大幸薬品、正露丸成分「木クレオソート」がアニサキス症に効果、動物実験で初確認

■日本寄生虫学会誌に掲載予定、胃腸薬の可能性が広がる

 大幸薬品<4574>(東証プライム)は6月19日、国立感染症研究所と共同で、正露丸の主成分である「木クレオソート」が魚介類に寄生するアニサキスの運動を抑制する作用を動物実験で初めて確認したと発表した。従来は試験管内での研究にとどまっていたが、今回、マウスを用いた実験で生体内でも効果を示した。論文「アニサキス症に対する木クレオソートの効果」は、日本寄生虫学会の機関誌「Parasitology International Vol.108」への掲載が予定されている。

■国内で年間330件発生のアニサキス症に治療の糸口

 アニサキスによる食中毒は日本の魚介の生食文化と密接に関係しており、厚生労働省の統計では2024年に発生した1,037件の食中毒のうち、アニサキスが原因のものは330件と最多を占めた。2011年には、木クレオソートを含む正露丸の内服によりアニサキス症状が改善したとの症例報告があり、以降、大幸薬品はその有効性に関する研究や特許取得などを進めてきた。

 今回の研究は2023年1月から感染研と共同で開始され、寄生虫研究における動物実験の専門知見を活かすかたちで進められた。マウスにアニサキスを経口投与後、「木クレオソート」0.67mg(成人の正露丸1回服用分に相当)を与えたところ、摘出されたアニサキスの運動が有意に抑制された。これは木クレオソートが体内においてもアニサキスの活動を抑える可能性を示しており、今後の臨床応用に向けた重要な知見とされる。

 代表取締役社長の柴田高氏は「本研究は、正露丸の“食あたり薬”としての新たな薬効解明につながる」とし、研究開発部のペレイラ氏も「非侵襲的な治療法開発への基盤となりうる」との意義を語った。感染研の下川室長は「これまで試験管内での効果だった現象を生体内でも確認できた」と述べ、アニサキス症の予防・軽減に向けた今後の研究展開に期待を寄せている。日本が誇る和食文化の安全性を守る科学的成果として、国内外で注目を集めそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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