【どう見るこの相場】「もうはまだなり」でも「まだはもうなり」でも打診買いは10月期決算会社の配当権利取りから出番

■相場の底値はどこ?政治ファクターに翻弄される投資家の心理

 「もうはまだなり、まだはもうなり」……投資家を悩ませる相場格言である。いつものことながら相場は、この格言通りに投資家心理の逆、逆に動き勝ちで手に負えない。相場が「もう」底打ちしたのか「まだ」底割れするのか、「もう」天井を打ったのか「まだ」上値余地があるのかなどなど、それぞれの投資家が、手元資金状況と相談しつつ、景気動向や企業業績、テクニカル面の分析などを総動員して強気か弱気か、売りか買いか競い合う。投資家心理は、「もう」か「まだ」かの間で揺れ動くことになる。

 現下の「もうはまだなり、まだはもうなり」の答えを求めるのは、為替相場なら過日10月3日の米国市場で、円・ドル場が一時1ドル=150.16円まで急落したが、これが当面の円安の底値なのかということになる。また日経平均株価でいえば、4日に711円安と今年2番目の下落幅となり3万526円まで売られたが、この3万1000円台割れが当面の下値メドなのかの判断に関してである。

 この相場判断が余計に揺れ動くのは、為替相場に関しては10月3日の米国市場で1ドル=150.16円と円が急落した数秒間後に147.43円と急騰しており、政府・日銀が円買い・ドル売りの介入をしたのか、介入の準備作業のためにトレーダーに為替水準を問い合わせる「レート・チェック」のいずれかがあったと観測されたからだ。また同4日の日経平均株価の711円安でも、前引け段階の東証株価指数(TOPIX)の下落率が、2.01%となったことから、日本銀行が、黒田東彦前総裁時代と同様にETF(上場投資信託)買い入れ基準に従って701億円の買いを入れ、翌5日には548円高と急反発して、3連休前の6日終値も、80円安の小幅反落にとどまったからだ。いずれも政治ファクターが交錯し自然体での自律的な価格形成ではない。

 仮に底値と判断されたすれば、そこまで大きく下げた銘柄ほど大きく戻るとする「リターン・リバーサル」を先行させるのが投資セオリーとなる。足元でいえば、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘状態が続く地政学リスクで原油供給懸念が強まり原油先物(WTI)価格が急続伸したことを受けて、前週に独歩安していた鉱業株、石油株が、この投資セオリーの候補株ということになるかもしれない。

■中東リスクと中央銀行会合に神経質な相場

 しかし、そうならないケースも想定されるのである。というのも、相場調整には値幅調整と日柄調整があることによる。かつて値幅調整は男性的な下げ、日柄調整は女性的な下げと性差別まがいの相場常套句もあって、値幅調整のあとは下げた分だけ大きく戻す投資セオリーを試すとされていた。しかし値幅調整のあとのリバウンドで売り方の買い戻しが一巡したあとに、日柄調整が延々と長引くケースもないわけではないからだ。足元でも、中東の地政学リスクのほか、日米両市場で10月30日から11月1日まで開催される各中央銀行の金融政策決定会合を前にした経済指標の発表や今週からスタートする企業業績の開示などを巡って神経質な展開が続くことも想定される。

 そこでである。「まだはもうなり」と判断して打診買いを入れるとしても、それなりに下値抵抗力のある銘柄が優先されるとみられる。今週の当コラムでは、候補株として所有期間利回り的側面も考慮して10月27日を権利付き最終日とする10月期決算会社、さらに中間配当を実施予定の4月期決算会社の高配当・低PER株の権利取りに注目することにした。ただ前月9月末も、3月期会社の中間配当の権利取りでバリュー株が幅広く買われ、権利落ちとともにインカムゲイン以上のキャピタルロス(値下がり損失)が発生したことは確かである。しかし、全般相場の水準や投資家心理自体は9月末とこの10月は天と地ほどの違いがある。「まだはもうなり」をフォローしてくれることを期待したい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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