加賀電子は上値試す、23年3月期2桁営業・経常増益予想、さらに再上振れの可能性

 加賀電子<8154>(東証プライム)は独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。中期経営計画では基本方針に収益力の強化、経営基盤の強化、新規事業の創出、SDGs経営の推進を掲げている。23年3月期は上方修正して2桁営業・経常増益予想としている。独立系商社としての調達力を活かして旺盛な需要を取り込む見込みだ。第1四半期の好調を勘案すれば通期予想は再上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して上げ一服の形となったが、大きく調整する動きも見られない。好業績や指標面の割安感を評価し、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。なお11月8日に23年3月期第2四半期決算発表を予定している。

■独立系の大手エレクトロニクス総合商社

 独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。M&Aも積極活用して、半導体・電子部品・情報機器等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開している。

 富士通エレクトロニクスを19年1月に子会社化(富士通セミコンダクターから株式70%取得、20年12月28日付で社名を加賀FEIに変更、22年1月1日付で完全子会社化)した。また19年10月にパイオニアの製造子会社である十和田パイオニアを子会社化して商号を加賀EMS十和田に変更、20年4月にエレクトロニクス商社のエクセルを子会社化、20年11月に旭東電気(20年4月民事再生法適用申請)から新設分割された新:旭東電気を子会社化した。

 21年10月には加賀EFIが、太陽誘電<6976>からBluetoothおよびWireless LANモジュールに関わる商圏、開発・製造技術ならびに知的財産権を承継し、22年1月から小型無線モジュール事業に本格参入した。22年6月には子会社の加賀デバイスが米国の半導体企業エフィニックス社と販売代理店契約を締結した。

 22年3月期のセグメント別売上高構成比は電子部品事業(半導体、電子部品、EMS)が88%、情報機器事業(パソコン・周辺機器、各種家電、写真・映像関連商品)が8%、ソフトウェア事業(CGアニメ映像制作、アミューズメント関連商品)が1%、その他事業(エレクトロニクス機器修理、アミューズメント機器製造販売、スポーツ用品販売など)が4%で、営業利益構成比は電子部品事業が87%、情報機器事業が10%、ソフトウェア事業が▲0%、その他事業が3%、調整額が1%だった。

 中期経営計画に沿ったセグメント区分は電子部品事業、EMS事業、CSI事業(情報機器事業)、その他事業(ソフトウェア事業、その他)としている。22年3月期の売上構成比は電子部品事業が66%、EMS事業が24%、CSI事業が8%、その他事業が3%、営業利益構成比は電子部品事業が53%、EMS事業が35%、CSI事業が10%、その他事業が1%、調整額が▲1%だった。

■収益力強化や新規事業創出を推進

 中期経営計画2024では基本方針に、更なる収益力の強化、経営基盤の強化、新規事業の創出、SDGs経営の推進を掲げている。経営目標値は、25年3月期売上高7500億円(電子部品事業3800億円、EMS事業1500億円、CSI事業540億円、その他事業160億円、新規M&A等1500億円)、営業利益200億円、ROE8.5%以上(安定的に)としている。株主還元については連結配当性向の目安を25~35%に置き、安定的かつ継続的に充実化する。

 重点アクションとして、さらなる収益力の強化では成長分野(モビリティ、通信、環境、産業機器、医療・ヘルスケア)への選択と集中、EMSビジネスおよび海外ビジネスの強化・拡大、経営基盤の強化ではコーポレートガバナンスの強化、効率的なグループ運営、人的資本への投資、新規事業の創出では新規分野への取り組み、ベンチャー投資によるオープンイノベーションの推進、非連続な成長を狙うM&Aへの挑戦を掲げている。SDGs経営の推進については、サステナビリティ中長期経営計画(21年11月公表)に基づいて、持続可能な社会の実現と持続的なグループの成長の両立を目指す。

 21年7月には、ソフトバンクが設立したソフトバンク5Gコンソーシアムの5G関連パートナーとして参画した。5G関連通信設備・機器の提供などを通じて、5G普及促進とともに、事業を通じた社会貢献を追求するとしている。22年4月には社長直下にSDGs推進室を新設した。SDGsの取り組みに関するグループ全体の連携を強化し、サステナビリティ経営を推進する。

■ベンチャー投資でイノベーション創出を支援

 創立50周年を記念して設立した「50億円ファンド」を通じてベンチャー投資を行い、イノベーション創出を支援している。

 出資実績としては、ウェアラブルコミュニケーションデバイス開発のBONX、前立腺癌生検および治療用システム開発の米HARMONUS、スマートセキュリティサービスのSecual、ソフトバンクグループで保育クラウドサービスを展開するhugmo、AIソフトウェア開発のハカルス、次世代蓄電デバイス「グリーンキャパシタTM」開発のスペースリンク、動画CM配信プラットフォーム事業やデジタルサイネージ事業CMerTVを展開するSun Asterisk、アジア圏を中心にライブ配信アプリ「17Live」などソーシャルメディアを展開する台湾のM17、医療機器開発ベンチャーのニューロシューティカルズ、シェアリングプラットフォーム「Alice.style」を運営するレンタルサービスベンチャーのピーステックラボなどがある。

