【編集長の視点】加賀電子は反落も今期予想業績非開示を織り込み中期経営計画の最終目標値を手掛かりに上値トライは不変

 加賀電子<8154>(東1)は、前日22日に40円安の2945円と5営業日ぶりに反落して引けた。同社株は、今年5月9日に3月期決算を発表し、前2018年3月期業績は、期中の2回の上方修正値を上ぶれて着地したものの、今2019年3月期予想業績を非開示としたことが響いて2592円まで売られた。しかし、同安値が、売られ過ぎとして即底上げに転じ、前日22日の取引時間中には3025円高値まで買われる倍返しを演じており、さすがに目先の利益を確定する売り物が出た。この倍返しは、業績予想に代わって今期が最終年度となる中期経営計画の目標値を提示したことを見直し、株価水準そのものも1株純資産目前だったことを手掛かりにしたもので、今年2月以来の高値水準まで持ち直した好形チャートを形成したことからはなお上値トライが続きそうだ。この中期経営計画の成長戦略の一環で、同社出資先の米国のHARMONUS社(マサチューセッツ州)が、今年3月に米食品医薬品局(FDA)の承認を取得した前立腺がんの生検及び治療用システム「ProBx」を今年7月に米国で発売することも業績期待を高めよう。

■成長戦略のベンチャー投資では前立腺がん関連システムの米国発売など着実に進展

 同社の前2018年3月期業績は、昨年10月、今年2月と2回上方修正され、この上方修正値を上ぶれ売り上げ2359億2100万円(前々期比3.8%増)、営業利益81億1900万円(同18.0%増)、経常利益87億4000万円(同19.0%増)、純利益64億9000万円(同7.0%減)で着地し、営業利益、経常利益は2ケタ増益転換し、純利益は、法人税負担が増加し小幅減益転換した。エレクトロニクス業界でIoT(モノのインターネット化)、ビッグデータ、人工知能などの新技術関連市場が活発な動きをみせるなか、電子部品事業ではEMS(開発・生産受託)ビジネスや半導体の販売が好調に推移し、情報機器事業では住宅・商業施設向けの関連商材が同様に好調に推移、生産性向上による売上総利益率の改善や販管費抑制に注力したことも加わって上ぶれ着地につながった。

 今2019年3月期業績は、引き続き車載関連などの成長分野の販売活動を強化し、EMSビジネスを中心に付加価値事業を拡大させるが、事業環境の変化が激しく不確定要素が大きく、現時点では業績予想は困難として、合理的な予想が可能となる時点まで非開示とした。それに代わって今2019年3月期が最終年度となる「中期経営計画2018」の目標数値の売上高2900億円、経常利益100億円の達成に取り組むとした。この中期計画の成長戦略の一環には、有望なベンチャー企業を発掘し医療・ヘルスケイア、素材の新規事業分野を開拓するため、3年間で50億円のM&Aを推進することが含まれているが、今年3月には、HARMONUS社が、FDAから「ProBx」の承認を取得し今年7月に米国で発売するなど具体的に進展しており、より業績期待を高めることになる。

■三点底のネックラインを上抜く好形チャートが年初来高値抜けを強力サポート

 株価は、前期業績の2回目の上方修正と期末配当の増配の好材料が、世界同時株安の逆風を受けて2600円安値まで売られて不発に終わったが、その後は、相次いだベンチャー投資と期末の配当権利取りが相乗して2800円台までリバウンドした。配当権利落ち後は、年初来安値2477円へ再調整し、同安値は、1株純資産2571円を下回り、さらに「ProBx」のFDA承認も加わって2800円台まで持ち直したが、今期予想業績非開示とともにまたまた2592円へ急落した。この2月安値、3月の年初来安値、5月安値ではテクニカル的に三点底(トリプル・ボトム)を形成しており、足元の倍返しによりこの三点底のネックラインを上抜く好形チャートとなり上値トライ余地を示唆した。目先調整一巡後に年初来高値3160円抜けから昨年10月高値3780円奪回を目指そう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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