【ドクター箱崎幸也の健康増進実践法】サクセスフル・エイジング(華麗なる老い)達成への社会参加の重要性

ドクター箱崎幸也 健康増進実践法

■社会的接触が認知症リスクを低下させ幸福感も得られる

 「サクセスフル・エイジング」は、身体・精神的問題だけでなく、経済・社会的に健全であり、家族・友人・近隣との良好な相互関係によっても構築されます。1月号でも達成するための適応条件を記述しましたが、1987年に米国ロウエ博士は、① 病気や障害のリスクが低いこと、② 高い精神的・肉体的機能、③ 人生への活動的なかかわり、④ 主観的な幸福感が、4項目を提唱しています。4項目でも特に、社会参加や余暇活動の積極的な参加は、認知予備能を増やすことでサクセスフル・エイジングに必要不可欠と述べています。

 スウェーデンでの研究でも、社会的接触が認知症リスクを低減させ幸福感を達成できると報告されています。ストックホルム在住75歳以上の1,203名を3年間観察し開始時には全員健康で認知症はありませんでしたが、終了時には176名(15%)が認知症と診断されました。認知症リスクは、独身・独居で1.9倍、子供なしで1.4倍、友人・親戚なしで1.6倍に増加したとの結果でした。「独身・独居・子供なし・友人なし」の社会的接触が乏しい人たちは、「結婚・同居人あり・子どもが毎週会いに来る・友人多数」の人々に比べて認知症リスクが8倍との結果でした。千人あたりの認知症の年間発症数は、社会的接触や交流が乏しい人では156.9人、やや乏しい人では69.4人、中程度では49.5人、充分な人では19.0人でした。この結果からも、生涯にわたり社会への参加・貢献が必要です。

 我が国でも東京大学の秋山弘子教授のグループが、1987年から高齢者約 2,000人を追跡調査の結果を報告しています。5年後の健康度と強く関連する要因は、「喫煙, 食事, 運動, いきがい」でと報告しています。性別の特徴として、男性では団体・グループヘの参加、女性では精神的な自立が健康度と強い関連が認められました。この報告からも男性は精神的自立が下手で、女性に比べ積極的な社会的参画が必要と思われます。男性で退職後に1日中自宅で過ごす方は、最もサクセスフル・エイジング達成が困難な方です。退職後もぜひ社会的参加で貢献を意識してお過ごし下さい。(元気会横浜病院々長、元・自衛隊中央病院消化器内科部長)

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