【どう見るこの相場】「それほど悪くない」が「それほど良くない」と拮抗なら金利上昇メリットの金融株が浮上

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どう見るこの相場

 「それほど悪くない」というマーケット・コメントを聞く機会が増えた。足元で業績を上方修正する銘柄が散見されるためで、このコメントを体現した典型例が、NOK<7240>(東1)である。同社株は、10月21日に今3月期業績を上方修正し、株価は、窓を開けて急伸し週末に向け2日間で200円高した。しかしこの上方修正の内実は、赤字幅の縮小までで業績は水面下にとどまったままだ。しかも連結子会社での希望退職者の募集を同時に発表している。自動車生産が中国などで復調し、スマートフォンの売り上げも予想を上回ったことが、オイルシール事業と電子部品事業を上ぶれさせ上方修正要因となったもので、同社が今年8月に開示した業績の最悪シナリオに比べれば、確かに「それほど悪くない」ことになった。

 もともと株価は、「水準より方向」といわれてきた。業績水準の高低よりも、業績そのものが示唆する先行きの方向性の方が株価インパクトが大きいとするセオリーである。しかし、NOKの示唆した方向性は、水面下から水面下への深度の修正にとどまっているのである。今期業績のあと来期、再来期と展望してみて、いつ何時「それほど悪くない」が、「それほど良くない」に転化するか心許ない部分も残るのである。

 相場環境も相場環境である。新型コロナウイルス感染症の感染が、欧米中心に再拡大し、チェコやアイルランドのようにロックダウン(都市封鎖)に踏み切る国も出てきて、経済活動再開の足かせになる懸念もある。さらに11月3日に投票の米国の大統領選挙の帰趨もある。無事にイベント通過とはならず、一波乱も二波乱もあるかもしれない。さらにいよいよ本格化する3月期決算会社の中間業績の発表である。「それほど悪くない」が大勢を占めれば無難にイベント通過となるが、「それほど悪くない」と「それほど良くない」が拮抗するようだと、果たして「水準より方向」の投資セオリーが有効となるのか上値も限定的になる可能性も想定から外せなくなる。

 そこでここでの投資スタンスの重要ポイントは、「それほど悪くない」の先行きの方向性を示唆する銘柄やセクターを厳選することになるはずだ。そこで今週の当コラムでは、前週末23日に業績を上方修正した地銀株に注目することとした。5行が業績修正し、うち4行が上方修正であり、また東邦銀行<8346>(東1)のようにSBIホールディングス<8473>(東1)と戦略的業務提携を強化するイレギュラーな動きも発表された。

 地銀株は、菅義偉首相が、数が多すぎて収益性に問題があり、再編の必要性を示唆したいわば構造不況産業である。それでもこの4行の業績上方修正要因は、有価証券関係損益の改善と与信費用の減少で共通しているが、さらにフォローの材料として日米の長期金利の上昇があり、利ザヤ拡大、運用環境の好転も期待できることになれば「それほど悪くない」ということになるはずだ。

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