【小倉正男の経済コラム】「キャスター」VS「SNS」・正義は独占できない

小倉正男の経済コラム

■ワイドショーのSNS批判

 テレビのワイドショー、報道番組というのは、自然によく見てしまうのだが、朝から晩まで同じテーマを取り扱っている。観ている私も私だが、大枠でひとつを観ればその日のすべてコンテンツを観ているのと同じである。

 このところ、ワイドショー、報道番組のキャスターたちで目立つのは、SNSへの批判である。「SNSに載っているコンテンツは質が劣悪だ」「SNSに書かれているのは酷い内容で信用できない」など――。
 いわば、十把ひとからげでフェイクニュース扱いされている。

 SNSは、個人が発言するツールを持ったということでは画期的である。「質が問題」「信用できない」としても、すべてがそうだとはいえない。

 キャスターなどジャーナリズムが発言するツールを独占して、ニュースやアジェンダをこう解釈しろと押し付けるというのはもう過去のことになっている。
 キャスターなどの矜持もわからないではないが、自分たちが世の中の正義を独占することには無理が生じている。

■理解や解釈は誰のもの?

 キャスターたちのなかには、いまだに自分たちのコンテンツがすべて正しいと一方的に論じていることも多い。

 自分たちのコンテンツ以外はフェイクだというのは、どこかの大統領と同じで変わることがない。おそらく、そこがSNSサイドからの反発を呼んでいる。

 聖書はこう読んで、こう解釈しろという神父と、聖書は自分で読んで自分で解釈するという人たちの違いか。

 いろんな理解や解釈があってよいわけで、最初から頭を縛られたように一方的に物事を批判すればそれで正しいジャーナリズムということではないのではないか。

■人間は反省したほうがよい

 先日、朝のワイドショー(テレ朝)なのだが、親子の熊が雪の降り積もった急峻な崖のような山をよじ登る動画を流した。ドローンで撮影したものだ。

 親は崖をよじ登ったが、小熊のほうは崖を何度も酷く転げ落ちて、それでも諦めず下からまた登り、最後はなんとか登りきった。親子の熊は、その後に木々が生い茂った森に隠れるように走って一緒に消えていった。

 その動画を見た人からのコメントでは、「感動した」という意見が多くあった。
 一方では、ドローンを猛禽類と思って親子の熊が慌てたのではないかという見方もあった。
 猛禽類が、小熊を狙っていると誤解して、親子が焦って崖をよじ登ったという意見である。人間たちの動物への勝手な迷惑、それをまた勝手に感動しているのではないか、というわけである。

 世の中はいろんな意見や見方があるということである。人間、自分は正しい、自分は間違っていない、と思いがちだ。もちろん私自身もそうなのだが、人間は反省したほうがよい。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事(1971年~2005年)を経て現職。2012年から「経済コラム」連載。)

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