【編集長の視点】生化学工業は続落も1Q減益業績を織り込み新薬開発進展を見直して再騰期待

編集長の視点

生化学工業<4548>(東1)は、15円安の1927円と3日続落して始まっている。8月4日につけた年初来安値1825円から25日移動平均線までリバウンドし、中国の人民元切り下げによる世界同時株安などから、同社株にも目先の利益を確定する売り物が続いている。ただ、この年初来安値は、今年7月31日に発表した今3月期第1四半期(1Q)決算が、連続減益で着地したことが響いたもので、減益業績自体は、新薬開発のための研究開発費の拡大、新製剤棟建設などによる前向きの減益と評価も高まって織り込み済みとなる可能性もあり、下値でバイオ関連株買いが再燃する展開も想定される。1Qの減益業績も、期初予想の今期第2四半期(2Q)累計業績に対して高利益進捗率を示したことも見直されよう。

■5新薬のパイプラインが進行中で新製剤棟の稼働を開始

同社の今期1Q業績は、売り上げが、前年同期比2.4%増と増収転換したものの、経常利益が、同11.1%減、純利益が、同17.5%減と連続のマイナスとなった。売り上げは、国内医薬品で関節機能改善剤「アルツ」の市場シェアを前期の57.7%から59.5%へ引き上げるために販売提携先と積極的な拡販活動を続け、海外医薬品では、5回投与の関節機能改善剤「スパルツ」の拡販努力により微減にとどめ円安も寄与したことなどで増収転換した。利益は、腰椎椎間板ヘルニア治療剤「SIー6603(コンドリアーゼ)」が、今年4月に米国で安全性評価を主目的にオープン試験を開始したことなどによる研究開発費の増加や、今年1月に稼働を開始した高萩工場第5製剤棟などの減価償却費負担などで減益となった。ただ利益は、今期2Q累計業績に対して61~60%と目安の50%を上回る進捗率を示した。

研究開発費は、3年程度に1つ経営の柱になる新薬を上市するとする経営の基本方針のなか現在、「コンドリアーゼ」など5治療薬のパイプラインが進行中で、今期通期の研究開発費は、75億5000万円と2014年3月期の65億8800万円、前2015年3月期の81億4600万円に対して高水準の先行投資が続く。また今期通期の減価償却費も、33億円と2014年3月期の17億6700万円、前2015年3月期の26億1000万円に対してピークとなる。このため今3月期通期業績は、期初予想通り売り上げ306億5000万円(前期比3.8%増)、経常利益38億円(同5.2%減)、純利益29億円(同20.6%減)と見込んでいる。

■前期は1Q決算発表後に2日連続のストップ高と株価急騰の実績

株価は、今期1Q業績の連続減益を嫌って年初来安値1825円まで下ぶれ、2010円とリバウンド、25日線を挟むもみ合いを繰り返している。前期も、1Q減益業績が減益となって年初来安値水準の1100円台を試す下値調整となったが、証券会社の強気レポートをハヤして2日連続のストップ高を交えて2000円大台まで急伸した。新薬の開発進行を期待してこの急騰劇再現の思惑を強め、一段の戻りを試そう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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