【編集長の視点】災害関連株は補正予算編成ならなお劇場型の第2ラウンド相場を期待し和戦両様妙味=浅妻昭治

編集長の視点

<マーケットセンサー>

寺田寅彦博士のように、もう「災害は忘れたころにやってくる」などと悠長なことを言ってはいられないようである。いまや日本列島は、日々、異常気象、日々、自然災害に見舞われる自然災害列島に化してしまった印象が強く、「災害を忘れる」ほどの時間的余裕を与えてはくれない。火山は噴火して噴石を飛ばし、竜巻が頻発してソコソコを走り、台風の上陸がこれまでになく増加し、記録的な豪雨を降らすなどが至るところで住民、住宅を襲い激甚災害を引き起こしている。しかも、この激甚災害が、劇場型で進行するのである。

前週9月10日に栃木県と茨城県を襲った記録的な集中豪雨も、この一つであった。台風18号が変わった低気圧の影響で降雨量が、降り始めから600ミリ超にも達し、地域の河川が次々と氾濫、茨城県常総市の鬼怒川の堤防の決壊場所からは、渦を巻いた濁流が住宅地に流れ込み、住宅を押し流し倒壊させる光景や救出を求める被災者の姿がテレビ画面にライブで映し出された。まさに、2011年3月に起こった東日本大震災で東北地方の沿岸を襲ったあの大津波のうねりと変わらない。視聴者は誰でも被災者の無事を願い、被災地の1日も早い復旧・復興を祈るとともに、いつわが身に同様の災害が迫ってくるかと他人事でない恐怖を感じたに違いない。

このライブ映像を目にした株式市場では、目敏い投資家が、不謹慎と謗りを受けるのを承知で、10日後場に災害関連株にいっせいに買い物を入れ軒並み急騰した。キタック<4707>(JQS)、地盤ネットホールディングス<6072>(東マ)、土木管理総合試験所<6171>(東2)の3銘柄は、日経平均株価が、前日9日の1343円高から急反落するなか、揃って逆行高してストップ高となったが、このストップ高は、ちょうど自衛隊のヘリコプターが、濁流のなかに取り残された被災者を救出するテレビ画像が映った時間とほぼ重なった。昨年8月20日に広島県安佐北・南区で発生した広島豪雨土砂災害でも、ドーン<2303>(JQS)とイメージワン<2667>(JQS)の2銘柄が、2日間にわたってストップ高したが、これもテレビニュースで土石流の災害現場、被災者救助活動などが繰り返し放映されたことが背景となった。

急騰が目立った災害関連株は、前週末の11日にはほぼ半数が反落し、ストップ高した銘柄もキタックが小幅続伸しただけで、2銘柄が急反落、株価的には一過性の材料株人気の終わった感があった。しかし、当コラムでは、この災害関連株は、なお第2ラウンド相場、第3ラウンド相場が期待できるはずだと提案したいのである。理由は、北関東の集中豪雨を引き起こした低気圧が、北上して東北地方に深刻な爪跡を残していることもあるが、それ以上になお大きな背景には、地球温暖化に起因する異常気象の広がりがある。異常気象は、自然災害を頻発させるだけではない。有害生物の異常発生・繁殖などが、新たな感染症を流行させることなども懸念されている。昨年8月のヒトスジシマカによるデング熱騒動なども記憶に新しいところで、今夏も太平洋沿岸各地にフカが異常接近して各地の海水浴場が遊泳禁止となった。異常気象が、異常ではなく常態化して、中国流にいえば新常態となっているのである。

しかも、災害関連株は、ことによると政策的に追い風を受ける可能性も出てくる。今年4~6月期の2期ぶりのマイナス転換に対応して安倍内閣による5兆円規模の補正予算が編成され、昨年度並みの災害復興、災害対策の強化予算が組み込まれると一部で観測されているからだ。さらに日本郵政<6178>(東1)グループの新規上場も、今年11月4日に決定し、株式売出しによる調達資金は、震災復興予算に充当されることになっており、これも関連してくる。延長国会も最終盤、ポスト安全保障関連法案で補正予算編成などの声が強まれば、災害関連株の第2ラウンド相場発進のシグナルとなるはずだ。

相場全般は、今週16日、17日に開催されるFOMC(公開市場委員会)でFRB(米連邦準備制度理事会)が、金利引き上げに踏み切るかそれとも見送るかで、相場が上昇するか調整するかの方向性が決まり、円安か円高によっても、主力輸出株が持ち直すか再び下値を探るか銘柄選択の影響を受けると予想されるが、災害関連株は、FRBの決定が吉でも凶でも、和戦両様で材料株人気をキープするはずである。

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