【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領のコロナ感染というカオス

小倉正男の経済コラム

■東証ダウンで終日取引停止

 10月1日、東京証券取引所の売買が終日停止となった。システムに障害が発生しダウン、バックアップも役に立たないという事態となった。

 翌日の10月2日には、東証は復旧した。その日の後場、アメリカのトランプ大統領が新型コロナに感染して陽性と報道された。日経ダウは急落した。2日のNY株式、ナスダックはともに下落した。

 東証がダウンしていた10月1日にトランプ大統領のコロナ感染報道が重なっていたら問題はもっと重大になっていたに違いない。世界の株価が動いているのに日本の株価は停止していた。

 麻生太郎・財務相兼金融相が「きわめて遺憾」という談話を出した(10月2日)。売りたいときに売ることができる、買いたいときに買えるというのが証券市場なのだが、その機能が止まった。

 「きわめて遺憾」はお定まりのフレーズだが、下手したら外資系機関投資家などから訴訟など起こされかねない事態だった。株式市場は、リスクというものが内在しているわけであり、「きわめて遺憾」では済まない。

■トランプ大統領のコロナ感染で政局混迷

 トランプ大統領のコロナ感染でいえば、コロナを軽視してきた咎めといえる面があるのではないか。

 症状は当初軽いといわれていたが、入院したものの高熱で抗ウイルス薬「レムデシビル」を投与したということである。おそらく大統領選挙に与える影響は少なくない。

 大統領選挙のTV討論会も第2回目は予定通りに開催されるのか、トランプ大統領の病状回復次第ということになる。

 第1回目は、お互いの誹謗中傷で「ひどい討論だった」「最もカオス(混沌)な討論会」と酷評された。第2回目はもっとひどいことになりかねないわけだが、開催にこぎ着けられるのかどうかもわからなくなった。政局混迷というか、一気に不透明感が漂っている。

■アメリカも世界もカオスな事態に?

 日本にも、トランプ大統領と同じようにいってよいのかどうかだが、コロナ感染などインフルエンザ以下の病気だという人たちがいる。コロナ論議などメディアが騒いでいるだけで、大した病気ではないというのである。感染しないとどうにも怖さはわからないということか。

 このところ日本企業でも、コロナ感染者が出て、その会社の本支社、事業所、店舗、工場などの業務に支障が及ぶ事例が発生している。「withコロナ」で経済を回せといっているわけだが、簡単には回せないのが実情である。

 ところで4年前の大統領選挙では、トランプ氏が不利、それもかなり大きく引き離されて負けるといわれていた。それだけにトランプ氏が前回大統領選挙で勝利したのには驚いたものである。

 今回も前回と同じような状況となっている。識者、あるいはメディアが、前回とまったく同様にトランプ大統領は不利が免れないと論じている。こちらも前回で懲りているというか学習しているから、識者やメディアから伝えられる前評判はほとんど聞き流すぐらいにしてきている。

 しかし、そうしたこともトランプ大統領が大統領選挙にカムバックできなければ、すべてが吹き飛ぶことになる。アメリカも世界もカオスな事態になりかねない。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)

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