【小倉正男の経済コラム】中国・バブル崩壊 生産者物価がマイナスに転落

■「習近平下台」ゼロコロナへの反乱

 「ワールドカップ」で世界はサッカーに“発狂”している。そうしたお祭は嫌いではない。その喧噪にややかき消されているが、中国が大変なことになっている。

 ゼロコロナに反発して「習近平下台(辞めろ)」「共産党下台(辞めろ)」「自由が欲しい」と大規模デモが各都市に広がっている。厳重に統制されている国民が、身の危険をかえりみず異議を唱えるのは天安門事件(1989年)以来のことだ。“息苦しさ”にもう黙ってはいられないという行動にみえる。

 天安門事件は、民主化を求めた学生などエリート層を中心にした反乱だったが、今回は若い人たちを中心に国民の多数がゼロコロナという国家統制に憤っている。天安門事件では、実権を握っていた鄧小平がデモ弾圧を命じたといわれている。天安門事件では「死者3000人(推定)」という凄まじい制圧が行われ、中国共産党の一大汚点となっている。

■世界はインフレ、中国はデフレに転落という異常

 中国の10月の生産者物価指数はマイナス1.3%(前年比)と極度の低迷となっている。9月も0.9%と低迷していたのだが、ついにマイナスに転じている。世界が猛烈な高インフレに転じるなかで中国は何とデフレに陥っている。これだけでもまさしく異常な事態というしかない。

 中国国家統計局は、「前年が高い水準にあったことの反動と資源価格の下落を一部反映している」と生産者物価の低迷を説明している。

 このマイナス1.3%という生産者物価は、企業サイドの経済・生産活動の低下をそのまま示している。だが、10月の消費者物価指数は2.1%増(前年比)と比較的に落ち着いている。中国では生産者物価と消費者物価の相関関係はみられない。生産者物価は実体を比較的ストレートに現している。だが、おそらく消費者物価は管理統制されている。

 ちなみに前2021年10月の生産者物価は13.5%増。しかし、消費者物価は1.5%増にとどまっている。21年後半は生産者物価が10%台の高いインフレが続いていたが、消費者物価は0~1%台、高くても1~2%台という推移だった。生産者物価の高低にかかわらず、消費者物価は常に低位で安定している。

■中国は「バブル崩壊」の瀬戸際

 中国にマイナス1.3%という生産者物価をもたらしたものは何か。端的には習近平国家主席の肝いり政策であるゼロコロナによる経済活動の低下が響いている。さらにいえば不動産不況、あるいは“不動産バブル崩壊”といえる現象が経済の根底にある。

 不動産市場は1年以上も低迷が続いている。新築住宅価格は値下がりが止まらない。ところが、習近平主席は「住宅は生活のためのもので投機対象ではない」という立場を守っている。「共同富裕」が習近平主席の眼目であり、不動産不況など眼中にないわけである。

 しかし、不動産は下手に処置を誤れば厄介なことになる。深刻な不動産不況が長期化すれば、不良債権発生など金融危機に火を付けることになりかねない。

 不動産関連はGDP(国内総生産)の30%を軽く超える需要セクターである。いわば内需を牽引するセクターだが、これが不況に晒されている。ゼロコロナで経済活動が止まり、貿易、輸出入も縮小している。これではデフレにならないほうが不思議である。

■米国に追付き追い越すチャンスは消滅

 習近平主席の周囲は誰も直言できない。中国経済のいまの苦境をつくっている習近平主席の政策はおそらく変更されない。これでは中国がGDP(国内総生産)で米国に追付き追い越すどころの騒ぎではない。

 中国経済は、このまま進むなら「バブル崩壊」という最悪のコースをたどるしかない。しかもそのバブルときたら歴史上最大の規模である。

 国家の理不尽なまでの統制で、国民は生活・経済活動が縛られ、停滞、低迷の寒々しさを肌身で感じている。国民はその息苦しさ、不安、不満といったものを溜め込んでいる。「習近平下台」「共産党下台」という大規模デモが連鎖・波及しているのは、そうした溜め込まれた憤りが共有されているからとみられる。(経済ジャーナリスト)

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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