建設技術研究所、受注拡大と稼働率改善で増益基調、26年12月期も成長継続へ

 建設技術研究所<9621>(東証プライム)は総合建設コンサルタントの大手である。グローバルインフラソリューショングループとしての飛躍を目指し、事業ポートフォリオ変革や成長基盤再構築に取り組んでいる。25年12月期は特別損失計上で最終減益だが、営業・経常増益予想としている。受注拡大による稼働率の改善、経費管理の徹底による販管費の抑制などを見込んでいる。国土強靭化関連など事業環境は良好であり、積極的な事業展開で26年12月期も収益拡大基調だろう。株価は戻り高値圏で上げ一服の形となったが調整一巡感を強めている。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■総合建設コンサルタント大手

 総合建設コンサルタントの大手である。河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持ち、24年5月に湯浅コンサルティングを子会社化、24年10月にインフォメティスに出資して業務提携、24年11月に広建コンサルタンツを子会社化、25年2月にワイドと業務提携、アイ・ディー・エーと業務提携した。なお農業関連事業を展開する子会社のCTIフロンティアについては、グループ事業ポートフォリオの最適化を図ることを目的として25年7月に株式譲渡した。

 海外は、建設技研インターナショナルが東南アジア、英国Waterman Group Plc(ロンドン証券取引所上場)が英国を中心に展開している。25年1月には建設技研インターナショナルがインドのConsulting Engineers Groupと業務提携した。25年5月には建設技研インターナショナルがインドネシアのPT Agrinas Palma Nusantaraと業務提携に関する覚書を更新した。

 24年12月期のセグメント別の業績は、国内建設コンサルティング事業の受注高が23年12月期比5.7%増の657億24百万円、売上高が3.8%増の669億45百万円、営業利益が3.7%減の86億10百万円、海外建設コンサルティング事業の受注高が5.4%減の286億76百万円、売上高が7.5%増の307億33百万円、営業利益が27.9%減の7億73百万円だった。

■中期経営計画2027

 グローバルインフラソリューショングループとして飛躍することを目指し、CTIグループ中長期ビジョン「SPRONG2030」では、目標数値(25年2月14日付で上方修正)に、30年12月期の売上高1300億円(国内コンサルティング事業940億円、海外コンサルティング事業360億円)、営業利益150億円、営業利益率11%以上、ROE12%以上、社員数5000人を掲げている。

 そして中長期ビジョン目標達成に向けた第2ステップとなる中期経営計画2027(25年2月策定)では、目標数値を27年12月期の売上高1100億円、営業利益120億円、営業利益率11%、ROE12%、基本戦略の2本柱は事業ポートフォリオ変革と成長基盤再構築としている。

 事業ポートフォリオ変革ではコア事業領域の深化、成長分野(エネルギー、情報提供サービス、CM/PM)の加速、新規事業の探索、海外事業の拡大を推進する。売上高の計画は、27年12月期がコア事業610億円、海外事業325億円、成長分野135億円(エネルギー25億円、情報提供サービス45億円、CM/PM65億円)、新規探索30億円で、30年12月期がコア事業670億円、海外事業360億円、成長分野170億円、新規探索100億円としている。

 成長基盤再構築では人的資本への投資強化、DX/生産システム改革、サステナブルチャレンジ、グループガバナンス強化、資本コストや株価を意識した経営(中期経営計画2027策定に合わせてアップデート)を推進する。ROE目標の実現、持続的なキャッシュ・フロー創出、成長投資、株主還元等により企業価値向上を目指す。株式還元については、連結配当性向30%以上を最低水準として株主還元を実施するほか、中期経営計画2027中はDOE3%を基本方針とする。

 25年3月には中期経営計画2027に基づく新技術開発や新事業開発に向けて、オープンイノベーション拠点「CTIグループイノベーションスタジオ」を開設した。25年4月には女性活躍推進法に基づいた一般事業主行動計画(計画期間25年4月1日~28年3月31日)を策定した。

 25年10月には一般社団法人日本シーサート協議会(NCA)への正式加盟が承認された。これにより、NCAにおける加盟組織との情報共有や連携を通じて、国内外で発生するサイバー脅威への迅速な対応が可能となり、より高度で実効性のあるセキュリティ対策を実現できる。25年11月には経済産業省が定めるDX認定制度に基づき「DX認定事業者」に認定された。

■新分野・新事業への展開を加速

 22年1月には新分野や新事業への展開を加速するため、SBIホールディングス<8473>の子会社SBIインベストメントが運営する「SBI4+5ファンド」に出資した。本ファンドが出資するスタートアップ企業を支援するとともに、スタートアップ企業との連携による技術開発や事業開発に取り組む。

 25年4月には木質バイオマス利活用に関するコンサルティングサービスを開始した。25年6月には実証団体7社と連携し、総務省の地域社会DX推進パッケージ事業(自動運転レベル4検証タイプ)における実証団体に採択され、佐賀市での実証を開始した。25年11月には同社が構成企業として参加するコンソーシアムが「湯西川ダム新水力発電所設置・運営事業」の事業候補者に特定された。国土交通省が推進する治水機能強化と水力発電促進を両立させるハイブリッドダムで、30年度の運転開始を目指している。

