【この一冊】世界の因縁を宿す旅『迷宮ホテル』刊行:歴史の影を追う異色の旅行記

■奴隷貿易、秘密結社、からゆきさん――因縁の地を巡る

 辰巳出版は8月26日、フリーカメラマン関根虎洸氏による旅行記『迷宮ホテル』を発売した。同書は著者が10年以上かけて世界各地を巡り、歴史的背景や因縁を持つホテルや街路を取材した成果をまとめたものである。福建省の客家土楼を皮切りに、ザンジバル、上海、香港、スリランカ、マラッカ海峡沿岸諸国などを訪ね、秘密結社やアヘン王、奴隷貿易や「からゆきさん」といった歴史の影を抱えた土地を取材し、写真と文章で濃密に描いている。収録された写真は160点を超え、通常の観光では出会えない光景や人々の姿を切り取ったのが特徴である。

 同書の第一章では「土楼の王」と呼ばれる承啓楼をはじめとする客家土楼や、ザンジバルの奴隷市場跡、上海のマフィア建築、香港のチョンキンマンションなどを取材。歴史に刻まれた場所を宿泊や現地の人々との交流を通じて体感している。第二章では「熱帯建築の巨匠」と称されるスリランカの建築家ジェフリー・バワの作品を巡り、自然と調和した独特の建築美をホテルや公共建築を通じて記録。現地のツーリスト会社やホテル従業員とのやり取りも描かれ、地域の風土や生活が立体的に伝わる構成となっている。

 第三章では、マラッカ海峡に根付いたプラナカン文化を訪ね、マレーシアやタイ、シンガポール、インドネシアの街やホテルを取材。中国、マレー、西洋の文化が交錯する建築や生活様式を写し出し、沢木耕太郎『深夜特急』や映画『ザ・ビーチ』といった記憶や文学的参照とも交差させている。著者の独自視点と取材対象の重層的な背景が融合し、単なる旅行記にとどまらず歴史と文化の迷宮をさまようかのような一冊に仕上がっている。定価は1,980円、A5判、176ページ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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