【どう見るこの相場】業績下方修正の「石」銘柄が浮かぶなら上方修正の「木の葉」銘柄はバリュー株人気でなお浮上余地

どう見るこの相場

 「石が浮かんで木の葉が沈む」といえば、自然の摂理からはあり得ない超常現象だろう。その滅多にお目に掛かれないミステリーが、前週末3日の東京市場で起こった。2月2日に業績を下方修正した村田製作所<6981>(東証プライム)が、買われて窓を開けて200円高したのに対して、上方修正した日立製作所<6501>(東証プライム)が、100円安と売られてしまったのである。沈むべき「石」の村田製作所が浮かんで、浮かぶべき「木の葉」の日立製作所が沈む不可思議相場となった。

 「石」が浮かんだのは、村田製作所ばかりでなはい。2月1日に業績を下方修正した日本精工<6471>(東証プライム)は、1日置いた3日に3.4%の急反発を演じて東証プライム市場の上昇率ランキングの第28位に急浮上し、3日の取引時間中に業績を下方修正した三井化学<4183>(東証プライム)も、引けてみれば3%高と逆行高して同様にランキングの37位となった。さらに同じ京セラ<6971>(東証プライム)は、0.4%高と反発し、3日の11時に業績を再下方修正したデンソー<6902>(東証プライム)は、発表直後の安値から300円超も引き戻して2.3%高と急反発した。

 今年1月末からスタートした決算発表自体も、業績を修正した銘柄のうち下方修正銘柄のウエートが連日、6割弱と高く上方修正銘柄数を上回っており、本来は、株価にはアゲインストな逆業績相場のカタリストとなるはずなのに、日経平均株価は、フシ目の2万7500円台を奪回し1カ月半ぶりの高値に進んでいる。やっぱり「石」さえもが浮かぶ業績相場のようにみえる。

 物理法則を無視した「石」の浮上現象は、米国株高が大いに関係していそうだ。米国市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が、FOMC(公開市場委員会)後の2月1日の記者会見で、「ディスインフレのプロセスが始まった」とハト派発言をして早期の利上げ停止観測が強まり、長期金利が低下して高PERのグロース株が買われ、ハイテク株中心のナスダック総合株価指数は、3日続伸して昨年9月以来の高値水準に進んでいた。

 ところが「好事魔多し」である。前週末3日の米国市場では、今年1月の雇用統計で非農業部門の雇用者数が、市場予想を大きく上回って労働需給のひっ迫が続いていることを示して、FRBの早期利上げ停止観測が後退して長期金利は上昇し株価3指数も反落してしまった。また、もともと日本の金融政策は、米国には周回遅れであることが否定できなった。FRBが、利上げスピードの減速を模索する局面となっているのに、日本銀行は、異次元金融緩和策の出口を探り金融政策を正常化させようとするステージに差し掛かっている。長期金利の先行きの不透明さから米国市場のようにスンナリとグロース株買い、バリュー株売りとはなり難い。

 そこで今週の当特集では、水に浮かんだ「石」の業績下方修正のハイテク株と並んで、同じく水に浮かんだ業績上方修正の「木の葉」のバリュー株に注目することにした。なかでも業績上方修正が相次いだセグメント株が、クラスターとして浮上しそうだ。最右翼は電炉株で、2月2日に業績の再上方修正と再増配を発表した合同製鉄<5410>(東証プライム)は、ストップ高して2年ぶりに上場来高値を更新しており、株価イメージも一変している。同じように業績の再上方修正に増配、自己株式取得なども加わった大手商社株や同じく業績リバウンドを示した円高関連の電力・ガス株も「木の葉」展開を強めよう。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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