【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クリナップは売り一巡、低PBRも評価材料

銘柄分析

 クリナップ<7955>(東1)はシステムキッチンの大手である。株価は16年3月期営業減益予想で年初来高値圏から急反落したが、目先的な売りが一巡して切り返しの動きを強めている。0.7倍近辺の低PBRも評価材料であり、反発展開だろう。

 厨房部門(システムキッチン)を主力として、浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)も展開している。

 中期経営計画では「ザ・キッチンカンパニー」の確立を掲げ、システムキッチン「S.S.」「クリンレディ」「ラクエラ」を軸とした商品ラインナップの充実、ブランド力の強化、中高級システムキッチンの市場シェア上昇、全国のショールーム(101ヶ所)への集客強化、総合競争力の強化、会員登録制組織「水まわり工房」加盟店との連携強化、リフォーム需要の取り込み、トータルコストの低減、そして海外事業の戦略的推進などを重点施策としている。

 全国101ヶ所のショールームへの集客を強化するため、リニューアルと生活提案型ショールームへの転換を進めている。15年3月期は帯広、藤沢、鹿児島、和歌山、新潟の5ヶ所の移転リニューアル、大宮、大阪、岡山、大分の4ヶ所のリニューアルを実施した。さらに15年4月は石巻(4月22日移転オープン)、仙台(4月24日リニューアルオープン)の2ヶ所のリニューアルを実施した。15年4月現在で過去4年間のリニューアルは約50ヶ所となった。

 5月11日に発表した前期(15年3月期)の連結業績は売上高が前々期比9.7%減の1162億39百万円、営業利益が同65.9%減の30億28百万円、経常利益が同68.1%減の27億03百万円、純利益が同82.2%減の8億83百万円だった。

 配当予想は記念配当5円を落として年間20円(第2四半期末10円、期末10円)とした。配当性向は96.0%となる。ROEは同7.0ポイント低下して1.5%、自己資本比率は同2.5ポイント上昇して65.7%となった。

 消費増税に伴う新設住宅着工戸数減少など市場の落ち込みが想定以上に長期化し、輸入原材料の価格上昇なども影響して減収減益だった。純利益は厚生年金基金解散損失引当金繰入額の計上や、平成27年度税制改正に伴う繰延税金資産取崩も影響した。

 部門別売上高は、厨房部門が同8.1%減の911億95百万円、浴槽・洗面部門が同18.8%減の189億53百万円だった。厨房部門でシステムキッチン「S.S.」は数量、金額とも減少、「クリンレディ」は数量、金額とも減少、「ラクエラ」は数量が微増、金額が減少となった。浴槽・洗面部門でシステムバスルーム「アクリアバス」は数量、金額とも減少、そして「ユアシス」は数量、金額とも減少した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)319億24百万円、第2四半期(7月~9月)284億53百万円、第3四半期(10月~12月)288億39百万円、第4四半期(1月~3月)270億23百万円、営業利益は第1四半期19億68百万円、第2四半期5億49百万円、第3四半期11億13百万円、第4四半期6億02百万円の赤字だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月11日公表)は、売上高が前期比1.5%増の1180億円、営業利益が同7.5%減の28億円、経常利益が同9.4%減の24億50百万円、純利益が同52.7%増の13億50百万円で、配当予想は前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。

 厳しい事業環境が継続して微増収にとどまり、営業減益、経常減益見込みとしている。純利益は特別損失や繰延税金資産取崩の影響が一巡して大幅増益見込みだ。

 ただし食住イベントやフェアの開催によるブランド力向上、ショールーム全面リニューアルによる集客力強化、会員登録制組織「水まわり工房」加盟店との連携などの販売強化施策を推進する。システムキッチンの市場シェアは上昇基調であり、原価低減なども寄与して中期的には収益拡大が期待される。

 株価の動きを見ると、5月11日に付けた年初来高値970円から、15年3月期の大幅減益や16年3月期の営業減益予想で急反落した。ただし19日の869円から切り返しの動きを強めている。26日は900円台まで戻した。目先的な売りが一巡したようだ。

 5月26日の終値900円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS32円46銭で算出)は27~28倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1358円69銭で算出)は0.7倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺で下げ渋り、サポートラインを確認した形だ。0.7倍近辺の低PBRも評価材料であり、売り一巡して反発展開だろう。

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