
■核融合発電の早期実用化目指す、日米連携で技術・商業知見を獲得
三井物産<8031>(東証プライム)は9月2日、米国の核融合関連スタートアップであるCommonwealth Fusion Systems(CFS社)への出資参画を発表した。日本企業12社※で構成する「日本コンソーシアム」と連携して実施するもので、同社にとって核融合分野では2023年5月の京都フュージョニアリングへの出資に続く取り組みとなる。核融合は二つの軽い原子核を融合させることで膨大なエネルギーを生み出す仕組みで、CO2を排出しない持続可能な電源として注目されている。水素同位体を燃料とし、枯渇や地域偏在の懸念が少なく、高レベル放射性廃棄物も生じない特長を持つ。日本政府も2025年6月に改定したフュージョンエネルギー・イノベーション戦略で、官民連携により2030年代の発電実証を目標に掲げており、世界的に期待が高まっている。
※日本コンソーシアム=三井物産、三菱商事、関西電力、JERA、商船三井、日揮、日本政策投資銀行、NTT、フジクラ、三井住友銀行、三井住友信託銀行、三井不動産
CFS社はMIT発のスピンオフ企業で、トカマク型の磁場閉じ込め方式による核融合炉の開発を進めるリーディングカンパニーである。同社は世界初の商業用核融合炉「ARC」を米国バージニア州に建設する計画を発表しており、2030年代前半の運転開始を目指す。さらに2025年6月には米グーグル社と20万キロワット分の電力購入契約を締結しており、実用化に向けた進展が注目される。今回の出資を通じ、日本コンソーシアムはフュージョンに関する政策や規制、ARCの設計・建設・運転・保守に関する知見を獲得し、日本国内での商用化・産業化を加速させる狙いだ。
三井物産は「環境と調和する社会」を掲げ、パートナーとの協業や産業横断的な連携を通じて低炭素ソリューションを展開してきた。今回の出資により、同社は最先端技術や産業知見を蓄積し、核融合分野の実用化に寄与する方針である。日米両国の共同パートナーシップを背景に、核融合発電の早期商業化に向けた動きが一層加速することが期待される。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)