 20年10月には、独自開発の光触媒技術を活用して各種環境製品を展開するカルテック(子会社化したエクセルがスタートアップ資金を出資)と、光触媒除菌脱臭機「TURNED K」の販売および製造に関わる部品調達で協業した。20年12月には、オンライン診療システム「D―CUBE」などオンライン健康支援事業を展開するリンケージに出資した。

 21年5月には株式投資型クラウドファンディング事業者の日本クラウドキャピタルに出資、21年6月にはAI関連技術を開発するカタリナに出資した。21年10月にはドローン等無人航空機の企画・製造・販売を行うVFR(PCメーカーのVAIOの子会社)に出資、21年11月には堆肥化装置や脱臭装置等を開発・販売するミライエに出資した。21年12月には独自AI技術でエナジーインフォマティックス事業を展開するインフォメティスに出資した。

■23年3月期2桁営業・経常増益予想、さらに再上振れの可能性

 23年3月期の連結業績予想(22年8月4日付で上方修正)は、売上高が22年3月期比8.9%増の5400億円、営業利益が14.7%増の240億円、経常利益が14.2%増の245億円、親会社株主帰属当期純利益が3.9%増の160億円としている。配当予想は22年3月期比30円増配の150円(第2四半期末70円=普通配当70円、期末80円=普通配当70円+創立55周年記念配当10円)としている。連続増配予想である。

 第1四半期の上振れを勘案し、従来予想に比べて売上高を300億円、営業利益を28億円、経常利益を33億円、親会社株主帰属当期純利益を15億円それぞれ上方修正し、経常利益と親会社株主帰属当期純利益は従来の減益予想から増益予想に転じた。なお第2四半期累計予想は据え置いている。

 修正後のセグメント別計画は、電子部品事業の売上高が9.9%増の4770億円でセグメント利益が17.6%増の213億円、情報機器事業の売上高が1.6%減の390億円で利益が4.1%減の20億円、ソフトウェア事業の売上高が44.5%増の40億円で利益が1億円の黒字(22年3月期は26百万円の赤字)、その他事業の売上高が2.1%増の200億円で利益が4.2%減の6億円としている。電子部品事業の売上高と利益を上方修正した。

 第1四半期は売上高が前年同期比40.9%増の1493億02百万円、営業利益が2.2倍の98億20百万円、経常利益が2.2倍の98億58百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2.4倍の69億84百万円だった。大幅増収増益で売上高、営業利益、経常利益は第1四半期として過去最高だった。社内計画に対して売上高は約270億円、営業利益は約46億円上振れて着地した。一部の半導体や電子部品において供給不足が継続したが、独立系商社としての調達力を活かして旺盛な需要を取り込み、さらに販売ミックス変化による売上総利益率向上(0.5ポイント上昇)なども寄与した。

 電子部品事業は、売上高が47.3%増の1334億77百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が2.4倍の90億18百万円だった。部品販売ビジネスでは、独立系商社としての調達力の強みを活かして、広範な業界からの旺盛な需要に対応した。子会社の加賀FEIやエクセルではスポット販売が想定以上だった。EMSビジネスでは車載関連や医療機器関連が好調に推移した。中国・上海ではロックダウンの影響を最小限に抑えた。

 情報機器事業は売上高が4.8%増の111億47百万円で、利益が0.6%減の5億64百万円だった。売上面では法人向けパソコンおよび教育機関向けパソコンの販売が堅調に推移し、LED設置ビジネスの大口工事の再開も寄与した。ソフトウェア事業は売上高が12.3%減の4億98百万円、利益が33百万円の赤字(前年同期は67百万円の赤字)だった。その他事業は売上高が1.4%増の41億78百万円、利益が14.7%増の2億49百万円だった。リサイクルビジネスが好調だった。

 中期経営計画に沿ったセグメント別業績は、電子部品事業の売上高が53.4%増の1014億44百万円で利益が3.7倍の65億41百万円、EMS事業の売上高が28.6%増の338億67百万円で利益が26.8%増の26億12百万円、CSI事業の売上高が4.8%増の111億47百万円で利益が0.6%減の5億64百万円、その他の売上高が0.4%減の28億42百万円で利益が5.5倍の79百万円だった。

 修正後の通期予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が27.6%、営業利益が40.9%、経常利益が40.2%、親会社株主帰属当期純利益が43.7%となる。第2四半期以降の不透明感を考慮しているが、第1四半期の好調を勘案すれば、さらに再上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 なお22年8月には、JPX総研および日本経済新聞社が共同して算出する「JPX日経中小型株指数」の2022年度構成銘柄として、昨年度に続いて選定された。

 株価は地合い悪化も影響して上げ一服の形となったが、大きく調整する動きも見られない。好業績や指標面の割安感を評価し、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。10月17日の終値は4005円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS609円58銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の150円で算出)は約3.7%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS4026円22銭で算出)は約1.0倍、そして時価総額は約1150億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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