【編集長の視点】ナノキャリアはM&A枠設定報道を手掛かりに業績期待を高めて下げ過ぎ訂正の急反発

 ナノキャリア<4571>(東マ)は、64円高の919円と急反発して始まり、寄り付き段階の東証マザーズ市場の値上がり率ランキングのトップ10にランクインする高人気となっている。同社株は、今年7月20日付けの日本経済新聞で、今3月期に90億円規模のM&A(合併・買収)枠を設定すると観測報道されたことを見直し、同社の主力パイプラインのミセル化ナノ粒子「NC-6004」の臨床試験進展による業績期待を高め下げ過ぎ訂正買いが再燃している。さらに7月13日には、核酸デリバリー技術に関して欧州特許庁から特許査定を受けたと発表したことも見直されフォローの材料視されている。

■「NC-6004」の臨床試験進展で医薬品販売会社の買収を検討

 M&A枠の設定は、「NC-6004」が、日本、米国、欧州など23カ国で特許を取得しアジア地域では膵臓がんの第Ⅲ相臨床試験、国内では頭頸部がんの第Ⅰ相臨床試験、米国で非小細胞がんなどを対象疾患とした第Ⅱ相臨床試験、頭頸部がんを対象疾患として第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験などと臨床試験が進んでいることから、この新抗がん剤の販売を見据えて医薬品販売会社の買収を検討するためと観測された。同社の今3月期業績は、新規臨床試験や同試験の拡大、新規パイプラインの開発などで研究投資がいっそう加速化し、純利益が34億7500万円の赤字(前期は25億3700万円の赤字)と悪化予想となっているが、早期の水面上浮上の業績期待を高めている。

 また欧州特許庁の特許査定を受けた核酸デリバリー技術は、東京大学のナノ医療イノベーション長の片岡一則教授のグループが開発し、同社が国内外の再実施権付独占的ライセンスを取得し、薬物をがん組織を標的に集積する核酸キャリアに関する技術で、同社が、アキュルナ社や日油<4403>(東1)にライセンス供与している重要な知的財産である。

■25日線からはなお7%超もマイナスかい離し「リターン・リバーサル」買い余地

 株価は、日本化薬<4272>(東1)が、自社開発した抗がん薬内包高分子ミセル「NK105」の転移・再発乳がんを対象とした第Ⅲ相臨床試験で主要評価項目が達成されたなったことを発表し株価が急落したことにツレ安し961円安値まで売られたが、同薬は、ナノキャリアが初期段階に技術導出した第1世代で、同社の「NC6004」などの第2世代とは異なるとコメントして1050円と反発し、さらに欧州特許査定も続いてリバウンドした。ただ、前週に入って東証マザーズ指数が、全般相場に逆行安して調整色を強めていることから再び下値を探り800円台央での中段固めを続けてきた。25日移動平均線からはきょう25日の急反発でもなお7.4%のマイナスかい離と下げ過ぎは明らかで、下げ過ぎた銘柄ほど良く戻るとする「リターン・リバーサル」投資余地を示唆している。

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