【決算記事情報】科研製薬は24年3月期3Q累計減益、通期予想据え置き

 科研製薬<4521>(東証プライム)の24年3月期第3四半期累計連結業績は競合品や薬価改定の影響で小幅減収となり、研究開発費増加も影響して減益だった。ただし通期予想を据え置いている。売上高はアルツやエクロックの伸長で薬価改定影響などを吸収して小幅増収、営業利益と経常利益は新製品発売に伴う広告宣伝費など販管費の増加(研究開発費は小幅減少の計画)で小幅減益、親会社株主帰属当期純利益は前期計上した特別損失の反動により大幅増益予想としている。

■医療用医薬品・医療機器メーカー

 医薬品・医療機器、農業薬品などの薬業、および文京グリーンコート関連などの不動産賃貸事業を展開している。

 主要医薬品・医療機器は、外用爪白癬治療剤のクレナフィン、関節機能改善剤のアルツ、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルム、創傷治癒促進剤のフィブラスト、原発性腋窩多汗症治療剤のエクロック、歯周組織再生剤のリグロス、腰椎椎間板ヘルニア治療剤のヘルニコア、およびジェネリック医薬品である。

 23年8月には、壊死組織除去剤ネキソブリッド外用ゲル5g(イスラエルのメディウンド社から導入、海外製品名NexoBrid、22年12月に深達性Ⅱ度またはⅢ度熱傷における壊死組織の除去の効能・効果で日本における製造販売承認を取得、23年5月に薬価基準収載)の発売を開始した。本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることに加え、低温管理(2℃~8℃)での保管・流通が求められるため、エス・エム・ディを総代理店として販売する。

 また23年9月には、原発性腋窩多汗症治療剤エクロックについて、23年6月に韓国における独占販売契約を締結した韓国ドンファ社(韓国証券取引所上場)が、韓国食品医薬品安全処に販売承認申請を提出した。

■M&A・アライアンス

 M&A・アライアンス関連では、21年1月にブロックチェーン技術を活用したデータプラットフォーム事業で医療・ヘルスケア領域に展開するジーネックス(マネックスグループの関係会社)に出資して業務提携した。21年12月には国内バイオベンチャー企業のARTham Therapeutics(東京都文京区、ARTham社)を連結子会社化した。

 22年11月には、アクシル・キャピタル・パートナーズ2号有限責任事業組合が設立したアクシル・ライフサイエンス&ヘルスケアファンド2号投資事業有限責任組合に対して、最大10億円を出資する契約を締結した。

 23年1月には、2017年に武田薬品工業の創薬プラットフォーム事業を継承した国内初の創薬ソリューションプロバイダーであるAxcelead DDP(神奈川県藤沢市)と、画期的新薬の創出に向けた協業に関する契約を締結した。23年3月には、bitBiome(東京都新宿区)と、bitBiomeが有する微生物プラットフォーム技術を活用し、感染症治療薬創薬に関する共同研究契約を締結した。

 23年9月には、再生医療関連事業を展開するセルソース(東京都渋谷区)と、エクソソームを含む細胞外分泌物を用いた整形外科疾患の治療または予防に関する日本初の医薬品の創出に向けたフィージビリティ・スタディ契約を締結した。

■開発パイプライン

 24年3月期第3四半期末時点の開発パイプラインの状況は、アタマジラミ症を適応症とするKAR(アーバー・ファーマシューティカルズ社から導入、海外製品名Sklice)が第3相段階、難治性脈管奇形を適応症とするKP-001(ART―001、アーサム・セラピューティクス社からの継承品)が日本で第3相段階・米国で第1相段階、原発性掌蹠多汗症を適応症とするBBI-4000(原発性腋窩多汗症治療剤エクロックの適応拡大)が第1相段階、固形がんを適応症とするKP-483(がん免疫療法、自社創薬品)が第1相段階、アトピー性皮膚炎を適応症とする多重特異性抗体医薬候補物質NM26-2198(ニューマブ・セラピューティクス社との共同開発)が第1相段階、末梢性神経障害性疼痛を適応症とするKP-910(自社創薬品)が第1相段階、原発性胆汁性胆管炎を適応症とするセラデルパー(シーマベイ・セラピューティクス社からの導入品)が第1相段階、先天性副腎過形成症を適応症とするチルダセルフォント(スプルース・バイオサイエンシズ社からの導入品)が第1相段階である。

 なおART―648(ARTham社開発品)については第2相試験が終了し、水疱性類天疱瘡薬としての開発を中止(23年4月公表)した。ART―001(現:KP-001)については23年4月に第2相試験の成功に係るマイルストン、23年5月に第3相試験の開始に関するマイルストン達成を確認した。

