【小倉正男の経済コラム】サラダクラブ パッケージサラダ新製法「野菜も呼吸している」

■パッケージサラダの消費期限を1日延長する新製法

 野菜サラダは食卓に欠かせないものだ。だが、野菜サラダは食卓の主役にはあがいてもなれない宿命を持っている。ただ、鮮度、色合い、味わいが良ければ、主役を引き立てるのに十分な役回りを担っている。

 「パッケージサラダ」、野菜などをカットし鮮度を保つためにパックされ洗わずに食べられるサラダのことである。共働きの一般化で、日本の市場規模は2000億円になっている。サラダクラブは、パッケージサラダでトップシェアを持つパイオニア企業だが、その消費期限を1日延長する新製法を開発したとしている。

 金子俊浩社長は新製法についてこう話している。
 「(社長に)着任して3年、(コロナ禍で)リアルでは初めての対面の記者発表になる。パッケージサラダは、野菜をカットして袋詰めにするというふうに簡単につくられる商品に見られてしまう面がある。だが、実際は鮮度にこだわり、多数の課題に取り組んできている。構想から4年かかっているが、パッケージサラダ3商品を最適なガスの配合で消費期限を1日延ばすことができた」。

■レタスなど野菜も呼吸している

 「10品目のサラダ レタスやパブリカ」「お家で作るごちそうサラダ イタリアンサラダ用」「お家で作るごちそうサラダ シーザーサラダ用」――。消費期限を1日延長できたというのはこれらの3商品。鮮度維持が難しいレタスなど多品目のリーフ野菜を配合した商品である。4月1日から新製法によるそれら3品目商品がスーパー店頭などに並ぶことになる。

 これらの3商品もそうだが、パッケージサラダは加工・出荷に半日~1日かかる。加工の翌日には店頭に並ぶ。従来の消費期限は、店頭に並んでから3日間だったが、4日間に延長される。実現できたのは、酸素、窒素、二酸化炭素の混合ガスを充填してパッケージされるケミストリー(相乗効果)によるとされている。

 「酸素、窒素、二酸化炭素をバランス良く混合させてレタスなどリーフ野菜の鮮度を96時間(4日間)維持する。野菜もパッケージのなかで生きようとしている。野菜も呼吸している。これらの気体のベストな組み合わせは見つかっていないが、独自技術で最適な配合にチャレンジしている。新製法はコストアップになるが、価格転嫁はしない」。石塚光彦品質保証本部次長はパッケージサラダ新製法である「混合ガス充填製法」をそう説明している。

■酸素・窒素・二酸化炭素の混合で野菜の鮮度を最適管理

 野菜サラダの新鮮さ、あるいは単に野菜の鮮度と言い換えることもできそうだが、それはどのような状態を指すのか。「鮮度とは、野菜の臭いを抑える、変色を抑える、細菌を抑えることだ」(石塚次長)。理屈、言葉でいえばそれはその通りで間違いない。パッケージサラダを買うお客は、新鮮かどうかを売り場に並ぶ商品を見て、瞬時に判断して的確に見分けなければならない。

 野菜というものもカットされても生きている。カットされるといわば“障害反応”が発生する。臭気や変色する可能性が生み出される。その場合、酸素は匂いを抑え、窒素は変色を抑える役割を果たしている。空気の組成は酸素20%、窒素80%なのだが、この混合を調節して最適管理することで臭気、変色などの劣化を防止する。「混合ガス充填製法」とは、あまり自信を持った説明とはいえないが、どうやらそういうことらしい。

 二酸化炭素は酸素、窒素の長所を生かす役割を持っている。もちろん、それに加えて野菜の鮮度を保つコールドチェーンの温度管理が不可欠である。

 「過去の経験に照らすと、このパッケージサラダ3製品は1日の消費期限延長で少なくとも10%程度の売り上げ増が見込まれる。共働きなどのお客がまとめ買いする可能性が増加する。廃棄ロスも低減できる」(石塚次長)。

 ちなみにパッケージサラダの「混合ガス充填製法」は米国など海外では一般化している。日本では食肉、鮮魚ではこの製法が使用されているが、パッケージサラダでは初めての試みになる。食品に対する技術革新、イノベーションは成熟段階に達している感もないではない。だが、企業が生き残るにはイノベーションを試み続けるしかない。(経済ジャーナリスト)

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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