【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領の税制改革は世界経済を引っ張る中身となるのか?

■NY株価は史上最高値を連続更新

 アメリカは、消費が好調、利上げ再接近ということで、要するに景気がよい。NY株価は、連日、史上最高値を更新している。

 トランプ大統領は、「ポリティカル・コレクトネス」からいうと問題が多い。支持率も低下している。記者会見をやればやったで怒鳴り合いというか、喧嘩腰でメディアを罵倒している。

 しかし、経済ということでは、差し引きで大きなプラスということである。それがマーケットの過去最高値の連続更新をもたらしている。

 ちなみにNY株価の9日連続史上最高値更新は、30年ぶりということである。確かに、史上最高値ならずとも、9日連続高騰というのもそう多くあることではない。

 もっとも、それは「アメリカ・ファースト」で、アメリカだけのことである。このところの日本のマーケットは、いまひとつというか乗り切れていない。

■「アメリカ・ファースト」ではない税制改革になるか

 マーケットだけではなく、日本経済に影響が及ぶのはトランプ大統領の税制改革(減税策)の行方である。2月28日の議会演説でその具体的な中身が明らかになるとみられる。

 目を見張るものになるか、そうではないのか――。トランプ大統領が事前に公言しているように法人、個人の両面で大幅な減税が打ち出される見込みだ。
 これによりアメリカの景気に拍車がかかり、利上げに進めば、ドル円(為替)にも影響が及ぶことになる。

 「アメリカ・ファースト」で視野を狭くすることなく、アメリカが世界経済全体を引っ張るような税制改革が望まれる。
 国境税など保護主義・重商主義めいたものが強く打ち出されるようでは、「アメリカ・ファースト」であり、世界経済全体を引っ張るものにはならない。

■税制改革の中身が世界経済を左右する

 アメリカの大統領なのだから、「アメリカ・ファースト」は当たり前である。だが、それで世界経済が縮小・停滞するようでは、NY株価は最高値連続更新となるが、日本のマーケットは停滞ということになる。それではこれまでのパターンでしかない。

 法人、個人の大幅減税だけではなく、国境税などが飛び出しても驚いてはならない。これまでのパターンが続くのか。これまでにない新しいパターンが出るのか。いよいよその時が迫っている。

 トランプ大統領の常だが、評価が相半ばするものが出る可能性がある。すっきりと法人、個人の大幅減税だけをアピールするとも思えない。

 トランプ大統領の税制改革の中身は、いずれにせよ世界経済を左右するものになる。
議会演説では「アメリカ・ファースト」が色濃く出ると思われるが、その程度が問題になる。差し引いても世界経済にプラスとなるのが望ましいのだが・・・。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)

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