インテージホールディングス、26年6月期は大幅増益・連続増配、SCI刷新と経費削減で収益性向上

 インテージホールディングス<4326>(東証プライム)は、市場調査事業を主力としてシステムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。成長戦略として、Data+Technology企業として販促最適化への新たな価値を創出すること、社会的課題解決に向けた行政EBPM推進への価値を創出することなどを目指し、NTTドコモとのシナジー創出も推進している。さらに重点施策として、生成AI活用によるプロセス変革や値上げの継続実施による収益性の向上も推進している。26年6月期は大幅営業・経常増益で連続増配予想としている。基幹事業の拡販による増収効果に加え、経費コントロールなども寄与する見込みだ。第1四半期は大幅営業・経常増益と順調だった。進捗率は低水準の形だが、第2四半期と第3四半期の構成比が高くなる傾向があることに加え、第1四半期はマーケティング支援(ヘルスケア)事業における期ズレも影響している。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は10月の直近安値圏から反発して下値を切り上げている。出直りを期待したい。

■国内首位の市場調査が主力

 子会社インテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)など、国内首位・世界10位(GRBN 2018 Global Top25 Report)の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。なお23年10月にNTTドコモの連結子会社となった。

 セグメント区分は、消費財・サービス分野のマーケティング支援、ヘルスケア分野のマーケティング支援、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンスとしている。25年6月期のセグメント別売上高と営業利益は、マーケティング支援(消費財・サービス)事業の売上高が453億44百万円で営業利益が14億35百万円、マーケティング支援(ヘルスケア)事業の売上高が124億32百万円で営業利益が21億33百万円、ビジネスインテリジェンス事業の売上高が77億94百万円で営業利益が6億72百万円だった。

■消費財・サービス分野のマーケティング支援

 消費財・サービス分野のマーケティング支援では、データサービスやカスタムリサーチなどを展開している。独自収集した各種パネル調査やカスタムリサーチから得られたデータを基に、高度なリサーチ技術やデータ解析力を駆使して、消費財メーカーを中心に企業のマーケティング活動をトータルサポートしている。主要な事業会社はインテージ、インテージリサーチ、リサーチ・アンド・イノベーション、25年6月期より新規連結したドコモ・インサイトマーケティング、および海外子会社である。

 25年6月期の売上高453億44百万円の内訳は、パネル調査(SRI+、SCIなど)が160億43百万円、CR-Web(カスタムリサーチのWeb調査)が96億28百万円、CR-Web以外(Web調査以外の手法によるカスタムリサーチ)が45億85百万円、Co(コミュニケーション分野)が34億35百万円、海外(ヘルスケア除く海外子会社)が57億10百万円、その他(官公庁案件など)が59億40百万円だった。

■ヘルスケア分野のマーケティング支援

 ヘルスケア分野のマーケティング支援は一般用医薬品・医療用医薬品の市場調査、製薬企業からの委託によるデータマネジメント・解析業務などを展開している。主要な事業会社はインテージヘルスケアの直下に協和企画、インテージリアルワールド、プラメド、Plamed Koreaの4社を置く体制としている。24年9月にはインテージヘルスケアが展開するCRO(医薬品開発業務受託機関)事業をアルフレッサホールディングスに譲渡した。

 22年8月にはインテージヘルスケアと岡山大学が悪性腫瘍をはじめとする難治性疾患治療薬開発プロジェクトとして、AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet(ディープカルテット)」を活用した新薬開発の共同研究を開始した。22年12月にはインテージヘルスケアがAI創薬アカデミックプログラム(IAAP)を開始した。AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet」などの新規化合物を得るサービスを活用し、アカデミアとの共同研究プログラムを開始する。23年2月にはインテージヘルスケアと広島大学がAI創薬によるペプチド擬態化合物の共同研究を開始、インテージヘルスケアと名古屋大学がAI創薬による胃酸抑制剤の共同開発を開始した。

 25年6月期の売上高124億32百万円の内訳は、パネル調査(SRI+、処方箋DBなど)が38億11百万円、CR(製薬企業・医療機器メーカー等向けカスタムリサーチ)が49億69百万円、CRO(24年9月に事業譲渡)が3億24百万円、プロモーション(協和企画におけるプロモーション関連事業)が27億51百万円、その他(海外子会社のヘルスケア売上など)が5億75百万円だった。

