【編集長の視点】ナノキャリアはもみ合いも相次ぐ欧米特許取得とノーベル賞関連人気が相乗して再騰含み

 ナノキャリア<4571>(東マ)は、15円高の1049円と続伸して始まったあと、24円安まで下ぶれるなど前日終値を挟んでもみ合いを続けている。2カ月ぶりに1000円大台を回復して売り買いが交錯しているものだが、下値には同社独自の核酸のデリバリー技術「NanoFect」が、欧米で相次いで特許を取得したことを見直すとともに、同技術に関連する日本の研究者が、明5日に発表されるノーベル賞の化学賞の有力候補となっていることも手掛かりにバイオ株買いが根強く続いており、再騰期待を高めている。テクニカル的にも、25日移動平均線水準での下値固めを3カ月間続け、日柄的にも値幅的にも調整一巡感を強め下げ過ぎ訂正の支援材料視されている。

■ノーベル化学賞では「NanoFect」と同様のキャリアシステムが有力候補

 「NanoFect」は、バイオ医薬品が、世界的に注目されているなかで、体内では壊れやすい核酸を確実に標的細胞に届けられる次世代医薬品開発のための新技術・キャリアシステムであり、今年4月の米国に次いで、7月、8月に欧州特許庁から核酸送達用組成物・核酸送達方法、粒子組成物などが相次いで特許査定を受け、最主要マーケットの日米欧を含めたワールドワイドでの権利確保を可能とした。すでにこの細胞標的性能をさらに高め、医薬品の細胞内への侵入と薬物放出コントロールを可能とするActive型を応用して中外製薬<4519>(東1)と医薬品創製を目指した共同研究も進めている。

 一方、ノーベル賞との関連では、前日3日に大隅良典東京工業大学栄誉教授が、医学生理学賞を受賞したことに続き、5日には化学賞の発表が予定されているが、同賞では2名の日本人研究者が受賞有力候補として予測されている。崇城大学DDS研究所の前田浩特任教授は、ナノキャリアの「NanoFect」と同様の薬剤をがんにピンポイントにターゲッティングするEPR効果の発見が、評価対象となっており、もう一人の国立がん研究センター先端医療開発センターの松村保広新薬開発分野長も、同社と国立がん研究センターと緊密なだけに、仮にこのノーベル賞受賞が実現すれば、同社の「NanoFect」への評価が一段と高まると期待されている。

 同社の業績は、創薬ベンチャーとして新規臨床試験や同試験が拡大し、膵臓がんを対象に自社開発製品第1号として「NC-6004」などの新規パイプラインの開発が続き研究投資がいっそう加速化することから水面下推移が続いている。今3月業績は、売り上げ1億8200万円(前期比25.2%減)、営業利益34億5200万円の赤字(前期は20億8200万円の赤字)、経常利益34億1000万円の赤字(同23億8100万円の赤字)、純利益34億7500万円の赤字(同25億3700万円の赤字)と見込んでいるが、逆にこれが、同社の中長期的な企業価値の極大化につながることになる。

■高値期日の6カ月を経過し25日線水準での値固めも完了し再発進

 株価は、今年4月には、核酸デリバリー技術で米国特許を取得したことでストップ高し年初来高値2095円まで買い進まれ、同社技術をライセンス契約した日本化薬<4272>(東1)が、臨床試験で主要項目を達成できなかったと発表したことで961円安値までで急落、日本化薬のライセンス技術は、ナノキャリアの初期段階の導出技術であったことが判明して1050円へリバウンドした。その後は、新興市場でバイオ株人気が離散する逆境下、832円安値から底上げ欧州特許取得や経済産業省の補助金事業採択などが相次ぎ25日移動平均線水準での値固めを続けてきた。年初来高値からのほぼ6カ月目の高値期日を経過し、値固めも一巡感を強めており、一段の戻りを試そう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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