 セラデルパーは23年1月に米国シーマベイ・セラピューティクス社と、日本における開発および商業化に関するライセンス契約を締結した。シーマベイ社に対して契約一時金45億円、開発および販売マイルストンの達成により最大170億円、並びに売上に対する一定のロイヤリティを支払う。なおシーマベイ社は23年9月に第3相臨床試験の結果速報を発表している。

 チルダセルフォントは23年1月に米国スプルース・バイオサイエンシズ社と、日本における開発および商業化に関するライセンス契約を締結した。スプルース社に対して契約一時金15百万ドル、開発および販売マイルストンの達成により最大64百万ドル(1ドル=135円換算)並びに売上に対する一定のロイヤリティを支払う。

■24年3月期3Q累計減益、通期予想据え置き

 24年3月期第3四半期累計の連結業績は売上高が前年同期比1.6%減の546億85百万円、営業利益が28.4%減の88億73百万円、経常利益が28.3%減の93億04百万円、親会社株主帰属四半期純利益が27.0%減の66億75百万円だった。

 売上面ではアルツやエクロックが増加したものの、競合品や薬価改定の影響で全体として小幅減収となり、利益面では研究開発費の増加(34.7%増の85億02百万円)なども影響して減益だった。主要医薬品・医療機器の売上高(単体)は、クレナフィンが4.3%減の138億21百万円、アルツが5.2%増の138億45百万円、セプラフィルムが10.1%減の54億79百万円、フィブラストが3.2%減の20億08百万円、エクロックが51.4%増の15億88百万円、リグロスが0.1%増の6億70百万円、ヘルニコアが3.7%減の2億91百万円、ジェネリック医薬品(計)が2.7%減の62億円だった。

 セグメント別に見ると、薬業(医薬品・医療機器、農業薬品)は売上高が1.7%減の528億64百万円で、利益(営業利益)が31.3%減の78億58百万円だった。なお海外売上高は12.4%減の40億45百万円だった。不動産事業(文京グリーンコート関連賃貸料など)は売上高が0.1%増の18億21百万円で、利益が5.7%増の10億15百万円だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が181億50百万円で営業利益が32億93百万円、第2四半期は売上高が180億21百万円で営業利益が22億19百万円、第3四半期は売上高が185億14百万円で営業利益が33億61百万円だった。

 24年3月期通期連結業績予想は、売上高が23年3月期比0.2%増の731億円、営業利益が5.0%減の76億円、経常利益が8.3%減の80億円、親会社株主帰属当期純利益が23.2%増の67億円としている。配当予想は23年3月期と同額の150円(第2四半期末75円、期末75円)としている。

 主要医薬品・医療機器売上高(単体)計画はクレナフィンが1.6%減の177億円、アルツが6.1%増の181億円、セプラフィルムが10.1%減の70億円、フィブラストが2.1%減の27億円、エクロックが67.1%増の21億円、リグロスが1.0%増の9億円、ヘルニコアが2.0%増の4億円、ジェネリック医薬品(計)が3.7%減の79億円としている。

 第3四半期累計の営業利益と経常利益は通期会社予想を超過達成しているが、通期会社予想を据え置いている。売上高はアルツやエクロックの伸長で薬価改定影響などを吸収して小幅増収、営業利益と経常利益は新製品発売に伴う広告宣伝費など販管費の増加で小幅減益、親会社株主帰属当期純利益は前期計上した特別損失の反動により大幅増益予想としている。なお研究開発費は4.4%減の151億円の計画としている。

■長期経営計画2031

 22年5月に2023年3月期から10か年の長期経営計画2031を発表し、画期的新薬の迅速な創出・提供により健康寿命に貢献し続ける企業、皮膚科・整形外科領域を中心にグローバルに展開する創薬企業を目指している。

 長期的課題を見据えた戦略として、研究開発では上市確度の向上、パイプラインの拡充、新規ニーズおよび海外展開への対応、新規分野へのチャレンジ、海外展開では海外展開品の充実、海外自社開発体制の整備、生産・海外自社販売体制の整備、農業事業では北米や新市場での伸長、EU市場への参入・拡大、日本国内での使用促進を推進する。

 また経営基盤強化に向けて、プロフェッショナルとして新たな挑戦・変革を追求し続ける人材の育成、データとデジタル技術を活用して変革し続ける企業風土の醸成、患者さんファーストのための製品価値最大化を推進する。

 業績目標としては32年3月期の売上高1000億円、営業利益285億円、ROE10%以上、海外売上高比率30%以上を掲げている。研究開発では10年間で8品目上市するためのパイプライン確保、毎年1品目以上の開発導入品あるいは販売提携品の確保を目指す。海外展開では医薬品の海外売上高比率25%以上を目指す。農薬事業は微生物由来の天然物質農薬ポリオキシンを中心に、売上高100億円を目指す方針としている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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