マーケットエンタープライズは調整一巡、23年6月期収益回復基調

 マーケットエンタープライズ<3135>(東証プライム)は、持続可能な社会を実現する最適化商社を目指してネット型リユース事業、メディア事業、モバイル通信事業を展開している。22年6月期は成長戦略再構築のステージと位置付けて先行投資を積極推進したため赤字だが、各利益は計画に対して上振れ着地した。そして23年6月期は黒字転換予想としている。中期経営計画が順調に進捗して収益回復基調だろう。株価は戻り高値圏から反落したが、下値は限定的のようだ。調整一巡して出直りを期待したい。

■持続可能な社会を実現する最適化商社

 持続可能な社会を実現する最適化商社を目指して、ITとリアルを融合させたリユース事業を中心に事業領域拡大戦略を推進している。セグメント区分はインターネットに特化してリユース品を買取・販売するネット型リユース事業、消費者に対して有益な情報をインターネットメディアで提供するメディア事業、低価格通信サービスのモバイル通信事業としている。

 22年6月期のセグメント別(連結調整前)の売上構成比はネット型リユース事業が55%、メディア事業が5%、モバイル通信事業が40%、営業利益構成比はネット型リユース事業が19%、メディア事業が58%、モバイル通信事業が23%だった。22年6月期はネット型リユース事業が成長投資の影響で大幅減益、メディア事業が送客収入の回復で大幅増益、モバイル通信事業が獲得コスト増加で小幅減益だった。

■「高く売れるドットコム」と「おいくら」

 ネット型リユース事業は販売店舗を保有せずに、インターネットに特化して買取・販売サービスを展開している。買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、商材別に分類された30カテゴリーに及ぶ幅広い対応で自社WEB買取サイトを運営し、コンタクトセンターにおける事前査定、リユースセンターにおける買取・在庫一括管理・商品化、複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイトでの販売という、一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。

 20年7月には「高く売れるドットコム」と、19年2月に事業を譲り受けた日本最大級のリユースプラットフォーム「おいくら」のシステム連携・送客を開始した。21年6月には内閣府が運営する「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に参画した。21年10月には「高く売れるドットコム」が、特定非営利法人・一般社団法人ハウスキーピング協会主催「シンプルスタイル大賞2021」のサービス・空間部門で特別賞を受賞している。

 地域社会における課題解決を目的として地方自治体との取り組みを推進しており、21年6月には北海道絵恵庭市と「おいくら」を活用した持続可能な循環型社会に関する連携協定を締結、21年7月には三重県いなべ市と持続可能な循環型社会に関する包括協定を締結した。22年4月には川崎市および東京都墨田区における粗大ごみリユース事業として「おいくら」が本格導入された。また神戸市と地域社会における課題解決を目的とした連携による実証実験を開始した。関西の自治体では初の取り組みとなる。22年7月には埼玉県川越市と、地域社会における課題解決を目的とした連携による楽器寄附ふるさと納税の取り組みを開始した。

■中古農機具も拡大

 中古農機具、中古建機、中古医療機器など法人向け大型商材の取り扱いを拡大している。子会社MEトレーディングは20年5月に中古農機具事業を譲り受けて、中古農機具の買取代行、国内および海外販売・輸出代行を展開している。

 21年10月にはマシナリー(中古農機具)ビジネス加速に向けて北関東リユースセンター(茨城県結城市)を開設し、グループ全体のリユースセンターは12拠点となった。そして21年11月には北関東リユースセンターから中古農機具のEU向け輸出を開始した。中古農機具の取扱量拡大・EUへの輸出強化、拠点での対面販売による新規就農者支援などを推進する。22年4月にはファーマリーが展開する中古農機具の買取・販売事業を譲り受けた。

■メディア事業とモバイル通信事業も展開

 メディア事業は賢い消費を求める消費者に対して、その消費行動に資する有益な情報をインターネットメディアで提供するサービスを展開している。広告収入が収益柱となる。

 モバイル通信関連のメディア「iPhone格安SIM通信」「SIMチェンジ」、モノ売却・処分関連のメディア「高く売れるドットコムMAGAZINE」「おいくらマガジン」、モノ修理関連のメディア「最安修理ドットコム」、中古農機具買取・販売プラットフォーム「中古農機市場UMM」、農業に特化した「農業とつながる情報メディアUMM」などを運営している。

 なお「中古農機市場UMM」は、20年4月設立した子会社UMMが、20年5月国内最大級のインターネット中古農機具売買事業「JUM全国中古農機市場」を譲り受け、20年6月に名称を「中古農機市場UMM」に変更した。

