【忠田公夫の経済&マーケット展望】米国の雇用統計と景気

忠田公夫の経済&マーケット展望

■シェールガス関係で1.1万人の雇用減少、東部の豪雪も響く

最近、発表された米国の経済指標をみますと、明らかに景気の減速傾向がうかがえます。

4月1日発表のISM製造業景気指数(3月)は51.5と予想(52.5)を下回り、1年10か月振りの水準に低下しました。指数の中身をチェックしますと、前月に比べ輸出が1.0ptダウン、新規受注が0.7ptダウン、雇用も1.4ptダウンと悪化し、ドル高による悪影響が出ています。

また、同3日発表の3月雇用統計(速報値)によりますと、景気動向を敏感に反映します非農業部門の就業者数は前年比12万6000人の増加にとどまりました。増加幅は2月(26万人超)を大幅に下回り、2013年12月(10万9000人)以来、1年3か月振りの低水準となりました。しかも、2月の増加幅は従来発表の29万5000人から26万4000人に、1月も同23万9000人から20万1000人に下方修正され、1~3月の平均も19万7000人と、雇用回復の目安されます20万人のラインをやや下回る結果となりました。

雇用の中身をみますと、原油価格の下落の影響でシェール開発が苦境にあります鉱業部門で雇用が約1万1000人減少しましたほか、製造業や建設業でも雇用の減少を余儀なくされました。ただ、平均時給は24.86ドルと前月比で0.3%、前年同月比で2.1%の上昇と若干改善しましたが、FRBの望むレベルには達していません。

このところの米国経済のスローダウンは企業収益にも投影され、2015年1-3月期の見通しは、今年1月時点の期初予想では前年同期比5%強の増益予想(トムソン・ロイター調べ)でしたが、現時点では同4%の減益予想に悪化しています。さらに、同4-6月期の見通しについても同0.5%の2四半期連続の減益予想となっているのです。

しかし、今般の景気減速傾向には(1)ドル高、(2)原油安、(3)東部地区の豪雪、(4)西海岸の港湾ストなどが影響したと見られ、過剰に悲観視すべきではないでしょう。(アナリスト)

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