【どう見るこの相場】「小さいウオッチ、大きいチャンス」を期待して値上げ関連株で新年度相場初動も一興

どう見るこの相場

■トランプ関税懸念も『総論弱気、各論強気』の市場展開

 「トランプ・ディール(取引)」と「トランプ関税」のアラーム(警報)が、鳴りっ放しである。トランプ大統領は、相互関税を発動する4月2日を「米国解放の日」と投稿し意気盛んだから、ボリュームはさらにアップして投資家心理にさらに圧力を掛けることが懸念されている。

 ただ現実のマーケットは、この懸念ほどネガティブにはなっているようにはみえない。現に前週末21日の日経平均株価は、取引時間中の216円高から値を崩し74円安で引けて続落したが、東証プライム市場の値上り銘柄数は758銘柄と値下がり銘柄数の834銘柄と拮抗し、昨年来高値銘柄は87銘柄と安値更新の3銘柄を大きく上回った。同じく21日の米国のダウ工業株30種平均(NYダウ)も、取引時間中の500ドル安場面から持ち直し32ドル03セント高と反発して引けた。

■政策金利引き上げと配当再投資がカタリストに

 これは多分、「総論弱気、各論強気」の個別銘柄物色によるものであり、「小さなウオッチ 大きなチャンス」へのトライによるものに違いないのである。21日の東証プライム市場の昨年来高値更新銘柄87銘柄のうち、銀行株が31銘柄を占めたが、日本銀行の金融政策決定会合後の記者会見で植田和男総裁が、引き続き政策金利引き上げを継続することを「小さなウオッチ」に金利敏感株でPBRが1倍を大きく下回る銀行株を買い、これに2兆円超と推定される3月期末の「配当の再投資」期待を高めたことがカタリスト(株価材料)となった。NYダウも、トランプ大統領が、相互関税に関して「柔軟性がある」と投稿したことが、「小さなウオッチ」としてサポートしたことによるようである。

 さて4月、新年度相場である。ここでの「小さなウオッチ 大きなチャンス」はどこにみられるのか?もちろんこれまでベースになったのは業績の上方修正、増配、自己株式取得、株式分割だが、このほか株価感応度の高い「小さなウオッチ」には株主優待制度の新設・拡充、月次売上高動向、価格改定(値上げ)動向などもあった。

■4月値上げラッシュ、投資チャンスとなるか?

 そこで今週の当コラムでは、「小さなチャンス」として今年4月に値上げを予定している銘柄に注目することにした。帝国データバンク(「食品主要195社」価格改定動向調査)によれば、昨2024年の食品の値上げは前年比6割減となったが、今2025年はすでに3月まででの値上げは5381品目に達し前年比倍増ペースで推移しており、4月も4170品目が値上げ予定にある。物価問題は、「物価上昇を上回る賃上げ」を目指す石破茂内閣の1丁目一番地政策である。価格が倍以上に高騰したコメ価格に対応して備蓄米を放出して火消しに追われているのもこの代表である。また商品券の配布問題が、野党から追及され、7月の参議院選挙を前に政治問題化しているのも反面教師の側面がある。

■値上げ波及の中で探る『小さなウオッチ 大きなチャンス

 そのなかでの4月予定の値上げである。価格改定が、原材料価格や物流費上昇の価格転嫁や賃上げ原資の獲得として消費者に受け入れられれば「小さなウオッチ 大きなチャンス」となる可能性がある。その一方では、値上げが消費者の生活防衛意識をまたも刺激して節約志向を強める結果となれば「小さなウオッチ 大きなリスク」に逆転する展開も想定される。

 どちらに転ぶか「相場は相場に聞け」とするのがセオリーだが、これまでの値上げ動向は、関連株が「小さなウオッチ 大きなチャンス」として株価上昇カタリストとなってきただけにトライする余地はありそうだ。4月に値上げを予定している食料品株のほか電力株、電鉄株、さらには物価問題の焦点株として高値が継続しているコメ・鶏卵・金先物関連株に「小さなウオッチ 大きなチャンス」を期待し新年度相場の初動とするのも一興となりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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