 モバイル通信事業は、子会社のMEモバイルがMVNO事業者として、通信費の削減に資する低価格かつシンプルで分かりやすい通信サービスを展開している。主力は「カシモ」ブランドのモバイルデータ通信サービスである。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を作成・開示している。21年8月公表の中期経営計画に掲げた積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。

 21年8月公表の中期経営計画では目標として24年6月期売上高200億円、営業利益12億円を掲げている。主力の個人向けリユースの成長回帰、マシナリー(農機具・建機)および「おいくら」の成長加速などの売上成長により、まずは中期経営計画の達成を目指し、さらに25年6月期も含めて2期合計営業利益25億円を稼ぐ収益構造を構築する。

 24年6月期売上高計画の内訳は、ネット型リユース事業137億44百万円(個人向けリユース100億円、マシナリー30億円、「おいくら」7億44百万円)、メディア事業8億円、モバイル通信事業55億円としている。さらに25年6月期以降は、リユースの継続的成長に加えて、「おいくら」およびモバイルのストック収益を中心に持続的な収益拡大を目指すとしている。

■22年6月期は上振れ着地、23年6月期黒字転換予想で収益回復基調

 22年6月期第の連結業績(収益認識会計基準適用だが損益への影響なし)は、売上高が21年6月期比10.2%増の119億86百万円、営業利益が3億19百万円の赤字(21年6月期は54百万円の黒字)、経常利益が3億28百万円の赤字(同32百万円の黒字)、親会社株主帰属当期純利益が4億04百万円の赤字(同40百万円の赤字)だった。

 成長戦略再構築のステージと位置付けて、広告宣伝投資や人材投資など先行投資を積極推進したため赤字だったが、売上高は創業以来最高となり、各利益は計画(営業利益が4億円の赤字、経常利益が4億05百万円の赤字、親会社株主帰属当期純利益が4億40百万円の赤字)に対して上振れ着地した。

 ネット型リユース事業は、売上高が0.8%増の66億31百万円(総合リユースが52億66百万円、マシナリーが13億65百万円)だが、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が79.2%減の1億11百万円だった。売上面は堅調だったが、マーケティング投資の積極化、農機具分野における新拠点の開設、積極的な採用活動やシステム投資など先行投資の影響で減益だった。

 メディア事業は売上高が15.5%増の5億99百万円、利益が49.2%増の3億45百万円だった。収益性の高いキーワードにおける検索ランキング、モバイル通信に関するメディアへの送客収入が回復基調となり、効率的な事業運営も寄与して大幅増益だった。

 モバイル通信事業は売上高が25.7%増の48億61百万円、利益が2.0%減の1億34百万円だった。売上面では、自社通信メディアからの送客が回復基調となり、新商材のWiMAX 5Gを中心に新規回線獲得数が増加した。利益面は、中期的なストック収益基盤構築に向けた新たな料金プランを設定したため、1契約回線あたりの収益期間が長期化したことに加えて、新規回線獲得に向けた広告宣伝費増加も影響して減益だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が26億07百万円で営業利益が1億65百万円の赤字、第2四半期は売上高が28億85百万円で営業利益が39百万円の赤字、第3四半期は売上高が30億39百万円で営業利益が18百万円の赤字、第4四半期は売上高が34億53百万円で営業利益が95百万円の赤字だった。第4四半期は採用費や広告宣伝費を積み増したため赤字拡大だが、売上高は四半期ベースで過去最高となった。

 23年6月期の連結業績予想は、売上高が22年6月期比25.1%増の150億円、営業利益が3億円の黒字(22年6月期は3億19百万円の赤字)、経常利益が2億75百万円の黒字(同3億28百万円の赤字)、そして親会社株主帰属当期純利益が1億67百万円の黒字(同4億04百万円の赤字)としている。

 部門別売上高(調整前)の計画は、ネット型リユース事業が47.9%増の98億05百万円(個人向けリユースが45.9%増の75億円、マシナリーが46.5%増の20億円、おいくらが2.4倍の3億04百万円)、メディア事業が16.9%増の7億円、モバイル通信事業が2.9%増の50億円としている。

 個人向けリユースを中心に成長戦略を加速し、出張買取人員採用強化などの先行投資や、事業を譲り受けたファミリーの中古農機具買取・販売事業とのシナジー効果なども寄与して大幅増収・黒字転換予想としている。そして、中期経営計画(21年8月13日公表)の最終年度24年6月期の目標値である売上高200億円、営業利益12億円の達成に向けて、成長戦略再構築の進捗は順調としている。収益回復基調だろう。

■株価は調整一巡

 株価は戻り高値圏から反落したが、下値は限定的のようだ。調整一巡して出直りを期待したい。8月26日の終値は916円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS31円39銭で算出)は約29倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS197円95銭で算出)は約4.6倍、そして時価総額は約49億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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