■ビジネスインテリジェンス

 ビジネスインテリジェンスでは、ソフトウェア開発やシステム構築・運用などを展開している。主要な事業会社はインテージテクノスフィア、ビルドシステム、エヌ・エス・ケイなどである。

 25年6月期の売上高77億94百万円の内訳は、SI(システム開発)が25億93百万円、BPO(業務効率化等のBPOサービス、システム維持管理)が24億18百万円、DX(企業のDX関連領域の推進支援)が27億84百万円だった。

■第14次中期経営計画

 第14次中期経営計画(24年6月期~26年6月期)では成長戦略として、Data+Technology企業として販促最適化への新たな価値を創出すること、社会的課題解決に向けた行政EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、証拠に基づく政策立案)推進への価値を創出することなどを目指し、NTTドコモとのシナジー創出も推進する。目標値には最終年度26年6月期の売上高735億円、営業利益60億円、一人当たり利益(=(営業利益+投資)/人員数)GAGR12%、ROE(自己資本利益率)12%などを掲げている。

 利益改善については、各セグメントの売上増加、販売価格の最適化、生産性向上などに加えて、SCI刷新によるコストイノベーションや新旧SCIのダブルランコストの解消を見込んでいる。配当方針については、第14次中期経営計画期間中の配当は累進的とし、26年6月期の配当性向を従来の40%から50%に引き上げるとしている。

 消費財・サービス分野のマーケティング支援では、リサーチにとどまらず販促・広告市場においても新しい価値創出を目指す新たなプラットフォームとして、子会社のリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)が持つ特許を活用し、CXマーケティングプラットフォームの開発を推進する。第1ステップはRNIのプロダクトにインテージの事業資産を組み込んでマネタイズを加速、第2ステップはRNI特許を活用してSCIをリニューアル、第3ステップはSCI-CODE一体活用によるCXマーケティングプラットフォームの確立(提供ツールを開発してリサーチと広告・販促の一気通貫サービスを提供)を目指す方針としている。

 なおINTAGE Open Innovation Fund(SBIインベストメントと共同設立)は、パーソナルAI「al+」開発のオルツ、WEBリサーチのリサーチ・アンド・イノベーション、IoTデータ流通プラットフォームの米EverySense、訪日外国人向けショッピングサポートアプリ「Payke」のPaykeなどに投資している。23年6月には、一人ひとりに合わせて行動を促す個別化エンジン「Nudge AI」を開発するGodotに出資した。投資先のIPO実績としてはAI CROSS<4476>、QDレーザ<6613>、メンタルヘルステクノロジーズ<9218>がある。25年2月現在の投資実績は28社、合計28.5億円となっている。

 サステナビリティ経営に関しては、23年度からサステナビリティ委員会を設置して取り組みを強化している。23年12月には、健康企業宣言東京推進協議会が運営する健康企業宣言制度において、21年より3年連続で「健康優良企業 銀の認定」を取得した。25年3月には健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)に認定された。

■26年6月期大幅営業・経常増益予想で1Q順調

 26年6月期の連結業績予想は売上高が前期比6.8%増の700億円、営業利益が32.0%増の56億円、経常利益が33.1%増の55億円、親会社株主帰属当期純利益が8.7%減の32億円としている。

 親会社株主帰属当期純利益は前期計上の事業譲渡益が剥落して減益だが、営業利益と経常利益は大幅増益予想としている。基幹事業の拡販による増収効果に加え、SCI刷新完了による投資コスト減少や経費コントロールなども寄与する見込みだ。重点施策として、マーケティング支援(消費財・サービス)事業では生成AI活用によるプロセス変革や値上げの継続実施による収益性の向上など、マーケティング支援(ヘルスケア)事業では企画・提案力の強化による拡販など、ビジネスインテリジェンス事業では業界共用向けソリューション開発投資などを推進する。

