加賀電子、26年3月期は2度目の上方修正、EMS・情報機器の好調で増収増益
- 2025/11/25 07:37
- アナリスト銘柄分析

加賀電子<8154>(東証プライム)は独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。半導体・電子部品等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを主力に、成長戦略として収益力強化、経営基盤強化、新規事業創出、SDGs経営を推進している。26年3月期は増収増益予想(11月6日付で2回目の上方修正)としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は最高値圏でモミ合う形だ。低PERや高配当利回りなど指標面の割安感も評価材料であり、日柄調整が完了して上値を試す展開を期待したい。
■独立系の大手エレクトロニクス総合商社
独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。M&Aも活用し、半導体・電子部品等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開している。25年7月にはTOBで協栄産業<6973>を子会社化した。
25年3月期は、電子部品事業の売上高が4729億10百万円で営業利益(連結調整前)が169億27百万円、情報機器事業の売上高が426億52百万円で営業利益が33億07百万円、ソフトウェア事業の売上高が33億87百万円で営業利益が5億09百万円だった。その他事業(エレクトロニクス機器修理・サポート、アミューズメント機器製造・販売、スポーツ用品販売など)の売上高が288億29百万円で営業利益が27億07百万円だった。会社別には加賀電子の売上高が3195億27百万円で営業利益が198億55百万円、加賀FEIの売上高が1978億68百万円で営業利益が18億60百万円、エクセルの売上高が303億83百万円で営業利益が16億45百万円だった。
中期経営計画に沿ったセグメント区分は電子部品事業、EMS事業、CSI事業(情報機器事業)、その他事業(ソフトウェア事業、その他)としている。25年3月期は電子部品の売上高が3477億40百万円で営業利益が102億34百万円、EMSの売上高が1345億44百万円で営業利益が73億72百万円、CSIの売上高が426億52百万円で営業利益が33億07百万円、その他の売上高が228億41百万円で営業利益が25億37百万円だった。
■売上高1兆円企業を見据えた中期経営計画2027
24年11月策定の中期経営計画2027(26年3月期~28年3月期)では重点施策として更なる収益力の強化、経営基盤の高度化、SDGs経営の推進を掲げ、売上高1兆円企業を見据えた最終年度28年3月期の目標値を、新規事業やM&Aを含めて売上高8000億円以上、営業利益360億円以上としている。オーガニック成長による目標は売上高7000億円以上、営業利益350億円以上、資本効率性の指標はROE12.0%以上(株主資本コスト10%前後)としている。オーガニック成長による収益目標のセグメント別内訳は、電子部品事業が売上高4000億円で営業利益165億円、EMS事業が売上高2300億円で営業利益135億円、CSI事業が売上高550億円で営業利益40億円、その他事業が売上高150億円で営業利益10億円としている。
事業戦略としては、商社ビジネスの拡大を高付加価値のEMSビジネスにつなげ、収益性の向上を推進する。また創業60周年を迎える29年3月期での売上高1兆円達成に向けて、M&Aの活用により当中期経営計画期間中に1000億円超の新たな事業収益の獲得を目指す。さらにエネルギー、インフラ、交通、環境を重点テーマとして新規事業を探索する。
25年3月には子会社のデジタル・メディア・ラボが、世界最大級のゲームアウトソーシングおよびゲーム開発スタジオであるWinking Studios(本社:シンガポール)と、CG制作全般の受託業務拡大を図ることを目的とした戦略的パートナーシップ契約を締結した。25年10月には、GXを実現する革新的な冷却技術として注目される液浸冷却技術の普及と標準化を推進する一般社団法人日本液浸コンソーシアム(25年6月設立)へ賛助法人会員として参画した。25年11月にはアセアン領域で増大するEMS需要に対応し、タイの子会社において新工場を建設(稼働時期25年内目途)すると発表した。また子会社の協栄産業がArentと建築積算・見積分野におけるAI活用で業務提携した。
株主還元については連結配当性向の目安を30~40%に引き上げ、中長期的な利益成長を通じた配当成長に努める。普通配当については安定的かつ継続的な配当の目安をDOE4.0%とし、さらに利益水準や資本効率性に応じた追加施策として、特別配当や自己株式取得を機動的に実施する。
SDGs経営についてはサステナビリティ中長期経営計画(21年11月公表)に基づいて、持続可能な社会の実現に積極的な役割を果たすとともに、企業価値の持続的成長に取り組むとしている。25年2月にはCDP「気候変動レポート2024」において「B」スコアを獲得した。25年3月には経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2025(大規模法人部門)の認定を受けた。3年連続の認定となる。
■26年3月期増収増益・増配予想