 25年12月には、英国やマレーシア等に拠点を置く大手海底地質調査企業であるEnviros社と、洋上風力発電事業の海底地質調査分野における業務提携に関する覚書を締結した。

■25年12月期営業・経常増益予想

 25年12月期連結業績予想(特別損失計上に伴い8月12日付で親会社株主帰属当期純利益を期初予想比6億円下方修正)は、売上高が前期比2.4%増の1000億円、営業利益が6.4%増の100億円、経常利益が4.9%増の100億円、親会社株主帰属当期純利益が6.6%減の63億円としている。グループ全体の受注高は5.9%増の1000億円の計画である。配当予想は75円(期末一括)としている。25年1月1日付の株式2分割を遡及換算すると24年12月期の75円(期末一括)と同額で、予想配当性向は33.1%となる。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比1.5%増の732億70百万円、営業利益が12.5%減の64億89百万円、経常利益が11.0%減の66億02百万円、親会社株主帰属四半期純利益が18.1%減の43億11百万円だった。

 グループ全体の受注高は15.2%増の889億64百万円と好調に推移したが、売上高が小幅増収にとどまり、販管費の増加、一部子会社の原価率の上昇などで減益だった。ただし概ね計画水準だった。なお特別利益に投資有価証券売却益5億90百万円を計上した一方で、特別損失に社員寮として使用してきた土地・建物等の固定資産を事業用資産から遊休資産に変更したことに伴う減損損失4億32百万円を計上したほか、関係会社整理損88百万円、投資有価証券評価損42百万円を計上した。

 セグメント別(セグメント間取引消去前)に見ると、国内建設コンサルティング事業は、受注高が10.5%増の612億68百万円、売上高が2.0%増の503億33百万円、営業利益が8.8%減の63億22百万円だった。事業ポートフォリオ変革に取り組み、受注が好調に推移したが、利益面は販管費の増加や一部子会社の原価率の上昇が影響した。

 海外建設コンサルティング事業は、受注高が27.0%増の276億95百万円、売上高が0.4%増の229億36百万円、営業利益が64.5%減の1億70百万円だった。受注高は建設技研インターナショナルの大型案件受注によって大幅に増加したが、営業利益については建設技研インターナショナルの契約遅れ等による業務進捗率(原価率)の悪化などが影響した。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が301億10百万円で営業利益が58億59百万円、第2四半期は売上高が206億84百万円で営業利益が1億17百万円、第3四半期は売上高が224億76百万円で営業利益が5億13百万円だった。公共事業が主力で業務の進捗が年度末に集中するため、売上高および営業利益は第1四半期に偏重する収益特性がある。

 通期の連結業績予想は据え置いて、セグメント別(セグメント間取引消去前)の計画は、国内建設コンサルティング事業の受注高が1.9%増の670億円、売上高が3.1%増の690億円、営業利益が8.0%増の93億円、海外建設コンサルティング事業の受注高が15.1%増の330億円、売上高が0.9%増の310億円、営業利益が9.4%減の7億円としている

 通期ベースでは受注拡大による稼働率の改善、経費管理の徹底による販管費の抑制などを見込んでいる。第3四半期累計の進捗率は売上高89%、営業利益65%、経常利益66%、親会社株主帰属当期純利益68%と概ね順調である。国土強靭化関連など事業環境は良好であり、積極的な事業展開で26年12月期も収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 25年8月にはJPX総研および日本経済新聞社が共同で算出するJPX日経中小型株指数の25年度(25年8月29日~26年8月28日)の構成銘柄として新たに選定された。

 25年11月12日発表の自己株式取得(上限70万株または15億円、取得期間25年11月13日~26年4月30日)については、25年11月30日時点で累計取得株式総数が9万6200株となっている。

 株価(25年1月1日付で株式2分割)は戻り高値圏で上げ一服の形となったが調整一巡感を強めている。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。12月8日の終値は2952円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS226円77銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の75円で算出)は約2.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2213円71銭で算出)は約1.3倍、そして時価総額は約836億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■地域と共に築いた「鮪解体ショー」で世界一の舞台へ  銚子丸<3075>(東証スタンダード)は、同…
  2. ■速乾・吸水機能を備えたブラ&ショーツ、11月7日から応援購入受付  グンゼ<3002>(東証プラ…
  3. 日産自動車 日産 NISSAN
    ■経営再建計画の一環として保有資産を最適化、20年間の賃貸借契約で本社機能維持  日産自動車<72…
2025年12月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

ピックアップ記事

  1. ■眠れる6900トンの金が動き出す、「都市鉱山」開発でリデュース株に追い風  今週の当コラムは、金…
  2. ■天下分け目の12月10日、FRB利下げで年末相場は天国か地獄か?  天下分け目の12月10日であ…
  3. ■売り方手仕舞いで需給改善が後押し  師走相場では、リスクの大きい銘柄であっても、逆日歩のつく信用…
  4. ■師走相場は最終レースさながら、勝ち負け分ける「掉尾の一振」に熱視線  師走である。礼節一点張りの…
  5. ■金利環境改善が銀行株に追い風、逆張りの買いも有力視  今週の当コラムは、銀行株に注目することにし…
  6. ■「トリプル安」も怖くない!?逆張りのバリュー株ローテーションからは銀行株になお上値余地  「神風…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る