 セグメント別の計画は、マーケティング支援(消費財・サービス)事業の売上高が8.3%増の491億円で営業利益が88.1%増の27億円、マーケティング支援(ヘルスケア)事業の売上高が6.2%増の132億円で営業利益が12.5%増の24億円、ビジネスインテリジェンス事業の売上高が1.2%減の77億円で営業利益が25.6%減の5億円としている。マーケティング支援(消費財・サービス)事業はSCI刷新完了や値上げの推進などにより増収・大幅増益、マーケティング支援(ヘルスケア)事業は堅調なビジネス環境を踏まえて増収・2桁増益、ビジネスインテリジェンス事業は前期の大型案件の反動で減収減益の見込みとしている。

 第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比4.6%減の143億61百万円、営業利益が3.1倍の5億72百万円、経常利益が5.3倍の5億65百万円、親会社株主帰属四半期純利益が74.2%減の2億92百万円だった。

 大幅営業・経常増益だった。前期の大型案件の反動やCRO事業譲渡の影響で減収だが、利益を重視したマネジメントの効果、事業譲渡による人件費の減少に加え、新SCIへの切り替え完了に伴う投資減少なども寄与した。営業利益3億85百万円増益の要因分析は、減収影響で6億96百万円減益、変動費の減少で5億36百万円増益、人件費の減少で2億53百万円増益、経費の減少で15百万円増益、投資の減少で2億78百万円増益だった。なお親会社株主帰属四半期純利益は前期計上の事業譲渡益15億88百万円が剥落して減益だった。

 マーケティング支援(消費財・サービス)事業は、売上高が0.2%減の100億41百万円、営業利益が40百万円の損失(前年同期は2億90百万円の損失)だった。売上面はCo(コミュニケーション分野)が14%減収、海外(ヘルスケア除く海外子会社)が9%減収と低調だったため全体として微減収だが、主力のパネル調査(SRI+、SCI)が3%増収、CR(カスタムリサーチ)が3%増収と堅調に推移し、NTTドコモと推進するマーケティングソリューション事業も順調だった。利益面は新SCIへの切り替え完了に伴う投資減少により営業損失が縮小した。

 マーケティング支援(ヘルスケア)事業は、売上高が14.4%減の27億27百万円、営業利益が81.1%増の5億07百万円だった。売上面は期ズレの影響でCR(製薬企業・医療機器メーカー向けカスタムリサーチ)が15%減収、プロモーション(協和企画におけるプロモーション関連事業)が14%減収となったほか、CRO事業(前年同期の売上高は3億28百万円)売却も影響して2桁減収だが、パネル調査が前期に実施した値上げ効果や処方箋DBの拡大によって14%増収と好調に推移した。利益面は事業譲渡による人件費の減少などにより収益性が大幅に改善した。

 ビジネスインテリジェンス事業は、売上高が11.9%減の15億92百万円、営業利益が46.4%減の1億05百万円だった。BPO(業務効率化等のBPOサービスやシステム維持管理)が5%増収と堅調だったが、SI(システム開発)が旅行業界の一部顧客における案件減少で25%減収、DX(企業のDX関連領域の推進支援)が子会社ビルドシステムにおける前期のローコード開発案件の反動で11%減収だった。

 通期連結業予想は据え置いている。第1四半期の進捗率は売上高21%、営業利益10%、経常利益10%、親会社株主帰属当期純利益9%と低水準の形だが、第2四半期と第3四半期の構成比が高くなる傾向があることに加え、第1四半期はマーケティング支援(ヘルスケア)事業における期ズレも影響している。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主還元

 株主還元については、配当と成長投資のバランスを考慮した利益配分を行うことを基本方針としている。そして第14次中期経営計画(24年6月期~26年6月期)期間の配当は累進的とし、最終年度26年6月期の連結配当性向50%を目指す。この基本方針に基づいて、26年6月期の配当予想は前期比3円増配の48円(第2四半期末24円、期末24円)としている。連続増配で予想配当性向は57.3%となる。

 また株主優待制度(詳細は会社HP参照)については、毎年12月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施している。

■株価は下値切り上げ

 株価は10月の直近安値圏から反発して下値を切り上げている。出直りを期待したい。11月20日の終値は1706円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS83円80銭で算出)は約20倍、今期予想配当利回り(会社予想の48円で算出)は約2.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS867円52銭で算出)は約2.0倍、そして時価総額は約690億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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