【株式評論家の視点】JMCは換金売りに押される展開続く、医療分野での取り組みに期待

株式評論家の視点

 JMC<5704>(東マ)は、11月29日に東京証券取引所マザーズに上場。同社は「この国のものづくりを置き去りにする」というコーポレート・メッセージのもと、主力事業である3Dプリンター出力事業と鋳造事業の業績を着実に伸長させるため、CNC旋盤、三次元測定機と産業用CTスキャナの増設など、積極的な設備投資を実施するとともに、それぞれの事業において、素加一貫を進め内製を増加させる等、増収増益に向けて生産能力の拡大や積極的な営業展開を進めている。

 3Dプリンター出力事業では、主に製品開発を行う顧客向けに、機能・形状検証用の試作品を4方式の3Dプリンター15台(光造形方式8台、粉末焼結(ナイロン造形)方式4台、粉末固着(石膏造形)方式2台、インクジェット方式1台)を駆使し作製し、顧客からの仕様書やサンプル品をもとに3Dプリンター用のCADデータを作成している。鋳造事業では、3Dプリンター出力事業で培った3次元CADデータのノウハウを活用し、砂型鋳造の工程を、データ作成から検査まで可能な限りデジタル化し、アルミニウム合金とマグネシウム合金の試作品、少量量産品の作製を行っている。

 今2016年12月期第3四半期業績実績は、売上高が11億2400万円、営業利益が1億2300万円、経常利益が1億7100万円、純利益が1億1900万円に着地。前15年12月期第3四半期については四半期財務諸表を作成していないため、前15年年12月期第3四半期の数値及び今16年12月期第3四半期の前年同四半期増減率については記載していない。3Dプリンター出力事業で、光造形方式とナイロン造形方式の内製案件の受注件数が順調に増加しているものの、製造を外部委託する大型案件の受注件数が低調な推移したが、鋳造事業では、自動車メーカーや産業機器メーカーからの受注件数が増加したことが貢献し、業績は順調に推移している。

 今16年12月期業績予想は、売上高が15億3200万円(前期比15.4%増)、営業利益が1億7100万円(同0.8%増)、経常利益が2億円(同3.0%増)、純利益が1億2400万円(同0.5%増)を見込む。現在は需要増で生産設備がフル稼働状態にあり、上場で調達した資金は設備増強に充てるため、配当は見送る方針。

 株価は、11月29日に公開価格960円を89.2%上回る1816円で初値をつけ、同日高値1895円と買われた後、12月6日安値1407円と調整。換金売りに押される展開が続いている。同社の3Dプリンター出力が、医療の世界にも利用されていることも注目される。医療機関で撮影されたCTやMRIデータから製作された患者の骨や臓器のモデルは、医師のシミュレーションや手術の模擬練習などに使われており、医療分野での取り組みに対する期待感がある。公開価格の960円が下値として強く意識されそうで、目先は需給面で売りが一巡してくるか見極めるところ。ここから大きく下押す場面があれば、リバウンド狙いで買い妙味が膨らみそうだ。(株式評論家・信濃川)

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