26年3月期の連結業績予想(25年11月6日付で2回目の上方修正)は、売上高が前期比8.6%増の5950億円、営業利益が8.0%増の255億円、経常利益が12.9%増の255億円、親会社株主帰属当期純利益が52.2%増の260億円としている。配当予想(25年8月7日付で第2四半期末5円、期末5円、合計10円上方修正)は据え置いて、24年10月1日付の株式2分割遡及換算後で前期比10円増配の120円(第2四半期末60円=普通配当55円+特別配当5円、期末60円=普通配当55円+特別配当5円)としている。予想配当性向は22.9%(負ののれん発生益72億円を除くベースでは31.6%)となる。
中間期の業績を鑑み、前回予想(協栄産業を子会社化したことに伴い25年8月7日付で上方修正、売上高5740億円、営業利益240億円、経常利益238億円、親会社株主帰属当期純利益242億円)に対して、売上高を210億円、営業利益を15億円、経常利益を17億円、親会社株主帰属当期純利益を18億円、それぞれ上方修正した。
修正後のセグメント別の計画は、電子部品事業の売上高が9.2%増の5165億円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が9.3%増の185億円、情報機器事業の売上高が5.5%増の450億円で利益が5.8%増の35億円、ソフトウェア事業の売上高が3.3%増の35億円で利益が1.9%減の5億円、その他事業の売上高が4.1%増の300億円で利益が10.8%増の30億円としている。
中間期は、売上高が前年同期比11.5%増の2889億59百万円、営業利益が13.5%増の130億49百万円、経常利益が19.2%増の134億43百万円、親会社株主帰属中間純利益が89.3%増の150億33百万円だった。
2桁増収増益だった。電子部品事業のEMSビジネス、情報機器事業のパソコン販売ビジネス、その他セグメントのアミューズメント機器販売が好調に推移し、人件費の増加などを吸収した。営業外では為替差損が6億76百万円減少(前期は差損9億95百万円、当期は差損3億19百万円)した。特別利益では投資有価証券売却益が11億29百万円増加(前期は76百万円、当期は12億05百万円)したほか、段階取得に係る差益4億66百万円、負ののれん発生益38億円を計上した。
電子部品事業は売上高が9.7%増の2477億88百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が3.3%増の89億67百万円だった。EMSビジネスは車載向け、事務機向けの一部顧客で需要減少したものの、医療機器向け、空調機器向け、産業機器向けが好調に推移した。部品販売ビジネスは、協栄産業を第2四半期より新規連結したことが寄与したほか、長期化が懸念されていたサプライチェーンにおける在庫調整に回復の兆しが見られた。
情報機器事業は売上高が15.8%増の215億71百万円、利益が16.1%増の16億16百万円だった。パソコン販売ビジネスは新入学向け需要期で教育機関向けの販売数量が増加したほか、量販店向けもWindows10サポート終了に伴う買い替え需要が追い風となった。また比較的採算性の高いセキュリティソフトの好調も寄与した。電気・通信機器設置ビジネスでは電気設備(受変電、太陽光パネル)工事の受注が拡大した。
ソフトウェア事業は売上高が14.1%増の16億79百万円、利益が35.6%減の1億65百万円だった。利益は前期を下回ったが、売上面はゲームおよびアミューズメント機器向けCG制作の受託拡販で増収だった。
その他事業(エレクトロニクス機器修理・サポート、アミューズメント機器製造・販売、スポーツ用品販売など)は売上高が36.9%増の179億19百万円、利益が94.0%増の21億22百万円だった。大幅増収増益だった。国内および米国向けアミューズメント機器が好調に推移したほか、PC製品およびPC周辺機器のリサイクルビジネスも堅調だった。
なお会社別の営業利益(連結調整前)は、加賀電子が14.8%増の111億21百万円、加賀FEIが3.1%増の10億22百万円、エクセルが6.7%減の6億47百万円、協栄産業が1億87百万円だった。中計セグメント別の営業利益(同)は電子部品が1.1%減の49億63百万円、EMSが8.4%増の45億13百万円、CSI(コンシューマー&システムインテグレーター)が16.1%増の16億16百万円、その他が117.8%増の18億45百万円だった。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が1380億86百万円で営業利益が64億84百万円、第2四半期は売上高が1508億72百万円で営業利益が65億64百万円だった。
修正後の通期予想に対する中間期の進捗率は売上高49%、営業利益51%、経常利益53%、親会社株主帰属当期純利益58%である。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
株価は最高値圏でモミ合う形だが、低PERや高配当利回りなど指標面の割安感も評価材料であり、日柄調整が完了して上値を試す展開を期待したい。11月21日の終値は3550円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS524円78銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の120円で算出)は約3.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3162円68銭で算出)は約1.1倍、そして時価総額は約1863億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)






















