加賀電子は24年3月期1Q減益だが社内計画を上回る水準、通期上振れ余地

(決算速報)
 加賀電子<8154>(東証プライム)は8月3日の取引時間終了後に24年3月期第1四半期連結業績を発表した。電子部品事業における前期のスポット需要の解消などで減収減益だったが、営業利益は社内計画を大幅に上回る水準で着地した。通期予想は据え置いて、コロナ禍における需要増からの反動や顧客の在庫調整の影響など一時的な需要減退により減収減益予想としている。ただし第1四半期の営業利益進捗率は28%と順調だったため、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。株価は上場来高値圏だ。目先的には第1四半期の減益を嫌気する動きが優勢になる可能性もあるが、指標面の割安感も評価材料であり、目先的な利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■24年3月1Q減益だが社内計画を上回る水準で着地

 24年3月期第1四半期の連結業績は売上高が前年同期比7.8%減の1376億94百万円、営業利益が28.8%減の69億94百万円、経常利益が29.9%減の69億09百万円、親会社株主帰属四半期純利益が17.4%減の57億67百万円だった。

 電子部品事業における前期のスポット需要の解消などで減収減益だったが、営業利益は社内計画(49億円)を大幅に上回る水準で着地した。また前年同期比で営業利益は28億26百万円減益だったが、スポット需要の解消(営業利益23億13百万円減益要因)や、特定取引先の民事再生申請に伴う損失引当(同4億12百万円減益要因)を除けば、実質的に前年並みの利益水準だったとしている。営業外費用では為替差損が2億15百万円増加、特別利益では投資有価証券売却益10億65百万円を計上した。

 電子部品事業は、売上高が10.1%減の1200億15百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が34.3%減の59億22百万円だった。部品販売ビジネスにおいて、前期のスポット需要が解消したことに加えて、顧客全般における在庫調整の顕在化も影響した。EMSビジネスは車載関連が伸長したが、医療機器関連や産業機器関連が顧客の在庫調整の影響などで減少した。

 情報機器事業は売上高が8.1%増の120億50百万円、利益が32.2%増の7億46百万円だった。教育機関向けパソコン販売が好調に推移し、LED設置ビジネスの大口案件も寄与した。

 ソフトウェア事業は売上高が15.8%増の5億77百万円、利益が4百万円の損失(前年同期は33百万円の損失)だった。スマホ向けゲーム制作やCG制作における大型案件や新規案件の受注が寄与して損失縮小した。

 その他事業は売上高が20.9%増の50億50百万円、利益が17.0%増の2億91百万円だった。PC製品・周辺機器のリサイクルビジネスが好調に推移し、アミューズメント業界向けアーケードゲーム機器も伸長した。

 会社別の営業利益(連結調整前)は加賀電子が9.4%減の56億63百万円、加賀EFIが73.8%減の7億97百万円、エクセルが5.0%増の4億85百万円だった。中計セグメント別の営業利益(連結調整前)は電子部品事業が43.5%減の36億95百万円、EMS事業が6.8%減の24億33百万円、CSI(コンシューマー&システムインテグレーター)事業が32.2%増の7億46百万円、その他事業が1.5%増の81百万円だった。

 通期連結業績予想は据え置いて、売上高が23年3月期比9.5%減の5500億円、営業利益が22.5%減の250億円、経常利益が23.6%減の250億円、親会社株主帰属当期純利益が22.0%減の180億円としている。配当予想は23年3月期と同額の220円(第2四半期末110円、期末110円)としている。普通配当ベースでは増配の形となる。予想配当性向は32.1%である。

 コロナ禍における需要増からの反動や顧客の在庫調整の影響など一時的な需要減退により減収減益予想としている。営業利益72億49百万円減益の要因分析は販売数量・販売ミックスで▲52億05百万円、スポット販売減少で▲43億09百万円、販管費減少で+22億65百万円、為替影響で±0百万円の見込みとしている。

 セグメント別の計画は、電子部品事業の売上高が12.6%減の4715億円で利益(全社費用等調整前営業利益)が26.9%減の207億円、情報機器事業の売上高が3.0%増の450億円で利益が2.1%増の25億円、ソフトウェア事業の売上高が50.1%増の45億円で利益が4.6%増の3億円、その他事業の売上高が31.6%増の290億円で利益が36.1%増の15億円としている。

 ただし第1四半期の営業利益進捗率は28%と順調だったため、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。また中期経営計画最終年度25年3月期の営業利益目標を、従来の「200億円」から「300億円以上」に大幅に引き上げている。24年3月期は一時的な需要減退の影響を受けるが、25年3月期は成長に戻るシナリオだ。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。

■株価は上値試す

 株価は上場来高値圏だ。目先的には第1四半期の減益を嫌気する動きが優勢になる可能性もあるが、指標面の割安感も評価材料であり、目先的な利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。8月3日の終値は6100円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS685円42銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の220円で算出)は約3.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS4935円36銭で算出)は約1.2倍、そして時価総額は約1751億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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