【シルバービジネス関連特集】医療費抑制政策で後発医薬品関連のビジネスチャンス拡大

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■医療費抑制政策で後発医薬品(ジェネリック)関連のビジネスチャンス拡大

安倍内閣が6月30日に閣議決定した「骨太の方針2015」(経済財政運営と改革の基本方針2015)では、年金や医療など社会保障費関連の歳出改革の一環として、2014年度に40兆円(患者負担と保険給付の総額)を突破した国民医療費の伸びを抑制するため、後発医薬品(ジェネリック)の数量ベース普及率を2018~20年度末までの早い時期に80%以上に引き上げるという目標が盛り込まれた。

後発医薬品というのは、特許が切れた新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を使って製造し、新薬より価格が3~5割安く設定される医薬品のことで「ジェネリック」とも呼んでいる。

厚生労働省によると2014年度の後発医薬品の数量ベース普及率は52%で、米国の約9割やドイツの約8割に比べて見劣りする。この理由として、たとえばドイツでは先発医薬品を使うと患者の負担割合が大幅に重くなるのに対して、日本では先発医薬品も後発医薬品も患者の負担割合が同じため、後発医薬品へのシフトが進まないとの指摘がある。

また日本市場では後発医薬品に対して品質を不安視する風潮が強いことや、後発医薬品の拡大でシェアを奪われることになる新薬メーカーが消極的なことも一因とされている。

そして後発医薬品の普及率上昇や市場拡大については、後発医薬品メーカーを中心とした早期の生産能力増強と安定的な供給体制の構築、調剤薬局などにおける適正在庫の確保、品質の安定や信頼性の向上などの課題が指摘されている。また一方では、国民医療費削減に向けた後発医薬品の薬価引き下げに対する警戒感が指摘され、海外の大手後発医薬品メーカーの日本市場への参入が活発化して競争激化も予想されている。

ただし国内の大手・中堅後発医薬品メーカーにとってはビジネスチャンス拡大の好機であり、あすか製薬<4514>、日本ケミファ<4539>、日医工<4541>、東和薬品<4553>、富士製薬工業<4554>、沢井製薬<4555>、ニプロ<8086>、イワキ<8095>(コード番号順)などは、国内市場拡大に合わせて生産能力の増強を進める方針を打ち出している。

生産能力の増強には時間を要し、大型の設備投資も必要になるため、自社製造の拡大だけでなく、後発医薬品の種類や数量などによって製造委託または製造受託する動きも広がりそうだ。

また医師や患者からの信頼性向上に向けて、先発医薬品メーカーと提携し、先発医薬品と原薬や製法が全く同じの後発医薬品、いわゆる先発医薬品メーカー公認とされる「オーソライズド・ジェネリック(AG)」を製造する動きも活発化している。

海外の大手医薬品メーカーが国内後発医薬品メーカーの買収に動く可能性も指摘されているため、M&Aも注目テーマとなりそうだ。さらにアルフレッサホールディングス<2784>、メディパルホールディングス<7459>、東邦ホールディングス<8129>、スズケン<9987>といった医薬品卸や、取扱品目の増加によって業務量増加や在庫管理負担が懸念されている調剤薬局チェーンなどの対応も含めて、後発医薬品(ジェネリック)関連業界の動きが注目される。

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