す可能性があるだろう。

 グラフィクス技術のセルシスとエイチアイが12年4月に統合した持株会社で、電子書籍ビューア「BS Reader」やグラフィクスソリューションなどのコンテンツソリューション事業、グラフィクスコンテンツ制作支援ツールなどのクリエイターサポート事業、3Dグラフィックス描画エンジンなどのUI/UX事業を展開している。アプリケーション事業は戦略的に事業縮小を進めている。

 マルチデバイス対応の電子書籍ビューア「BS Reader」は、インフォコム<4348>グループのアムタスの電子書籍配信サービス「ekubostore」や、ソフトバンクモバイルのスマートフォン向け総合電子書籍サービス「スマートブックストア」など897以上の電子書籍配信サービスで利用されている。またマンガ制作ソフト「ComicStudio」は累計出荷本数が160万本を超え、マンガ・イラスト制作ソフト「CLIP STUDIO」は40万本を超えている。クリエイターの創作活動を支援するサイト「CLIP」は14年6月末時点の登録者数が41万人となった。

 戦略分野に対して積極投資を推進している。13年12月にエイチアイが自動運転関連ベンチャーのZMPの第三者割当増資の一部を引き受け、14年2月にエイチアイがエイチアイ関西の株式を取得、14年4月にエイチアイが組み込み機器向けソフトウェア開発のユーアイズデザインの株式を取得した。

 12月17日には、子会社のエイチアイとユーアイズデザインが、15年1月14日~16日に開催される企業向け自動車次世代技術専門展「オートモーティブ ワールド2015:第3回コネクティッド・カー EXPO」に出展すると発表した。次世代車載HMIなどを展示し、自動運転関連ベンチャーZMPとのコラボレーションデモの展示も予定している。

 今期(14年12月期)の連結業績見通しは前回予想(1月31日公表)を据え置いて売上高が前期比2.4%増の37億75百万円、営業利益が63百万円の黒字(前期は69百万円の赤字)、経常利益が36百万円の黒字(同68百万円の赤字)、純利益が同39.3%減の26百万円としている。

 第3四半期累計(1月~9月)は前年同期比15.3%減収で、営業利益、経常利益、純利益とも前年同期に比べて赤字幅が拡大した。クリエイターサポート事業が増収で営業黒字化したが、UI/UX事業でロイヤリティ収入の計上が第4四半期(10月~12月)にズレ込んだことに加えて、持分法適用会社のガラットに対する持分法による投資損失なども影響した。

 通期ベースでは、コンテンツソリューション事業での法人向けグラフィクス関連の強化、クリエイターサポート事業での「CLIP STUDIO」シリーズの拡販、UI/UX事業での受託開発案件の受注活動強化、そしてロイヤリティ収入の計上などで増収見通しとしている。利益面では製品開発の効率化や原価管理の徹底も寄与して営業黒字化、経常黒字化見通しだ。

 株価の動きを見ると、11月27日の戻り高値736円から利益確定売りで反落し、全般地合い悪化も影響して12月17日には533円まで調整した。ただし急ピッチの調整で目先的な売られ過ぎ感を強めている。

 12月17日の終値533円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS3円90銭で算出)は137倍近辺、実績PBR(前期実績の連結BPS340円55銭で算出)は1.6倍近辺である。

 週足チャートで見ると、26週移動平均線がサポートラインとなって下値切り上げの展開が続いている。また日足チャートで見ると、25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて目先的な売られ過ぎ感を強めている。自動車の自動運転関連というテーマ性もあり、再人気化して9月の年初来高値872円を試す可能性があるだろう。

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